【2023年11月最新版に更新】当記事は自社の体験を基に定期的にアップデートしていきます。
ブランディングとは、カッコいいデザインを作ることでも、お洒落なオフィスにすることでもない。
自社の存在意義を明確化し、ビジョンに向かった経済活動をターゲットに体験してもらうことで生まれる目には見えない信頼や絆こそブランドになる。ながく愛されるファンづくりのために企業が取り組むべき「本物のブランディング」とはなんだろうか?
・ブランディングしたいけど何からはじめればいいかわからない
・ブランディングしているのにまったく成果につながらない
そんな過去の僕たちとおなじような悩みを抱える企業のみなさんへ。
ブラックな企業が試行錯誤をしながら試してきたブランドづくりの実体験をありのまま伝えることで、すぐに実践できるブランドづくりの教科書としてあなたの会社がオモシロクなるきっかけになれば最高です。
こんにちは。ブラックな社長の西崎です。
これまでいくつかブログ記事を書いてきましたが、今回はこれまででいちばん時間をかけて記事を書こうと思います。テーマは僕たちのメイン事業でもある「ブランディング」についてです。
Youtubeのチャンネル登録者17万人、X(Twitter)のフォロワー数10万人 (2023年11月時点)と露出が増えていることもあり、多くのひとから「トゥモローゲートはブランディングが上手いよね」と言われる機会が増えました。本当にありがとうございます。
ただかなり多くのひとがブランディングを誤解しているなあと感じることがあるんです。
凄そうに魅せることがブランディング?カッコいいデザインがブランディング?
残念ながら魅せかたでブランドをつくることはできないです。
もちろん魅せかたを蔑ろにするわけではないですよ。「魅せかたはあくまで目的を伝えるための手段だ」ってことを伝えたいです。ブランディングとはそもそもどんなもので、どうすればブランドをつくることができるのか?自分たちなりの考えを図解や事例を交えながらまとめていきます。
INDEX
2010年4月、27歳最後の日にトゥモローゲートを創業しました。めちゃくちゃな話ですが、事業はなにも決まっておらず決まっていたのは「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事をつくる」というビジョンだけ。
それでも営業は強かったので、自分ひとり食べていくことに困ることはなかったです。はじめてひとを採用したのが創業4年目の時でした。当時は「採用ブランディング事業(採用専門の制作業務)を中心に業務を請け負っており、採用ツール特化の制作会社というのが珍しかったこともありゆったりとしたペースですが順調に会社は拡大しました。
採用ブランディング事業を展開していた当時(2014年~2017年)は、とにかく目立つもの、カッコいいものをつくることがブランディングだと思っていました。オフィスをカッコよく、営業資料をカッコよく、ホームページをカッコよく、それだけで当時社員3名の会社にも関わらず7000名の学生がエントリーしてくれました。
それだけ沢山の求人応募があると、当然ながら優秀な学生と出会うことができたし、インパクト重視の尖った企画実績をバシバシ作っていっていたので、お客さまからも、「うちもこんな面白い採用企画を提案して欲しい!」と多くの受注に繋がっていたからです。
結果がついてきていたからこそ、今で言うところのバズる企画のことばかりを考え、いかに見た目にこだわりまくってターゲットの心を掴むのか?という点だけに必死でした。どんなに知名度のない会社でも未熟な会社でも、見た目さえ整えれば多くのファンが集まり優秀な人材が集まる。結果、魅力的な会社づくりができるはずだ。そう信じて疑うこともなかったです。
社員数が10名を超えて迎えた2018年。これまで大きな問題もなく経営を続けてきたつもりでしたが、このあたりからなんとも言えない微妙な違和感が生まれます。これまでと同じことを言っているつもりなのに伝わらない。「面白いことやろうぜ」って言葉が社員の面白いとフィットしない。いま振り返れば社長が感じている以上の違和感を社員たちは感じていたはずです。
違和感の理由はシンプルでした。
コミュニケーションが減った。これがすべてです。
それまではすべてのお客さまに社長である僕も顔をだし、すべてのプロジェクトを社員と進め、後ろを振り返れば全員の顔が見える環境だったので、「言わんでもわかるやろ」が通じていました。一人また一人と社員が増えていくなかでお客さまを任せるようになり、プロジェクトもメンバーだけで進めることが増え物理的なコミュニケーションが減った結果、この「言わんでもわかるやろ」が通じなくなっていったのです。
夫婦でも、恋人でもそうですが、会話が減ると相手が考えていることがわかりづらくなりませんか?それは不安を生みだし、不信感へとつながるわけです。いわゆる中小企業にありがちな「社長がなに考えてるのかよくわからない症候群」に陥るわけです。これはもちろんそんな組織づくりしかできていない経営者の責任です。
そんな組織の行く末は言わずもがなで、これまで一人もいなかった退職者が出るようになりました。「このままではマズい。」そう感じた僕は役員を集め、会社を変えるべく本物のブランディングとは何かを突き詰めていくことになるわけです。
みなさんに質問です。そもそもブランディングの目的とはなんでしょうか?
