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「させていただく」の正しい使い方。間違いやすい二重敬語5選

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間違いやすい日本語集

「拝見させていただきます」
「ご相談させていただければ幸いです」
「社長様はお帰りになられました」

トゥモローゲートのライターでこのブログの編集長をしているまきぎです。突然ですが(突然すぎますが)、今日は「気を使っているつもりなんだろうけど長くてわかりにくいんだよ!」とツッコミたくなる『二重敬語』を撲滅しにきました。

いきなりコワイ言葉を使ってすみません。

社会人になって今年で6年目。『二重敬語』のせいでコミュニケーションがうまくいかなかったり、余計なストレスが生まれている場面をたくさんみてきました。4年目ぐらいから「この状況を放置しておくわけにはいかない」という謎の使命感を抱きはじめ、最近は「撲滅しなければ」というさらに謎の使命感に変わりました。

そう思っていた矢先の2021年3月にこのブログ事業が立ち上がりました。“撲滅欲”を満たせる場所はここしかない。そう確信した日に書き始めた記事が完成したので今日、皆様に共有します。

なにやら過激な冒頭になってしまいましたが、いたって冷静に『二重敬語』を指摘して、いたって冷静に『二重敬語』を撲滅してまいります。

二重敬語とは

すでに敬語になっている言葉におなじ種類の敬語を重ねて使ってしまうことです。平成19年に文化庁が作成した『敬語の指針』という資料にくわしくあったので引用しますね。

(2) 「二重敬語」とその適否
一つの語について同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例えば 「お読みになられる」は 「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で、更に尊敬語の「……れる」を加えたもので、二重敬語である。「二重敬語」は一般に適切ではないとされている。ただし、語によっては、習慣として定着しているものもある。

参照元はこちら

つまり…と補足する必要もありませんね。ちなみにこの『敬語の指針』は敬語に関する情報だけが80個以上のPDFファイルにわたって書かれています。ぜんぶ読むには1冊の本を読破するくらいの覚悟が必要なので軽々しくオススメはしませんが、ちらっと覗いてみるのはいいかもしれません。

二重敬語はなぜダメなのか

ぼくはこの二重敬語が無駄な時間を生み出しているのではないか…と思っています。流行りの言葉を使うなら生産性を下げているのではないか…と。だって、もっとシンプルで失礼にあたらない言葉があるにもかかわらず、わざわざコミュニケーションに時間がかかる言葉を使っているわけですから。

会話だけでなく、メールやチャットでのやりとりも同じです。文字数がやたらと多くて読みづらい…と感じた文面を見たことがあると思います。その原因は何かと分析した結果、二重敬語だったというパターンがけっこう多いです。

敬語は相手に尊敬の意を表す言葉なのに、わかりづらくしてしまっては本末転倒です。失礼とまでは言いませんが、少なからず相手にストレスをあたえているのは事実です。

二重敬語は百害あって一理なしなのです。

やはり。撲滅しなければならないんです。

前置きが二重敬語ばりに長ったらしくなっているので、そろそろ本題に入ります。

使ってしまいがちな二重敬語集

おっしゃられました。

「おっしゃられました」の「おっしゃる(仰る)」は「言う」の尊敬語。そして「られる」は尊敬の助動詞。つまり「おっしゃられる」は尊敬語+尊敬語の二重敬語なんです。過剰表現とも呼ばれる間違った言葉使いなのでこの機会に撲滅してしまいましょう。

日常会話では気にしなくていいレベルだと思いますが、たとえばあなたの取引先のキーマンがめちゃくちゃ言葉に厳しいひとで「長ったらしいなあ…」と思われてしまったら減点ですよね。

「こいつわかってないな」と思われて契約が決まらない…なんていう最悪のシナリオもあるかもしれません。「おっしゃられました」の「られ」たった2文字で2千万円の契約が飛んだ…なんてことになったら悔やみきれませんよね。2文字で2千万…。

正解は「おっしゃいました」

ふだんから「おっしゃられました」を使うのが当たり前になっていると、物足りないな…失礼じゃないかな…なんて感じるかもしれませんが、二重敬語の原因となっていた「られる」をとっただけなので心配はいりません。「おっしゃいました」が正しい敬語です。撲滅、完了です。

伺わせていただきます。

「伺う」という言葉自体が自分をへりくだらせる謙譲語にあたります。つまり、その後ろに同じく謙譲語にあたる「させていただく」をくっつけた「伺わせていただきます」は、謙譲語+謙譲語の二重敬語になってしまうんです。

加えて、「させていただく」という表現には“相手に許可を得た上で自分にメリットがあることに対して使う”という決まりがあります。たとえば体調がすぐれないとき、上司から「休んでいいよ」と言われた返事として「お言葉に甘えて“休ませていただきます”」。これは、上司の許可があり、自分にメリットがあることなので正解です。

その点、「伺わせていただきます」が間違いであることは明らかですよね。

正解は「伺います」

前述したように「伺う」という言葉自体が謙譲語であるため「伺います」だけで問題ありません。目上のひとに使うシーンを想像すると失礼じゃない?と思ってしまう気持ちはわからなくもないですが、大丈夫です、これが正しい日本語です。

「伺います」と言った相手の認識が違って、「失礼だな!」と怒られたらすみません…。そこまで細かいところを指摘してくるひととはそもそもお付き合いしたくない…というのが本音ですが、そうも言っていられないのがビジネスですよね…。

でも、誰がなんと言おうと正しいのは「伺います」。させていただく必要はありません。撲滅、完了です。

拝見させていただきました。

「拝(はい)」という漢字には“頭を垂れて敬礼すること”という意味があります。つまり動詞に「拝」を付けることで謙譲の意味を込めることができるんです。と考えると「拝見する」という言葉自体が謙譲表現であり、そこに同じ謙譲表現の「いただく」をくっつけた「拝見させていただく」は二重敬語となります。

