(※この記事は、僕が受講した「コピーライター養成講座 基礎講座 103期大阪教室」の内容に基づく個人的な所感となっております。ご了承ください。)
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「小川くん、今日から君はコピーライターじゃないよ」
上司の一声に耳を疑った。
トゥモローゲートにコピーライターとして入社し、迎えた3日目。
明日から営業職に異動だろうか?
「コピーライター募集」とは求人詐欺だったのか?何て会社だ。
「どういうことですか?」
早速退職届を書きながらテーブルの向かいに座っている上司のヨシモトさんに聞く。
僕たちは今、二人で中華料理屋に来ている。
ヨシモトさん「社外から評価されてようやくコピーライターだからね。だから、コピーを書く分にはいいけど、小川くんの肩書は‟社内無職”ね」
…つまるところ「早く結果を出せ」というプレッシャーだ。社内1のベテランコピーライターからの発破。上等だ。
「頑張ります!あ、ごちそうさまです!」
…と宣言も手短にお昼ご飯をおごってもらったのは2か月前の話。
でも、すみません、助けてください。
コピーライター、しんどい!!!
INDEX
すみません、取り乱しました。
改めて自己紹介をすると、僕は今年の2月にコピーライターとしてトゥモローゲートに転職してきた、ぴちぴちの新卒一年目です。…え、知ってる?
そうです。僕の記事を配信するのはこれで2度目。しかも前回は先週の金曜日。ブログの一覧画面はこんな状態になっている。
「顔が濃すぎて胸焼けしそう」「連続配信は勘弁して」
そんな声が聞こえてきそうですが、今日は「未経験のコピーライターがトゥモローゲートで実際に働いてみた結果」をお伝えできればと思います。
もう限界なんです。聞いてください。
「なぜコピーライターの求人は未経験NGが多いのか」
僕が転職活動中に考えていたことだ。先日の記事にも書いたが、未経験から応募できるコピーライターの求人はかなり少ない。そして僕はこうも考えていた。
「俺は未経験者ではなく経験者と言っても過言ではないのに」
コピーライター養成講座に通い、『宣伝会議賞』にも参加し、「あなたのキャッチコピー50本1円で書きます」という企画をうち立てたこともある。3年間で、およそ1万本はコピーを書いただろう。
たとえ実務経験がなくても『経験者を名乗ってもバチは当たらないんじゃないか?』と思っていた。
だが、入社後に叩きつけられた現実は甘くなかった。
これはもう1人の先輩コピーライターまきぎさんによる僕の原稿へのダメ出…フィードバックだ。
僕は入社早々、ドキュメントに追加される大量のフィードバックにぶちのめされていた。
これまで宣伝会議の講座や自主企画で鍛えた書く筋肉は実務で必要な能力のほんの一部に過ぎなかったのだ。
ちなみに上記のフィードバックはごくごく一部。
ここからはそのフィードバックの全貌も含めて僕がコピーライターになって最初の10日間で味わった壮絶な体験をお届けしたい。
待ちに待ったコピーライター人生初日。
出社するや否や、とある企業様のWebサイトのライティングを依頼された。
そう、トゥモローゲートに研修などない。
入社5分で実案件にアサインしてもらえるスパルタ方式だ。
依頼内容はWebサイトに掲載される1人のインタビュー記事のライティング。
さあ、俺の奏でる美文に震えろ──。
…僕は悟った。養成講座と実務では競技が違う。養成講座が短距離走なら実務が長距離走だ。
養成講座で学んだキャッチコピーはウサイン・ボルトのように超スピードで胸に飛び込んでくる言葉。
一瞬で意味が分かり、一瞬で魅力を伝えきる。それがキャッチコピーである。
それに比べて実務では「最後まで読んでもらえる長文を書く力」も求められる。