他社と差別化したり、自社の特徴を打ち出すことで認知度を高めるという趣旨で用いられることも多いですが、僕の中でのブランディングの目的は「ターゲットと濃い絆を作ることで選ばれる会社になること」です。
自社の大切にしていることは何かを定義し実行することで、ブランディングターゲット(顧客・求職者・社員)に対して信頼を積み上げていく。それによりお客様から選ばれる会社となり、社員たちからも選ばれる会社となる。結果、売上や利益が上がり、いい人材が集まり、ながく定着することで強い組織づくりへと繋がっていくわけです。
「そうは言われてもどうやって自分たちの色をどうやって作ればいいかわからない。。」そう感じられた人もいると思います。ここからは、「魅せかけではない本物のブランディングとは何なのか?」というテーマでお話していきます。
ここからがいよいよ本題。本物のブランディングを実践するために、まずはブランドがどのように創りだされるのかを知るところからはじめました。もちろんこれまで「ブランドとはなにか?」なんて見た目以外に考えたことがなかった僕たちなので迷い迷い試行錯誤しながら一歩ずつカタチにしていった感覚です。
そもそもブランディングとはなんなのでしょうか?
・有名デザイナーに依頼しブランドロゴを刷新すること?
・カッコいいwebサイトやパンフレットをつくること?
・SNSで発信してたくさんフォロワーを増やすこと?
導きだしたブランディングに対する考えがこちら。
小洒落たオフィスを作りましょう
— 西崎康平@ブラックな社長 (@koheinishizaki) September 20, 2019
カッコいいパンフに変えましょう
イケてるホームページにしましょう
これをブランディングと言ってる限り絶対にブランドなんか作れない。
ブランドとは顧客の期待に破られることのない「約束」だと何度も言うてるやろ。
自分に言い聞かせるために発信しているツイートなのでちょっと乱暴な言い方にはなっていますが、概ね僕の考えるブランディングの結論がここです。
僕はブランド=「約束」と位置付けるのが一番腹落ちします。
ターゲットに対してその会社が絶対に裏切らない約束、つまり信頼や絆こそがブランドであると考えます。つまり目に見えるデザインはブランドではなく、そのデザインの根本にある思想や哲学こそがブランドであると認識しています。大切なことは言葉ではなく行動で体験してもらうこと。ビジネスでもそうですが、信頼を勝ち取るには時間がかかります。ブランドづくりに根気が必要な理由がまさにここかなと感じています。詳しいブランディングの概念については米村のブログでも紹介してますので合わせてご覧ください。
みなさんは「ブランド」という言葉の語源を知っていますか?