「拝見」という言葉はビジネスシーンで多用されます。「メールを拝見する」「企画書を拝見する」「ホームページを拝見する」…。そのたびに二重敬語を使っていると、積もりに積もって時間のロスやストレスの蓄積につながってしまいます。「なんとなく丁寧な気がするから」というぼんやりした理由で「させていただく」を多用しないように気をつけましょう。

正解は「拝見しました」

前述したようにこれだけで敬語として正しく伝わります。「拝見させていただく」と比べてスッキリしていますよね。ほかにも「拝聴する」や「拝読する」といった「拝」がつく敬語がたくさんあるのでそのつど意識してみてください。

「拝見させていただく」の撲滅が完了しました。撲滅対象はあと2つです。

お帰りになられる

帰ることの尊敬語は「お帰りになる」。さらに「られる」も尊敬の意を表わす助動詞のため「お帰りになられる」は尊敬語+尊敬語で二重敬語になってしまいます。この「お〜なる」のパターンの二重敬語はとくに多く、「お話になられる」や「お休みになられる」と当たり前のように日常で飛び交っているので注意が必要です。

たしかに「お話になられる」とか「お休みになられる」といった表現にはすごく丁寧な印象があるので、目上の人や普段めったに会わないようなお偉いさんについて話す機会があったら使ってしまいそうですよね。

でも、間違いは間違いです。丁寧すぎるあまり、謙虚すぎるあまり、間違った日本語で相手を不快な思いにさせてしまっては本末転倒。気をつけましょう。いまのうちに撲滅しちゃいましょう。

正解は「お帰りになる」

「社長様がお帰りになるので集まってください」といった使い方が正解です。

さあ。ここで問題です。この一文にも悪しき二重敬語が潜んでいるのですが、わかりますか?

社長様

「社長」という役職名には、その言葉自体に敬意が込められています。これは会長、部長、課長といったほかの役職でも同じです。そして「様」という言葉が敬語なのはご存知の通り。つまり「社長様」という表現は二重敬語なんです。名前で呼ぶシーンに当てはめると「西崎様様」と呼んでいるのと同じです。かなりやばいやつです。もはや意味が違ってきます。

このパターンの二重敬語は主にビジネスメールで見られる機会が多いと言われています。

「先日社長様にお送りした…」「会長様のご意向で…」

ぜんぶ間違いです。かなり初歩的なミスですが、やってしまっているひとは意外に多いので注意が必要です。即撲滅です。

正解は「社長」

言うまでもありませんね。会長、部長、課長、店長なんかもそう。役職名自体が敬語なのでそのまま呼べばOKです。

まれに出現する地獄の「三重敬語」

数ある二重敬語のなかでもとくに多く使われていると感じる5つを撲滅しました。…が、見逃すわけにはいかない表現がまだ残っています。地獄の「三重敬語」です。

「お召し上がりになられますか?」
「お承りいたしました」

「お」「召し上がりに」「なられますか」はぜんぶ敬語。
「お」「承り」「いたしました」もぜんぶ敬語です。

二重表現ですら無駄な時間を生み出しているのに三重表現なんてもう地獄…。一見、丁寧な言葉に見えますが、しっかり間違った日本語表現なので注意しましょう。

二重敬語っぽいけど二重敬語じゃない言葉

承知いたしました

言葉の響きでなんとなく二重敬語なんじゃないか?

というか、「いたす」と「ます」はどちらも敬語だから二重敬語なんじゃないか?と思ってしまいがちですが、謙譲語+丁寧語なので間違いではありません。二重敬語の定義は“一つの言葉に同じ種類の敬語を使ってしまう”ことですから。(ややこしいですね)

二重敬語はどうやって見分けるのか

二重敬語か否かを見分けるためには敬語の種類を把握しておく必要があります。ちょっとややこしい内容になるので時間がないひとは読み飛ばしてもらってOKです。

敬語の種類

尊敬語

自分よりも目上のひとや関係がそこまで近くないひとの行為について述べる言葉です。
例→ご利用になる、読まれる、ご説明、御社

謙譲語Ⅰ

自分側の行為について述べ、行為の向かう先がある言葉です。
例→お届けする、ご案内する、ご説明

謙譲語Ⅱ

自分側の行為について述べ、行為の向かう先がない言葉です。
例:先に申しましたように、いたす、弊社、

丁寧語

目の前にいるひとに対して敬意を表す言葉。話題にその相手が出ようが出まいが目の前にいるひとに敬意を表します。
例:こちらが注文の品物でございます、社長は元気です

二重敬語は「嫌われたくない」自己都合?

最後にこの記事を書くきっかけとなった本を紹介しておきます。電通のコピーライター橋口幸生さんの『言葉ダイエット』です。

橋口さんが実際に見たメールの文面が長々しくてわかりづらかったことから「書きすぎるからわかりづらくなる」ということに気がつき、同書を書かれたそう。

なぜ書きすぎてしまうのか?の理由の一つに「嫌われたくないから」をあげている同書は、二重敬語以外の間違った表現方法はもちろん、そこから派生してコピーライティングのノウハウなども書かれているので気になる方は手にとってみてください。スッキリした、無駄のない文章を書けるようになりますよ。

言葉のハードルがまた上がった

最後までありがとうございました!

前回と同じく言葉に関するブログを書きました。

こういった記事を配信するたびに「自分は間違えられない」という重圧が増しますが、まあ、それくらいの状況に身をおかないと怠けてしまう人間なので、これからも書き続けようと思います(笑)

また次回お会いしましょう〜!

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