10時間という長い時間にも関わらず箱根駅伝を最後まで見てしまうのはその間に沢山のドラマがちりばめられているから。
1,000字を超えるコンテンツを最後まで読んでもらうためには読み手の心境を考えてドラマを作らなければいけないのだ。
これをサボると、まきぎさんからの容赦ないフィードバックが飛んでくる。
『鬼滅の刃』は“主人公の家族が鬼に襲われる”という劇的なイベントで一巻が幕を開ける。だからこそ読者は先の展開が気になるのだ。
僕の書いた文章にはそんな物語の起伏がなく、鬼滅に例えれば「竈門家が平和に過ごす様子だけで一巻が終わる」ような面白みのない文章だったということらしい。(ちなみに、鬼滅の刃を読んだことがなかった僕は、初めてこのフィードバックを見た時ちんぷんかんぷんだった)
やばい。心が折れそうだ。なんて言っている暇はない。とにかく書かなければ。嵐のようなフィードバックに応えるために必死にキーボードを叩いた。
僕は初日に依頼されたインタビュー記事を完成させられずにいた。
「この展開、冒頭に持ってきた方がインパクトある」
「この内容、さっきの段落と被ってるから削ろう」
そんなフィードバックに圧倒され続けてきたが、おかげで長文をドラマチックにする方法が少しずつ分かってきた。
そして今日書くのは記事の見出しだ。いわゆるキャッチコピーである。
これまで長文のライティングに苦しんできたがようやく得意科目の登場だ。
今度こそ、俺のパーフェクトなキャッチコピーに酔いしれろ―――。
僕は思い知った。プロとアマチュアの大きな差を。
意識の差か?違う。実力の差か?それも違う。
「自分の書いたコピーが世に出た時のことを想像できているかどうか」だ。
僕はこんなキャッチコピーを提案した。
「この業界に足りていないのは、知名度」
それに対するまきぎさんのフィードバックはこうだ。
「知名度が足りていないのはこれまでの業界人のせい、と受け取られかねないのでは?」
コピーライティングとは企業の『代筆』だ。
「この人がこの言葉を発信した時、あの人はどう思うのか?この立場の人はどう思うのか?」を限りなく深くまで考えなければならない。臆病にならなければならない。
自分の書いたコピーが世の中に出る。
これは僕だけでなく、僕のようなコピーライター志望の人みんなが待ち望んでいることだが、それは想像を絶するほど重い責任がのしかかる仕事だった。
……
ぼくは、日本語がうまいほうだとおもっていた。
友人によくワードセンスをほめられた。コピーライターに興味をもった一因だった。
コピーライターになって1週間。
それは勘違いだったときづいた。ぼくは日本語がへたくそだ。
コピーライターになって1週間がたったというのに、日本語に関するフィードバックが山のようにとんでくる。
養成講座では、細かい日本語の『てにをは』よりも、キャッチコピーの『切り口の面白さ』が重視される傾向がある。
だが、実務は違う。
「切り口が面白い」「表現が面白い」
そんな「面白い」に取りつかれるよりも、
まずは日本語の足腰を鍛えなければいけないのである。
………
……
…ああ。
…コピーライターになって10日が経った。
入社してから今までずっと同じ記事を書いている。
1つのインタビュー記事に10日だ。
こんなことでやっていけるわけがない。
絶望の淵にいた時にまきぎさんからチャットが届いた。
まきぎさんから来たチャット
「時間をかけてもらったところ申し訳ないけど今回は巻木でリライトしたものを社内提出しようと思います。
ブランディングの“顔”となるサイトに掲載する文章としてもっともっとクオリティを高める必要があると判断しました。
ただこれは今の小川っちにとっては当然のこと。悲観的になる必要はないです。経験を積む中でレベルアップしていこう!