brand(ブランド)は、焼印を意味する「burned」が語源です。家畜を飼育する農家が、自分の家畜と他人の家畜の所有権を示すために、焼印を押して区別していたことに由来します。そこから「銘柄」や「商標」をbrand(ブランド)と呼ぶようになったと言われています。
アメリカマーケティング協会ではブランドを、
´個別の売り手もしくは売り手集団の財やサービスを識別させ、 ´競合他社の財やサービスと区別するための ´名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、 ´あるいはそれらを組み合わせたもののこと。
AMERICAN MARKETING ASSOCIATION
と定義しています。これだけを見ると、「なんだやっぱり会社のロゴや、商品のパッケージ、デザインそのものがブランドなのか!」と誤解してしまいがちです。実はこれもう少し深くて、見た目の認知だけではその企業が大切にする思想や哲学まで理解してもらうことは不可能で、視覚的なシンボルを見た瞬間に「この会社はこういう会社だ」という認知をブランドと呼ぶならば、思想や哲学を反映した体験の積み重ねからしか生まれないと解釈しています。
ブランディングにおけるターゲットは大きく3つに分類することができます。
①顧客(事業ブランディング)
②求職者(採用ブランディング)
③社員(社員ブランディング)
①②を会社を中心とした対外的なブランディング(アウターブランディング)、③をブランドを作りだす社員たちを対象とした対内的なブランディング(インナーブランディング)です。ここで意識しないといけないことは、この①~③はすべて密接に繋がっており、本質的なブランドづくりにおいてどれか一つだけやるブランドづくりというのは成立しないというのが僕の考えです。
採用ブランディングは上手くできてるけど、事業ブランディング、社員ブランディングは上手くない、というのはないということです。もちろん魅せかけをよくすることで瞬間的に求人数を増やしたり、採用につなげたりすることは可能です。ただ最終的に中身が伴わなければ「思ってたのと違う」とか「言ってることとやってることが違う」と長期的な視点で見ると成果に繋がらない結果になるからです。
すべてのターゲットに一貫したブランド体験を提供することが企業ブランド力の向上に繋がります。
ブランドとは見た目で作りだすものでもキャッチーな言葉が生み出すものでもありません。
「この会社はいつでも裏切ることなくこういう体験を約束してくれる!」
そんな強い信頼こそがブランドです。信頼は信念に基づく行動からしか生まれません。先に挙げた3つのブランディングターゲットに対して、ブレることのない一貫した判断軸や世界観を日々の行動から体験してもらうことでブランドは作りだされます。逆に言うとブレた判断や決断を体験することで一瞬にして崩壊するのもブランドなのです。
ブランディングを成功させるポイントとは何でしょうか?
まず頭に入れておいていただきたいことが一つ。「ブランディングには終わりがない」ということです。デザインを整えたら終わり、オフィスを綺麗にしたら終わり、CMや広告を打ったら終わり、そんなことではブランドは生まれません。
ブランディングを成功させるためには、
①会社のポリシーを明確にする(経営理念)
②ポリシーに反する経営判断を絶対にしない
③全社員がポリシーの目的や意味を考える時間を設ける
ここまででもお判りいただけるように、ブランディングを成功させるためには手段から考えるのではなく、まずは目的をハッキリさせるということが大切で、その目的からブレないこと、業務を実行する社員と目的を共有することが不可欠だと考えます。
ブランドをつくるために必要な一連のメカニズムを図解化したものがこの「ブランドミラミッド」です。ブランドターゲットとなる顧客、求職者、社員に対して自社をどのように認知(体験)してもらうのか?その認知の積み重ねが「この会社はこういう体験を約束してくれるんだ」というブランドにつながります。
一般的なブランディングと聞いて、まず注目されがちなのがこのWHAT(手段)です。
どんな売り方をしよう?
どんな風に感じてもらおう?
どんな魅せ方をしていこう?
どれだけいいWHAT(手段)を考えたところで、土台となるWHY(目的)とHOW(ゴール)がしっかりしていないと強いWHAT(手段)を作り出すことはできません。ピラミッドの土台を大きくしていくことが強いブランドづくりにつながるわけですから、最初に頭と時間を使わなければいけないのは、この目的とゴールを明確にするということになるわけです。
強いWHYとHOWに基づくWHATが本物のブランドをつくる
前述のとおり、ブランドづくりにおいては、WHAT(手段)以上にWHY(目的)とHOW(ゴール)が大事だ、という話をしました。まず考えるべきはWHYつまり「なんのために企業経営をするのか」とそれをHOW「どのように体現していくのか」という2点を具体的に言語化していく必要があります。
STEP1. WHY(目的)はなにかを明文化する
STEP2. HOW(ゴール)を定量的な基準に設定する
STEP3. WHAT(手段)目的とゴールに向けた行動を積み重ねる
たまにWhy→What→Howの順番じゃないの?と聞かれることがあるんですが、僕らが考えるブランディングの本質をわかりやすくまとめるために意図的にWhy→How→Whatにしています。
なぜその世界をつくるのか?
どのようにそれを実現するのか?
実現するには何をやるのか?
そのための具体的なアクションは?
