未経験からコピーライターになった方法、教えます。

「お前さあ、コピーライター向いてないよ。諦めたら?センスないし」

社長の一言で空気が凍った。2019年8月。猛暑日のことだった。

真夏にも関わらず、厚手のリクルートスーツを着て挑んだ最終面接。

面接はこれで25社目だったかな。

大学の同期はもうとっくの昔に内定をもらっているのに。

「エントリーシートの内容も意味わかんないし。こんな奴がいいコピー書けると思えないんだけど」
「すみません…」
「いや、謝る事じゃないんだけどさ」
「はい…。 すみません…。」

新卒採用が解禁されて5カ月。コピーライターを目指してきたけれど、成果はからっきしだった。

そんな就活時代を経て、現在僕、小川サトキはトゥモローゲートでコピーライターとして働いている。

就活でボロボロにされた僕がなぜ2年後にコピーライターになれたのか

コピーライターを目指している全ての人に、ご紹介したい。

悩みすぎて全裸で泣きながら『けいおん!』を熱唱した日

「俺はタカシ、25歳。今日は合コンだ!」
「可愛い子といい感じのムードに…! お持ち帰りしちゃうぞ!」
「『タカシ君青ひげ濃すぎ!ありえない…アタシ帰るね』」
「『タカシ、この前そんな事があったのか…おすすめの脱毛サロンを教えてやるよ!』」

悪夢の就職活動から2年が経った2021年8月。

僕は、YouTubeによく登場する脱毛広告をうつろな目で見ていた。マンガ調で人のコンプレックスを刺激する『あの広告』だ。

大学卒業後、僕は『あの広告』を売る仕事をしていた。

就職留年してまでコピーライターを目指した。

結果、営業職だけど、憧れの広告業界に内定をもらうことができた。

それでも、入社後に与えられた仕事はアフィリエイト広告の営業。

さっきのような広告原稿を別の広告代理店から貰って、クライアントに横流しにする日々。

当然、コピーを書く仕事はなかった。

こういった広告も、誰かの人生を前に進めることがあるだろうし、結果として経済を潤しているのかもしれない。

それに、親身になって毎日つきっきりで相談に乗ってくれる先輩だっていた。

でも僕は、自分の仕事が好きになれなかった。一生懸命になれなかった。そんな気持ちを抱えながら働く日々に悩んでいた。

というより、悩みすぎておかしくなっていた。

トイレで毎日えずいていたし、シャワーを浴びながら『けいおん!』の劇中歌「天使にふれたよ!」(※)を口ずさみ、彼女たちの輝かしい高校生活と自らの惨めさを比べてすすり泣いていた

「このままじゃまずい」そう考えた僕は再びコピーライターを目指して転職活動をはじめることにした。

トゥモローゲートに入社する半年前のことだった。

「ダサい」と思われるのが嫌でコピーライターを諦めた

すこし過去を振り返りたいと思う。

僕がはじめて「コピーライターになりたい」と思ったのは大学三年生の冬だった。

「仕事ってつまんなそうだな~。あ、クリエイターとかやりたいな。楽しそうだし、ヒゲ生やせるし。」

全国のクリエイターをナメすぎながら、就活の説明会をバックれ、大阪駅を歩いていたときのこと。

「何だこれは…!」

駅の構内に、めちゃくちゃ馬がいる。

当時JRA(日本中央競馬会)が出稿していた有馬記念の広告が目に入ったのだ。

その時、初めて「立ち止まって」広告を読んだ。

力強いボディコピーを読むほど浮かんでくる激闘の数々。競馬なんて見た事もなかったのに、ディープインパクトが翼を生やす様を僕は文章から想像していた。(「有馬記念2018 JR大阪」でGoogle画像検索すると出てくるとかこないとか)

世の中にはこんな文章を書ける仕事があるのか。

進路に悩む大学三年生の僕はこうして「コピーライター」を志すようになった。

そこから2年間で約60回面接に落ちた。

6回じゃない。60回である。

面接帰り。大阪環状線の車内で号泣したこともあった。我ながら泣きすぎである。

志望動機を考えるために14,000字で自己分析をまとめた
コピーライター養成講座にも通った。
「あなたのキャッチコピー50本1円で書きます」というサービスまで立ち上げた

やれることは全てやった。それでもダメだった。

なぜなのか。今になって思う。僕に足りなかったのは「続ける」こと。

そんなこんなで広告代理店の営業職に内定をもらうことになるのだが、本気でコピーライターになりたいのであればその内定を蹴ってでも就職活動を続けるべきだった。

でも、未熟な大学生だった当時の僕は「就職留年までしたのにこれ以上就活を長引かせるのはダサいよな」という理由で諦めてしまったのだ。

「未経験でもOK」トゥモローゲートとの運命の出会い

「コピーライターとして内定をもらえるまで、転職活動を絶対にやめない」

就活での失敗から学んだ僕の心構えだった。

しかし、現実は甘くない。

未経験からコピーライターを募集しているところはほぼないです

転職エージェントの決まり文句だ。

困った。

コピーライターとしての経験を積みたい。なのに未経験だとコピーライターになれない。

『ユニクロに服を買いに行く服がない』状態だ(分かりにくい例えだなと思ってもどうかこのまま読み進めてほしい)

え?

