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新聞記者時代にデスク(上司)に教わった間違いやすい日本語辞典

間違いやすい日本語を解説

「1人で爆笑する」
「足元をすくわれる」
「感動して鳥肌が立つ」

ぜんぶ間違った日本語だといわれたらどう思いますか?

いきなりすみません。

トゥモローゲートのライターでこのブログの編集長をしているまきぎです。

こんな肩書きだから、そりゃあもう文章がうまいのだろう、日本語を魔術師のように使いこなしているのだろう、と思われることが多いのですが、まったくそんなことはありません…。

いまでもまちがった日本語をたまにつかってしまいますし、原稿をかきあげてから「念のため」とみなおした文章から間違った日本語がみつかることもたまにあります。

これがたまにじゃなくてほぼ毎日だったのがプロ野球担当の新聞記者だった前職時代です。

阪神タイガース(今年はついに優勝するかも?)の取材記者として働いていたのですが、大学まで野球しかしてこなかった体育会系男子がいきなり文章の世界に飛び込んだということもあり、それはそれはひどいものでした。

「デスク」と呼ばれる記事を手直ししてくれる上司に“赤文字”(修正指示)を入れられた回数は優に100回を超えます。

神宮球場で選手を質問攻めしていた当時

今回のブログでは、そんなぼくの黒歴史を振り返りながら、意外に間違いやすい日本語をみなさんに共有したいと思います。

おれはわたしは文章を書く職業じゃないから関係ない。

と思ったあなた。ちょっとまってください。

無意識に間違った日本語を使っていて、しらないあいだに損なわれている信頼関係があったとしたら、どうですか?「こいつ、日本語も正しくつかえないのか」としらないあいだに評価が下がっているとしたら、どうですか?

檄(げき)は飛ばすものじゃない

「3点ビハインドの5回の攻撃前。ベンチ前で組まれた円陣でキャプテンの〇〇がチームメイトに檄(げき)を飛ばした。」

最初に紹介するのはこちら。「檄を飛ばす」についてデスクにこう指摘されたことがありました。

デスク
「檄を飛ばすってどういう意味かわかってる?」

■「檄(げき)を飛ばす」の本当の意味

まず「檄」とは古代中国に生まれた言葉で、人を呼び集めるための情報が記された木札のことです。つまり「檄を飛ばす」は、考えや主張を多くの人に知らせるということなんですね。なので激励する的な意味で使われている「チームメイトに檄を飛ばす」は日本語として間違いなのです。

新聞記者になるまで知らずに使いまくっていたので、赤っ恥でしたね…。

1人では爆笑できない

「勝利投手としてお立ち台に上がった助っ人外国人の〇〇〇〇は、同じドミニカ出身の〇〇〇〇によるイタズラに笑いを堪えきれず、1人で爆笑していた。」

外国人選手同士でじゃれ合っているけれど、周りは言葉がわからないので、盛り上がっているのは当事者だけ。みたいなシーンがよくありました。その様子を表現した記事に対してデスクから電話が。

デスク
「爆笑って、どういう意味?」

■「爆笑」の本当の意味

「爆笑」には「大勢が大声でどっと笑うこと」という意味があるため、「1人で爆笑」は少しニュアンスがズレているんです。「大勢」が何人を指すのかはあいまいですが、少なくとも1人ではないことは確か。このシーンを表現するならば「1人で大笑い」や「1人で高笑い」が正しいということになります。

ただ、最近の広辞苑で爆笑は「はじけるように大声で笑うこと」という意味に変わっているそうです。なので、現在なら「1人で爆笑する」でもいいとのこと。私が新聞記者だった5、6年前の時点では間違いとされていました。

■「失笑」の本当の意味

ちなみに「笑い」関連で間違いやすい言葉といえば「失笑」があります。笑いを失うと書くためそのままの意味で解釈しがちですが、本当は「おかしさをこらえきれずに吹き出すこと」を意味します。

汚名を挽回するな

「前日の試合で痛恨のエラーをした〇〇が、汚名挽回の一打を放った。」

しびれますよねこういうシーン。応援している選手ならなおさらです。新聞記者1年目。親近感を抱いていた選手がまさにこんな活躍をしたので、自信満々で記事を書きました。すると、指摘が。

デスク
「汚名を挽回してどうする!笑」

■汚名挽回✖️→汚名返上◯

「挽回」には「失ったものを元の状態に戻すこと」という意味があります。ということは…。「汚名挽回」と表現してしまうと「汚名を取り戻した」というなんともやんちゃな意味になってしまうんです。

正しくは挽回ではなく、いただいたものをお返しするという意味の「返上」です。もし「挽回」という言葉を使いたいなら「名誉挽回」ですね。取り戻すべきは名誉です。汚名ではありません。

足元はすくわれない

「昨シーズンの対戦で10点を奪った投手から今年は1点も奪えずに敗戦。油断からか、足元をすくわれてしまった。」

ほんの1年しか経っていないのに力関係が逆転している。野球の世界ではザラにあるんです。そんな時に使いたくなる言葉を間違ってしまっていました。

デスク
「足元じゃないねんな〜」

■「足元をすくわれた✖️→足をすくわれた◯

相手に出し抜かれた時によく使う「足元をすくわれる」。実は「足元」ではなく「足」だけでいいんです。それまでの人生でおそらく50回以上は「足元をすくわれた」って言葉を使ったはずなのでかなり驚きましたね〜。この記事で紹介している言葉の中でも、特に知らない人が多かった言葉ではないかと思います。