僕らの解釈ではWhy→How→Whatの後にGoがあります。
ここで言うGoは実行するという意味です。どのように実現するのかという明確なゴールから、何を実行するのかを定める。信念の伴わないGoで本質的なブランディングなどできるわけがない。それが僕たちのブランドづくりの考え方です。これが答えだというつもりはありません。というかブランディングには答えもゴールもないように思います。試しながら、失敗しながら。これからもアップデートしていきます。
WHY(目的)は経営理念に宿る。
ここをもう少しだけ分解すると、この経営理念を構成する要素として、
・原理原則(本質)
・原体験
・信念、哲学、夢、目標
などが挙げられます。トゥモローゲートのミッションは「世の中にきっかけを」、ビジョンは「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事をつくる」です。これは創業の時に設定しましたが、僕が企業経営をする理由がここにあります。
「仕事はつまらない」「会社にも行きたくない」学生時代の周りの大人たちから感じる仕事のイメージはネガティブそのものでした。人生において一番時間を費やすのが仕事の時間です。そんな貴重な時間を面白くしたい。だから「これまでにない変な会社をつくろう!」というのがざっくりとした起業の理由です。
多くの会社がホームページなどに経営理念を示しています。ただこの経営理念がなぜ生まれたのか?どこを目指そうとしているのか?具体的に語れる会社は少ないです。僕たちも例外なく創業時に掲げたこのミッションやビジョンをビジョンマップを設計するまでは語ることなんてできなかったです。
こちらがうちの会社のHOWを明文化したシート(通称:ビジョンマップ)になります。作成したのが創業から8年が経過してからです。創業期に設定した経営理念は変わらないんですが、「なんとなく面白いことやりたい」という漠然なものからより具体に落とし込んだのがビジョンマップです。
ブランドピラミッドが示す通りこのビジョンマップには、
MI(マインドアイデンティティ)・・・理念の統一
⇒経営理念の意味や意図はなにか?
BI(ビヘイビアアイデンティティ)・・・行動の統一
⇒その理念に沿った行動基準や目指す方向はどこなのか?
VI(ビジュアルアイデンティティ)・・・視覚の統一
⇒その思想や世界観を体感してもらうデザインルールとはなにか?
その基本概念が記されています。この経営理念に沿ったHOWが企業文化となるわけです。
HOWを設計するうえで抑えなければいけないポイント
・自分たちが守るべき価値観とはなにか?
・いつまでに何を成し遂げるのか?
・やっていいことと駄目なことはなんなのか?
これまで曖昧だった自分たちの目指すべき理想像を言語化すること、その価値基準からズレないジャッジを続けていくことで「自分たちらしさ」をターゲットが体感してくれるのです。
WHYとHOWを明文化したならば、あとはそれに沿った判断を積み上げていくだけです。新しい事業をつくる、人事評価制度を設計する、社内制度を作り変える、何をするにしてもすべてはこのWHYとHOWが判断基準となります。
よりよいWHATを実践するために意識してよかったことをまとめます。
・まずはやってみること
・すぐに決めること
・駄目ならすぐに辞めること
細かいポイントはいくつもありますが、WHATを実践するうえで最も大切にしていことがこの3つになります。ブランドづくりとは言い換えると「ビジョンに向けて変わり続けること」だとも思います。そこに対する最も効果的なアクションが「スピード」です。
ビジョンを示したことで、社員がそのビジョンに沿うさまざまな提案を投げてくれるようになりました。「こんな働き方をやってみたい」「こんな事業を作ってみたい」「こんな福利厚生を導入したい」などなど。基本的に僕はノーとは言わないようにしています。そしてすぐに実行するようにしてます。もし駄目だったらすぐに辞めて次を考えるそのくらいの感覚です。
WHATは社長がつくるものではなく、社員がつくるもの。この会社は言えばやってくれる、そんな社員との体験が自発的に会社をビジョンに近づけていく組織に繋がっているんだろうと感じます。
ではこのビジョンマップ、どうやって作ればいいのか?色々な作り方があるかと思いますが、自分たちが作った一連の流れを紹介します。よく聞かれるのが「どのくらいの時間をかけて作りましたか?」という質問です。このビジョンマップは役員と28時間で作成しました。
うちの会社には自分を含めて3人の役員がいます。オフィスでやると通常業務が気になり、集中できないので、それを完全にシャットアウトするために郊外のホテルを借り、役員3人で一泊二日の合宿を決行し、朝から翌日のお昼までディスカッションしながらまとめていきました。
ビジョンマップ作成のフローは、
・これまでどんな人生を送ってきたのか?(幼少期、家族、学生時代、恋愛遍歴、社会人人生)