じゃあ、最初にコピーライターになるにはどうするの?

広告会社にはコピーライターが自然と生えてくる床があるのか?

困り果てながらTwitterを見ていた時。

フォロワーの人たちが、何やら「#ブラックな採用キャッチコピー」というタグで盛り上がっている。

どうやらトゥモローゲートという会社がコピーライターを含むあらゆる職種で求人を出していて、その打ち出しキャッチコピーをTwitterで募集しているらしい。

SNSで有名になりつつあったトゥモローゲート。

コピーライター志望の僕とは関係のない会社だと思っていた。

だが、求人が出ているとなると話は別。急いでホームページをのぞいてみる。

■応募条件
クリエイティブや言葉が好きであること
実務経験はなくても、一般公募の広告賞などへ応募し、ご自身のポートフォリオとして準備、作成している方はぜひエントリーください。

「実務経験はなくても」この文字列がこれほど有難いと思ったことはない。

長すぎる選考フローの果てに

ポートフォリオ選考→一次面接→課題選考→実地インターン→会食選考

トゥモローゲートの選考フローはそれまで受けてきた会社よりも圧倒的に長かった。

1日でも早くコピーライターになりたかった僕にとっては気が遠くなる長さだった。

自己紹介代わりのポートフォリオ選考

エントリーして最初の選考は「ポートフォリオ選考」

僕はポートフォリオ選考が苦手だった。

経験者には勝てない。選考基準が読めない。熱意を直接伝えられない。

それでも何とか差別化しようと以下2点を意識した。

自己紹介の内容を厚めにする
「キャッチコピー50本1円で書きます」企画で書いたコピーをたくさん提出する

なんとか選考を通過することができた。

ギリギリで受かった1次面接

ポートフォリオ選考の次は1次面接。

ここで就活時代につくった14,000字の自己分析が役に立った。

「なぜコピーライターになりたいのか」
「なぜブランディングに携わりたいのか」

いかなる質問に対しても深い自己分析のおかげでブレない答えを返すことができたのだ。

よくやった。就活時代の俺。

この時は「余裕で受かった」と思っていた。

しかし、後々面接官の1人だったコムさんに聞いたところ「履歴書がナメすぎていたので、僕は落ちるんじゃないかと思っていました」とのことだった。実はギリギリでの通過だったらしい。