ちなみに「足をすくわれた」には、出し抜かれたという意味に加えて「卑劣なやり方で、隙をつかれること」という意味もあります。と考えるとあまり使わない方がいいのかなあ…なんて個人的には思います。人によって伝わり方が変わってくる複雑な言葉なので。

シュミレーションなんてできない

「〇〇は試合前、ピッチングマシン相手にシュミレーションをしていた。」

おいおいまきぎ。そんな初歩的な間違いはないだろう。と思った方がいるかもしれませんが、検索してみると意外にも同じ間違いをしている人が多いことがわかりました(よかった)

デスク
「初歩的すぎるぞこれは」

■シュミレーション✖️→シミュレーション◯

英語のつづりが「simulation」なので、カタカナにすると「シミュレーション」が正解なんです。 複雑な日本語ならまだしも、比較的シンプルなカタカナですから、間違った時はなかなかの赤面ものでした。

ちなみにこれは前職時代のTwitterのつぶやきで間違えたので、世の中に公開されてしまっています。

指摘までしっかり(笑)

日常会話でも使用頻度が高い言葉だと思うので「知らなかった」という人は今後気をつけてみてください。(いなかったらすみません。ただただまきぎをバカにしてもらって大丈夫です)

破天荒な性格の人なんていない

「派手なプレーと破天荒な性格で球界を盛り上げた〇〇が、今シーズン限りで引退することがわかった」

よく目にする言葉が並んでいますが、この中には明らかな間違いがあります。

デスク
「これは最初みんな間違えるんよ」

■「破天荒」の本当の意味は?

破天荒は「豪快」「大胆」「めちゃくちゃ」という意味で使われることが多いのですが、実際の意味は「前代未聞。今までだれもしなかった事をすること」です。上記の文章だと「派手なプレーと前代未聞の性格で」という意味になってしまいます。違和感がありますよね。

「シミュレーション」と同じく日常会話で出てくることがある言葉です。注意したいですねえ。

感動しても鳥肌は立たない

「球史に残るスーパープレーを目の当たりにしたスタンドのファンは鳥肌が止まらなかったことだろう」

スポーツ観戦中や映画観戦中に心が動かされて鳥肌が立つことってありますよね。私もよく「感動して鳥肌立ったわ〜」なんて友達に話していたものです。だからこそ自信満々で記事に盛り込んだわけですが、そっこーで赤字が入りました。

デスク
「これも間違いあるあるや」

■「鳥肌が立つ」の本当の意味は?

「感動する」ではなく不快感を表す言葉です。気持ちが悪い。怖い。ゾッとする。そういった状態を表現する時に使うのが正解なんです。「破天荒」や「シミュレーション」並みによく使う言葉だと思うので覚えておきたいところ。

いやー。こうやって振り返っていると、自分の日本語力の低さを改めて痛感しますね。これ以上続けていると落ち込みそうなので、次で最後にします(笑)

絶対絶命なんてない

「絶対絶命のピンチを空振り三振でしのいだ。」

これに関してはパソコンの変換機能のせいにしたくなります。だって「ぜったいぜつめい」と打ったら「絶対絶命」になるんですから。

デスク
「知らんがな」

■絶対絶命✖️→絶体絶命◯

体が失われそうなほど肉体に限界が近づいている状況が「絶体」。命が終わってしまう状況が「絶命」。2つの単語を組み合わせてできたのが「絶体絶命」。「絶対絶命」という言葉はそもそも存在しないんです。

ではなぜ間違われがちなのかというと、日常では「絶体」よりも「絶対」を使うことが多く、その流れで「絶対絶命」として定着してしまったのではないかという説が濃厚とされています。

まとめ

新聞社には「デスク」という文章をチェックしてくれる上司がいたので、この記事で紹介した間違った日本語が世に出ることはありませんでした(Twitterは除く)。

一方で、お客様とのメールのやり取りや上司とのコミュニケーションにおいて文章をチェックしてくれる人は基本的にいませんよね。

だからこそ、思い込みで間違って使ってしまっている日本語がないか把握しておくことが大事だと思うんです。自分はこう思っていたけれど、相手には違う意味で伝わってしまった。そのせいで信頼関係が損なわれてしまった。なんてことになったら悲しいじゃないですか。

この記事がそんなトラブルの芽を摘む役割を担うことができたら嬉しいです。

(おまけで前職時代に書いた記事を貼っておきますね)

あ、ちなみに匿名顔なしで登場した前職時代のデスクの方々はみんないい人ばかりでした。冷たくて怖い人なのかな?と思われるかもしれないと感じたので最後に付け加えておきますね(ほんとにいい人)。

最後まで読んでくださってありがとうございました!

次回以降も言葉に関する記事をお届けしていきたいと思います。またお会いしましょう!

この記事を書いた人

まきぎ周平@ブラックな言葉オタク
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トゥモローゲート株式会社意匠制作部ライター。スポーツ新聞社でプロ野球の担当記者を4年半つとめた後、2020年に入社した。企業のキーパーソンへの取材をもとにしたインタビュー記事の作成や、企業のコンセプトコピー、商品のキャッチコピー考案などを担当している。

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