・なぜこの会社を創業(入社)したのか?(やりたいこと、やりたくないこと、仕事の夢や目標)
・この会社でどんな世界を実現したいのか?(将来のゴール、自分自身の夢や目標)
1人90分間×3人というかなりの時間を使い、まずは役員の原体験や価値観を擦り合わせました。そのうえで、
・経営理念を実現するための守るべき価値観(VALUE)
・自分たちの判断基準(ささる×あがる=ひらく)
・ビジョン達成のための中間ゴールと達成基準(中期ビジョンと)
を話し合い、そのざっと出し合ったメモ書きをわかりやすく1枚の紙にまとめたものが今見てもらっているビジョンマップです。作成する際に注意したことは、
・難しい言葉は使わない
・覚えやすくわかりやすい言葉にする
・できるだけ短めの言葉にする
・イエスかノーで判断できる定量ゴールを定める
・社名を入れ替えたら成立しない内容にする
こんな感じですね。このあとに会社のデザインをこのビジョンマップで設計した約束やルール、世界観に沿って統一したり、事業戦略や社内制度、人事評価制度などを統一していくんですが、いちばん時間をかけるべきポイントがこのビジョンマップだなと。すべてにおいての基準となるものなので、決して妥協することなく納得いくまでディスカッションすることをオススメします。
ブランディングの肝となるビジョンマップが完成したら次はそのブランドをターゲットに発信(体験)していくことが必要です。ここではブランディングに必要な4つのアクションについてお話します。
ブランドターゲットに向けてどんな価値を提供する会社なのか?そもそもなぜその事業をやっているのか?などを届けることで対外的にブランドイメージを訴求するのがアウターブランディングです。ホームページやパンフレット、映像など目に見えるデザインに注目されがちですが、接客や電話対応などターゲットと直接接点のあるタッチポイントすべてがアウターブランディングの対象となります。
はたらく社員のブランド意識を高めるための施策を行う対内的なアクションがインナーブランディングです。たとえば企業理念を浸透させるためのオフサイトミーティングを企画したり、人事評価制度の設計やビジョン実現にむけた社内制度や働き方を構築したり。社員が自社の経営理念を理解し、業務内で実践するための社内での仕組みづくりがインナーブランディングとなります。
その会社に応じた採用コンセプトを考案し、コンセプトに沿って仕事や事業や人の魅力を訴求しながら求職者に自社をPRするのが採用ブランディングです。ツールとしてはホームページやパンフレット、動画や説明会ブース、こちらもデザインだけではなく説明会のやり方から選考フローまで一貫したコンセプトで設計し、自社の理念を体験をしてもらうことで差別化された採用ブランドを構築します。
SNSで自社のありのままの姿を発信することで、広告のような短期的な繋がりではなく、中長期を見越した育てるファンづくりを実践できるのがSNSブランディングです。営業活動にしろ採用活動にしろ濃いファンからのアクションはとにかく決定確度が高いため、効率的かつ効果的な成果を積み上げることが可能です。
以上がビジョンマップで定めた経営理念をブランドターゲットに伝えていくためのアクションです。さらに詳しく知りたい方はぜひこちらをご覧ください。
ここまで紹介したブランディングをどんな流れで進めれば理想的な成果が見込めるのでしょうか。大前提これじゃないといけないって正解はありませんが、この進め方であればより成果が期待できるよという順番はあります。
これまでお伝えした通りブランドづくりの出発点はWHYを深掘り定義することです。そのためにマストなのが経営理念です。なぜ会社は存在するのか、世の中にどんな価値を提供するのか、どこを目指すのか。経営者を中心に納得感のある解像度まで落とし込みましょう。
ブランディングをしたいのでカッコいいホームページをつくってくださいという相談は多いです。もちろんホームページで自社の事業や強みやスタンスを表明することも大切ですが、根っこにある理念が固まっていないと効果は限定的に終わるか、爆発的な効果が生まれたとしてもそこに再現性はありません。
まずは根っこ。経営理念を定めるところからはじめていきましょう。
経営理念を定めても社内のメンバーが理解し共感してくれていなければ、ただの言葉で終わってしまいます。いろんな手段をつかって浸透させていきましょう。なぜ経営理念を定めたのかという基本的なところから、ミッション・ビジョン・バリューはなぜこのようなカタチになったのかなどを共有し浸透させていきましょう。
▼経営理念を浸透させる方法の例
・経営理念にそった経営判断を社員に体験させる
・経営理念を理解できる定量的な判断基準にまで落とし込む
・経営理念に応じた行動を評価する評価制度を設計する
・経営理念で定めたゴールと社員1人ひとりの目標を紐づける