▲当時の履歴書の一部

『史上初』になった課題選考

次は課題選考。与えられた課題はこうだ。

「トゥモローゲートの社員20名のTwitterを参考に、一人ひとりのキャッチコピーを書いてプレゼンしてください」

三度の飯よりお酒が好きな僕もこの時ばかりは飲み会を断った。

しばらく前から決まっていた旅行の道中でも筆を握っていた。

そうしてのぞんだ本番。

キャッチコピーを1つずつ画面に映しながら、面接官が「誰のコピーなのか」を当てる流れで進行した。

面接官「これは…かりんかな?」
僕  「ちなつさんです」

面接官「誰のことがわからない!」
僕  「これは福成さんですね…。」

おかしい。全く当ててもらえない。

3人連続で不正解くらいなら笑えたのだが、普通に10人連続とかで外してくる。

結果、20人中15人不正解という結果でプレゼンを終えた。

「表現は面白いけど、わかりづらいよね」

プレゼンが終わって最初にいただいたフィードバック。ぐぅの音も出なかった。

しかし、そんな結果に終わったにも関わらず選考を通過することができた。

コピーを評価されたワケではない。

課題に対しての考え方を評価していただいた。

「トゥモローゲートの社員20名のTwitterを参考に、一人ひとりのキャッチコピーを書いてプレゼンしてください」

トゥモローゲートから課題として伝えられていたのはこの一文だけ。

ただ、この時僕はいきなりコピーを書くことはせず、

そもそもなぜトゥモローゲートがこんな課題を僕に課してきたのか?を考えることから始めた。

その思考の過程を企画書に落とし込んでプレゼンした。以下のような資料だ。

たった5ページ程度の資料。

それでも選考官の池田GMに「ここまで準備してきた志望者は小川くんだけ」と言っていただいた。

というか、この準備がなかったら多分落ちていたと思う。

「3年の失敗」で合格を勝ち取ったインターン選考

トゥモローゲートにはオフィスで社員と一日中働く「インターン選考」がある。

ただ働くだけじゃない。

当日に課題が言い渡される。

僕に与えられた課題はこうだった。

「小川さんをトゥモローゲートが採用するべき理由をキャッチコピーと共にプレゼンしてください」

考えに考えた。

ありがたいことに、プレゼンの前に中間フィードバックの時間が与えられていた。

そこで最初に持って行ったコピーはこうだ。

大阪一お茶くみをする社長に告ぐ。大阪一球拾いをした男を採ってください。

トゥモローゲートは代表の西崎さん自らお茶くみをしていると聞いていた。

僕は高校時代野球部でだれよりもたくさん玉拾いをした。

その2つをかけあわせてつくったコピーだった。

スベった。

「前回と同じ。何となく面白そうだけど、何が言いたいのか分からない。つまり、採用するべき理由になっていない。本番のプレゼンまでにそこを改善できるといいね」

「前回と課題が同じ」

何ら成長していないということである。

やばい。

気がつけば本番プレゼンまであと30分に迫っていた。

どうすればいい。

そんな時にふと頭に浮かんだのは、何もわからないままコピーを書いて書いて書き続けた日々のことだった。

お金にならなくても。就職につながらなくても。とにかく書き続けてきた。

学生時代に自分で立ち上げたサークルの求人コピー。

友人から依頼されたポスターのコピー。

広告代理店に営業として入社しても変わらなかった。

22時に本業を終え、27時に寝落ちするまで万年筆を握る夜もあった。

そんな自分のありのままをトゥモローゲートに伝えたか?
面白いことを書こうとして自分に嘘をついていないか?
自分にしか書けない言葉はないのか?

本番プレゼンで提出したコピーだ。

至ってシンプルな言葉。

おしゃれな表現なんて皆無。

でも、これまでで一番高い評価をいただいた。

未経験での採用選考。

トゥモローゲートは僕にプロレベルのキャッチコピーなんて期待していなかった。

そんなコピー書けるわけがないのだ。

じゃあどこに期待されていたのか。

それは、コピーを書くことが好きで好きで仕方がない自分のありのままの想いと、

その想いが本物であることを証明する“数”だった。

僕はこのコピーをプレゼンで発表し、インターン選考に合格することができた。

酒池肉林の会食選考

そして迎えた最終選考。

トゥモローゲートの最終選考は西崎社長との会食。

会話を通じて「なぜトゥモローゲートのコピーライターになりたいのか」を見られる。

…。

まったく手応えがなかった。

というか、ただの楽しい飲み会になってしまった。

「1人暮らしでお金に余裕がないので、肉食えるうちに食っときます!あ、ビールおかわりで!!」

貧乏大学生のような言動を繰り返してしまったと記憶している。

それでも合格となったから今このブログを書いているのだが、なぜ合格できたのか、いつか西崎社長に聞いてみたい。

未経験からコピーライターを目指す全ての人へ

僕と同じように未経験からコピーライターを夢見る学生・社会人はたくさんいると思う。

その夢を叶えるまでは厳しい道のりかもしれない。いや、間違いなく厳しい道のりだ。

運やタイミングといった自分ではどうしようもない要素も絡んでくる。

だからこそ『続ける』ことが大切だと伝えたいと思う。

書き続けるという意味での『続ける』もそうだし、求人をチェックし続けるという意味での『続ける』もそう。

とにかく諦めずに続けてほしい。こんな僕でもコピーライターになれたのだから。

その上で最後に、僕が就職活動・転職活動を通じて特に大切だと思うポイントを2点お伝えして終わりにしたい。

①コピーは課題を解決するための言葉

コピーライターに求められるのは「何となく面白い表現としての言葉」ではなく「課題の解決につながる言葉」

その商品、サービス、企業にはどんな課題があるのかを見極める力が必要だし、その課題を解決するためにどんな言葉をどんな表現でつないでいけばいいのかを考える力も必要。そこを強く意識して書き続けることが大切だと思う。

②自分は何者なのか?の明確な答えを用意する

未経験からコピーライターを目指している人は多い。だからこそ「コピーライターになりたいです!」と言うだけではもちろんダメだし、周りのコピーライター志望の人と同じような努力をしていても難しいと感じる。

だからこそ自分にしかない経験をして欲しいと思う。僕で言えばそれは「あなたのキャッチコピー50本1円で書きます」企画だったのかもしれない。それがどの場面でどう役立つのか分からない。でも諦めずに続けていればいつか役立つ場面が来ることは事実だと思う。

華々しいコピーライター生活の始まり?

この3年は本当につらかった。

でも。これから待っているのは、コピーライターとしてのバラ色キャリアだ。

これから僕はスターダムを駆け上がる。

社内で評価されることはもちろん、社外の広告賞も総ナメにしてやる!!!

そんな伸び切った鼻は入社してまもなくバキバキにへし折られることになる。

続きはこちら→未経験からコピーライターになった結果、聞いてください。

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