ちなみに今回取り組んでもらった○○と同じボリュームのページが○○社のサイトには15ページほどあります。
それらを取材も含めて1ヶ月くらいで完成させるスピードとスキルが今後の小川っちには求められます。
提出するまで1ヶ月!ではなく社内にOK!と言われるまでが1ヶ月です。さらに言えば案件は複数同時に進んでいます。
「焦らずに」と言っても焦る性格だと思うので、焦って焦って一緒にレベルアップしていこう!」
……
読んでわかる通り、僕が10日間かけて書いた文章は完成ではなく「頓挫」に終わった。
これがブランディングか。
これが“企業の顔”であるWebサイトをつくるということか。
養成講座では、提出した課題に対して一度フィードバックがあるだけ。
しかし実務では、同じ文章の同じ部分に対して無限にフィードバックが飛んでくる。
僕の場合は、そこの克服に50時間かかった。そしてついには克服できずに頓挫したのだ。
そうして、2か月が経った。
冒頭、ヨシモトさんに『社内無職』を宣言されて以来、僕は未だ『コピーライター』になれていない。実務に必要な能力が圧倒的に足りていないのだ。
まだ入社2か月なんだから焦らなくてもいいじゃないか…という訳にもいかない。
なぜなら、トゥモローゲートのコピーライターは僕を抜くと2人しかいないから。(ヨシモトさんはクリエイティブディレクター兼コピーライターなので、本職のコピーライターは僕を抜くとまきぎさんだけになる)
つまりトゥモローゲートは「コピーライターの3人に1人がポンコツな会社」ということになる。
そんな絶望的な状況で唯一、自分の武器になっているのは養成講座で培った「頭を使い、数をこなす経験」だった。
養成講座に通う受講生は「新聞のキャッチコピーを3本書いてきてください」という課題に対して50本以上書いてくるのが普通だった。50本書いたライバルに負けないように100本書いてくる猛者もいる。
『練習は嘘をつかないって言うけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ』
これはダルビッシュ有選手のTwitterでの発言だ。
確かにそうだ。もし練習が嘘をつかないなら僕が素振りを毎日していながらあれだけ野球が下手くそだった事に説明がつかない。
でも、だからこそ、「頭を使って、数をこなす」こそが成長への近道なのだ。
修行の様な養成講座で僕はそれを学ぶことができた。
トゥモローゲートで下っ端の僕はせめてアイデアを出しまくるしかない。
そもそも10日間の絶え間ないフィードバックをいただけたのも「数を出す」という姿勢を貫いたお陰だった。
「ひたすら数を出すつらさに慣れていた」というのは養成講座で得られた大きな財産だと思う。
コピーライターになって気づいた。
日本語を仕事にすることの繊細さ。そして自分の実力の無さに。
毎日が「俺、成長してるかも」と「最悪の文章を書いてしまった」の繰り返し。
でも。だからこそ、コピーは楽しい。仕事は楽しい。
僕がコピーライター養成講座で身につけたのは、書き続けることの楽しさだ。毎週毎週、課題のフィードバックをもらう度に自分の未熟さを痛感し、また次の課題へ挑む。
これは、トゥモローゲートでの実務でも変わらない。
時間をかけて書いて、フィードバックをもらい、また書いて。そうして、一歩ずつ進んでいく。
「気づいたら、ずいぶん遠くまで来ていた」
そう思える日を信じて、今日も歩き続けるのだ(もしかしたら、まだ一歩も進んでいないかもしれないけど)。
ここまで読んでいただいたあなたには、僕が瀕死状態で打ちのめされかけているように見えたかもしれない(というか、そう見せていたのは僕だ)。
でも、僕の情熱は、入社した時からちっとも弱まってはいない。むしろ、「もっと書けるようになりたい」という思いは日々強くなっていく。
これまで書いた1万本に比べれば2か月間の苦悩など大したことはないのである。
それに、トゥモローゲートだからできる挑戦だって、沢山ある。
キャリア1年目から企業や採用のコンセプト設計に携われること。
20代にしてクリエイティブディレクターを目指せること。
そう考えたとき『トゥモローゲートの社内無職』という身分は焦りがすごいけど、それでも頑張ろうと思える十分な環境だ。
これを読んでくださった皆さん、僕のこれからを応援してくれたらうれしいです。TwitterもやっておりますのでリプやDMなどで絡んでいただけるとうれしいです。
本当にがんばります。コピーライターになれるように。1人で企業のブランディングにおける言葉の責任を背負えるように。本当にめちゃくちゃ頑張ります。
P.S.会社の公式ブログで個人的な所感を綴ることが許されるのもこの会社の良い所かもしれない。バレなかったら、ここで何でも書けそうです。「ELDEN RING」の攻略法とかも。