・経営理念について考える機会を仕組みとして設ける
こちらについては「経営理念を浸透させる方法」のブログに詳しく書いているのでよければご覧ください。
ホームページ制作など対外的な発信はこのフェーズで行うのがおすすめです。ブレない理念とそこに紐づくブランドが固まった上で発信することで、自分たちが届けたい相手に、理想の届け方で、魅力を伝えることができます。発信する媒体としてはホームページの他にも動画、パンフレット、SNS、広告などが考えられます。
③を継続した先に共感した仲間が集まるというメリットがついてきます。
ここでいう仲間とは新しいお客様であり、新しい社員のことです。理念やブランドに沿って事業の魅力や実績を発信し続けることで仕事の依頼が増えたり、文化や人の魅力を発信し続けることで採用のエントリーが増えるという効果が期待できます。ブランディングを進めた先に見込めるメリットに関してはこちらのブログもおすすめです。
ターゲットに対して正しい順番でブランディングをすることで、企業は多くのメリットを得ることができます。
逆にターゲットとの優良なブランド構築を怠ってしまうと、いつまでたっても価格競争やサービス競争から抜け出せず、結果原価率の高騰などで自社コストが増大し、正当な利益を確保することが困難となり、設備や社内環境などのコスト削減やプロモーションコストの削減に追い込まれ、結果市場シェアを失うという負のスパイラルに陥ります。
トゥモローゲートが得た具体的な成果をまとめたものがこちら。
これまではプッシュ型の営業スタイルがメインでしたが、自分たちらしさを発信し続けることでより多くの人にトゥモローゲートを認知してもらい、新規受注の85%が接触前に知っていただき指名注文で仕事をいただけるようになりました。採用面でも求人広告媒体や人材紹介会社からの採用ウェイトは下がり、SNSを経由した直接応募が主体となっています。リンクアンドモチベーション社が実施するモチベーションクラウドのスコアも80.6と大きく上昇しました。
ブランドづくりに注力した3年間で顧客単価が259%高くなりました。誤解しないでほしいのが、企業に対しての認知が高まったから顧客単価があがったわけではありません。経営理念を整理し、自社のビジョンを明確にすることで理念やビジョンに向かった企業づくり、サービス品質の向上を積み重ねた結果として付加価値が高まった結果として利益率が高まりました。中身が変わらないのに外見だけで価格が変わるわけではないという点は注意が必要です。
大きなコスト削減につながり生産性の向上につながったのが営業コストの削減です。ブランディングを実施するまでは、テレアポによるプッシュ型の新規開拓営業がメインでした。今では新規顧客の多くがSNSで認知をしてもらったお客さまです。他社が営業活動に費やしている時間を、顧客の課題解決に直結する企画やデザインの時間に充てられる。当然のことながら他社よりもいい企画を提案することができ、自社の競合優位性につながります。
社員30名に満たないちいさな会社であるにも関わらず、求人広告や人材紹介会社に年間1000万円以上支払っていました。今では採用活動としての求人広告の人材紹介会社への支払いは当時の1/3以下になっています。予算の削減もさることながら、自社の思想を発信することで、その思想に共感した仲間が採用できるようになったことも大きな変化です。
ビジョンを共有しながら、成果を残してくれる人材が辞めない組織づくりができるようになりました。さらにはそんなメンバーが後輩たちに会社のビジョンを語ってくれることで、「なぜ自分たちがこの仕事をやっているのか?」目的意識をもった強い組織づくりに繋がっていると感じています。やらされる作業と目的を持ち楽しみながらやれる仕事ではアウトプットに大きな差が出ることは言うまでもありません。
ブランディングを通じて会社の理念を対外的に発信していくと、その理念に共感した仲間を集めることができます。これまで弊社では求人広告媒体や人材紹介会社を利用して採用をしていましたが、ブランディングすることにより現在ではホームページからの問い合わせ、SNSからの応募による採用が7割を占めます。単に広告費を使わずに採用できるというだけではなく、たまたま広告を見て応募してくる求人から、自社のことを事前に知り理解しさらには好きでいてくれる人材からの応募があることで質が上がり求める欲しい人材の採用に繋がるのです。
ブランディングのメリットを見てこう感じた人もいるかもしれません。「ブランディングとマーケティングは何が違うの?」と。端的に僕の言葉で伝えるならば、
マーケティングは買いたくなる仕組みづくりであり、ブランディングは理念に基づく体験から対象者との間に生まれる絆であると考えます。
ベクトルのスタートラインが違うというのが僕が考える大きく異なる点で、マーケティングは企業側が対象者に対して意図するアクションを促すために実行するものであるのに対し、ブランディングは企業の理念や価値観を体現する経営判断を体験し続けた結果、対象者自身が「この会社はこういう会社だ」と認識してくれるものです。
これは僕自身の経験から基づく見解であり、ブランディングとマーケティングに関する解釈は1つだけではありません。本にしてもネット記事にしてもいろんな解釈が登場します。
マーケティングの中にブランディングがあるという意見もあればその逆もある。正解不正解という話ではなく、切り取り方によってさまざまな角度から捉えることができるのが難しいところでもあり面白いところだと思います。
正しい知識をもとにブランディングとマーケティングの“自分なりの違い”を答えとして持っておくことで、成果に繋げられる可能性が高まります。ここでは「目的の視点」と「成果の視点」から、僕たちなりの解釈をお伝えしていきます。
ブランディングには、ユーザー視点よりも自分たちのポリシーを優先する領域があります。
自分たちの存在意義や目指す未来を明文化した経営理念がまさにそう。
「こんなことがしたい」「こんな未来を実現したい」を定めるにあたり、売上や利益といった顧客に受け入れられるかどうかよりも、自分たちはどうありたいのか?を優先することがあります。
これは「たとえ売れるとしてもやらないこと」と言い換えることもできます。短期的に莫大な利益が見込めるチャンスがあったとしても、経営理念に沿っていないのであれば手を出さないという判断を下します。
なぜなのか。
自分たちのポリシーを無視して経営理念を策定し、それに沿った経営で莫大な利益を得たとしましょう。短期的には間違いなく得です。でも根っこが本音や欲求とは別のところにあるため、次第にこだわりは薄れていき、中長期にわたって継続することが難しくなります。
思ってもいない理念を掲げ、耳障りのいい言葉を掲げていても、いつか高い確率でほころびが生じます。そしてそのほころびは「言っていることとやっていることが違う」という“ミスブランディング”に繋がっていきます。
ミスブランディングはネガティブな評判として広まり、ユーザーは離れていき、売上や採用といった数字に影響をおよぼします。そうなったらもうユーザーは戻ってきてくれません。だからこそ企業の根っこの部分はユーザー目線だけでなく自分たちのポリシーも大切にしてつくるべきなんです。
一方のマーケティングは、自分たちのポリシーよりもユーザー視点を重視することが一般的です。どこの誰に何を伝えたら購入してくれるのか?から逆算し、施策を通して自社やサービスの売上を最大化するのが目的になります。
短期的な成果を求めるウェイトが高いのがマーケティング
長期的な成果を求めるウェイトが高いのがブランディング
大きくこう分かれます。マーケティングで求める成果は市場にいる人のうちどれだけ多くの人に“今”購入してくれるかどうか。一方のブランディングは、ターゲットのうちどれだけ多くの人にファンになってもらえるかです。
多くの人に買ってもらえる仕組みをつくるのがマーケティング。自社のことを好きでいてくれる、誰かにおすすめしてくれる、中長期にわたって継続的に利用してくれるファンをつくるのがブランディングというイメージ。
マーケティングだけに特化した施策では、瞬間的な成果は見込めても数年、数十年にわたって愛され続けるブランドに中長期で勝つのは難しいです。逆にブランディングに特化した施策では、短期的な成果という面では数字につながらないケースがあることも多いです。
どちらが正解不正解ではなく、企業のフェーズや目的、サービスの特性に合わせてどちらも強化することが重要です。
ブランディングにはデメリットもあります。ブランディングを実践するなかで感じたデメリットについても具体的にまとめみたいと思います。
やはりブランディングを実践するために一番のハードルになるのが時間とお金の問題です。僕たちも年に一度は業務を完全にストップし、ビジョン共有のためだけの全社員合宿をやっていたり、ビジョンに沿った社内制度や福利厚生の設計などのコスト、TwitterやYoutubeなどを発信するためのコストなどを考えると大きなお金と時間を使っています。
3年前からブランディングを意識した会社づくりを実践してきましたが、その成果を少しずつ体感できてきたのは1年以上経過してからです。すぐに成果が出るものではないということも感じています。ただし広告なんかと違い積み上げたブランドは上乗せで構築していくことができるので、積み上げれば積み上げるほど年々体感できる価値は高まっていきます。
これはネックになるデメリットかもしれません。
これまで頑張ってくれていた社員が辞める可能性があるという点です。うちの会社でもビジョンマップを設計したことによって退職者がでました。とても優秀な人材だったんですが、会社の思想やビジョンを明言することで逆に「自分のやりたいことと違う」「会社の判断基準と自分の判断基準が合わない」ということで退職が起こるわけです。
正直、僕はこれでいいのかなと思っています。
元々、僕は絶対にひとを辞めさせたくない経営者でした。社員が辞めるということは課題のある駄目な会社だと思っていたからです。しかしここまでの経営経験を通してその考え方は変わりました。価値観なんてひとそれぞれで、当然そこには正解も不正解もない。自分たちの考えをはっきり示すことで、合う合わないが判断出来て、それぞれのやりたいことに向かっていけるならその方がいいなと思えるようになったからです。
ここではこれまでの事例からブランディングに失敗するよくあるパターンをご紹介します。以下の3点をやらないよう意識するだけでブランディングの成功にグッと近づけるので特に注意してみてください。
ブランディングには目的が大切だ、という話をこれまでしてきました。この目的を全社員みんなで決めてしまおうとする会社がありますが多くの場合が失敗してしまいます。人の価値観はさまざまです。「どこに行きたい?」と聞くと「アメリカに行きたい!」と言うひともいれば「私は中国に行きたい!」と言うひともいるでしょう。
全社員の意見を経営に反映させようとするとなかなかまとまらず、逆に抽象的でよくわからないビジョンになってしまいがちです。みなの意見を聞きながらも最終目的地はリーダーが決める。社員には「なぜその目的地に行くのか?」の意味を伝えついてきてもらうことも大切です。
もう一点注意してください。
目的はリーダーが決めると伝えましたが、リーダーだけで決められたビジョンでは社員からするとやらされてる感が強くなります。最終目的地はリーダーが決め、そこにたどり着くまでの手段は社員の声を大きく反映しながら実施していくと社員を巻き込みながら会社のビジョンをつくりこむことができます。掲げたビジョンを実現するために何をやるべきか?ビジョンマップで定めた価値観や判断基準を元に社員の意見をどんどん反映させていきましょう。
せっかく素晴らしい経営理念を掲げたとしても、その理念に沿った経営判断がされなければ誰も信じてくれなくなります。ブランドを積み上げていく上で絶対にやってはいけないこと。それが「決めたこと(経営理念)をやらない」ということ。
売上に繋がるからいいや、こっちの方が楽そうだからそうしよう、利益や感情で判断するのではなく、すべてを経営理念に沿っているかどうかで判断していく必要があります。オモシロイ会社をつくる、と言っているのであればオモシロイ会社に沿わないことは儲かってもやってはいけない。何があろうとブレることない信念を体験することで信用という名のブランドが積み上がっていくわけです。
ブランドを生み出すのは誰でしょうか?
企画を考えるのも、商品を作るのも、サービスを提供するのも、企業を動かすのはすべて「人材」です。ブランディングを成功させるために採用活動は重要です。会社の価値観や判断基準に沿わない人材を採用してしまうと、ズレた形で会社を発信してしまい目指すビジョンから遠ざかる結果になってしまいます。
スキルが高いから採用する。前職での実績が凄いから採用する。これらも大切なことですがそれ以上に「自社の経営理念に沿った人材を採用する」ということを実施していかないと、売上には繋がっても本当に目指すべき会社像からズレてしまいます。採用する前から経営理念を発信し、正しく伝え、相互理解することは大切です。
ここまで僕たちがやってきたブランドづくりの考え方や実践してきたことについてまとめてきました。ざっと書き出したので、自分でも読みにくいなあと思う点多々ありますが、少しでもみなさんの参考になれば嬉しいです。
ブランディングというと「大手企業がやるもの、中小企業にはできないもの」なんて思われてしまうこともありますが、僕は逆に中小企業にこそブランドづくりが不可欠だなと感じてます。なぜならサービスでも実績でもまだまだ勝てない僕らにとって、誰にも負けないと自信を持って言えるのは想いつまり「志」だと考えるからです。
本格的にブランドづくりを意識し、実践するようになってたった3年間ですが会社は大きく変化しました。これまでなんとなくやっていた経営も、目的をはっきりさせることで自分たちのやるべきことが明確になり、経営陣だけではなく社員からも「会社をこう変えたい!」という声があがり、一緒に会社を創っていく感覚を共有できるようになりました。
今はシンプルに「オモシロイ」です。
ブランディングの考え方はさまざまです。きっとこれから僕たちのブランディングの考え方もどんどんアップデートされていくことでしょう。今回いちばんお伝えしたく、そして自分たちにも言い聞かせたかったのは、「もっともっとオモシロイ会社づくりをしていこうぜ」ってこと、「そのために変化していこうぜ」ってことです。
自分たちらしさとはなにか?
この記事が自社の存在意義をいま一度振り返るきっかけになれば最高です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。