こんにちは。西崎隼平です。
これまでブランディングの考え方などをブログで公開してきました。ひょっとしたらそのブログを参考に、自社や自分自身をブランディングしていこうと考えてくれた方もいるかもしれません。(いたら嬉しいです。)
そんな方にもっと参考にしていただける情報を提供するため、今回は実際の事例をもとに、トゥモローゲートが企業ブランディングをする際の流れを解説していきたいと思います。
名前こそ知っていても、実際にどんな流れで何をしていくのかまでは知られていないのが「ブランディング」の現実です。今回の記事をきっかけに、そこが少しでも明確になればいいなと思っています。
INDEX
今回ご紹介するのは創業85年、北海道紋別郡湧別町に本社を構える建設会社、株式会社西村組。建設会社の中でも港湾工事を得意としています。湧別町といえば北海道のおでこ(?)のあたり。札幌まで電車で5時間くらいかかります。
年間平均気温は6.4℃前後。2019年には最低気温-24.6℃を記録した人口8,332人の小さな町です。冬には過酷な寒さが訪れるこの町はかつてサロマ湖の湖口から大量の流氷が流入し、ホタテやカキなどの養殖施設が甚大な被害を受けるということがありました。被害総額はなんと20億円。
それを受けて官民連携で防氷施設「アイスブーム」を構築するというプロジェクトが立ち上がりました。そのプロジェクトの最前線で活躍した会社こそが西村組さんです。アイスブームは社会の教科書などで見たことある人もいるのではないでしょうか?
西村組のアイスブームに対する詳しい取り組みはコチラ【画像あり】
トゥモローゲートが西村組と関わるようになったきっかけは西村組の”若頭”として今後会社を背負って立つ四代目、西村幸志郎さんの一つのツイートでした。
このツイートを見て、ブラックな社長こと、トゥモローゲート代表西崎康平が、
と引用リツイートを送ると、即このやり取り。
そこからこの日のうちにWEBミーティングを行い、翌週には代表の西崎康平が北海道に飛んでいました。今思い返してもおそろしいほどのスピード感です。
そもそも地元の優良企業である同社は地元での採用力が強く、新卒採用も毎年コンスタントに成功していました。ただ、それだけで満足しないのが西村組という会社。もっともっとおもしろい会社になっていかないと、迎える100年、さらにその先の100年は生き残れない。そう考えていたのです。オーダーは「全国から面白い若者が集まるような誰もが誇りをもって働ける会社」になっていくこと。約2年にわたるプロジェクトがスタートしました。
ただ、先に申し上げた通り、北海道のオホーツク海に面する同社。エリア的な採用ハードルはかなり高いものがありました。ヒアリングを重ね、採用ブランディングコンセプトを設計をする中で最も難しかったのが、そのエリア的な採用ハードルをどう超えていくのか?ということでした。
当初は湧別という町にフォーカスし、魅力あふれる町のファンにしていくことを考えたのですが、町のファンになったとしても、観光で訪れることはあっても、働くという決断にまで至らない。。。
ということで次に考えたのは西村組の行っている建設業のおもしろさにフォーカスし、ブランディングをしていくこと。ただそれも、近隣に同業種がいたら明確な差別化にはならない。。。これだ!とシックリくるコンセプトが定まるまでトゥモローゲート8名のプロジェクトメンバーは頭を抱えながら試行錯誤を繰り返しました。
私たちがブランディングをする上で大切にしている考え方の一つに「競合に勝るブランドをつくる」ではなく「競合のいないブランドをつくる」というものがあります。
前者は必ずどこかで比較されます。採用分野で言えば給与、勤務地、会社規模、事業規模といったところで。しかしそれらは、ブランディングをする会社として本当に打ち出したいポイントとはズレていることが多い。だからこそ、競合に勝つことを目指すのではなく、競合のいない独自のブランドをつくることを大切にしているんです。
悩みに悩んだ末にひとつの結論に達しました。
エリアフォーカスは…観光でまかなえてしまう。
業種フォーカスは…近隣の同業種でまかなえてしまう。
だけど。。。
湧別という場所に恋人がいたらどうか?
恋人と一緒に過ごせるというメリットは、遠く離れた地で働く理由になるのではないか?
打ち出した採用コンセプトがこちら。
ヒアリングを重ねていく中で今後この西村組を背負っていく西村幸志郎さんの姿に強烈に惹かれている自分がいました。若干25歳でありながら、会社を愛し、会社の将来を本気で考える、次期四代目の男ディズム。こんな魅力的な人と一緒におもしろい会社を作りたいと思う人は全国にいるのではないだろうかと思ったわけです。
※実際の湧別の直近の最低気温が-24.6であったため、のちに温度変更(苦笑)
正直これは私たちにとっても大きなチャレンジでした。
自分たちでコンセプトを立てておきながら言うのも何ですが、これまでたくさんの採用サイトを作ってきて初めてでした。一人の男にだけフォーカスした採用サイトは。
ただ、コンセプトが決定してまもなく確信しました。このコンセプトは間違いなく成果を生むはずだと。
ほぼフォロワーがいないところから弊社代表の西崎康平が直接Twitterのノウハウを幸志郎さんに伝授。現在では9000人のフォロワーを持つビジネスパーソン注目のアカウントです。本気で動く幸志郎さんは行動量が違います。
西村幸志郎さんのTwitterアカウントはコチラ(ぜひフォローを!!)
その後、先のコンセプトをベースに実際に作り上げた採用サイトがこちら↓
さらには全編幸志郎さんがラップで会社を紹介するこんな動画まで。
幸志郎さんのTwitter上でリリースし、またたく間にたくさんの反響を得ました。Youtubeの再生回数はこの記事を書いた2021年12月5日時点で7000回を超えています。(さらなる再生回数増にご協力を!)
採用ブランディングプロジェクトを開始して1年ほど経過した現在、幸志郎さんご本人に採用の実績に関してインタビューをしたところ、最も大きく変化があったのは「応募してきてくれる人の層が変わった」ことだそう。これまでは地元の優良企業として待遇面などに期待した人の応募が多かったのが、今年は会社のスタンスに共感してくれる人だけが応募してくれるようになったとのこと。また、先の目標通り北海道外からの採用も決まりました。
採用ブランディングと合わせて行ったのが企業ブランディングです。もとより熱い人が多い西村組。ただ、以前からなんとなく「変わらなきゃ」という意識はあったものの、具体的な言動に移せていないのが現状でした。
そこでまず行ったのがビジョンマップ制作。これまでも西村組は理念の研修などを行っていて、大切にされている言葉をたくさん定めていらっしゃいました。しかし、それらの言葉がなぜ存在するのかといった明確な位置付けがされておらず、行動目標に落とし込むこともできていませんでした。
そのあたりを突き詰めるためにビジョンマップ制作プロジェクトがスタート。経営陣と事業部長合わせて9名のメンバーと共に3時間の打ち合わせを月2回、期間は7カ月、実に40時間以上かけて企業理念を再構築し、最終的には全社員を巻き込んでビジョンマップを完成させました。
このビジョンマップでは西村組が大切にしてきた言葉の位置付けを定義し、新たに守るべき行動基準、ビジョン、ミッションを明文化。公開はしていませんが、裏面には3か年の中期ビジョンと具体的アクションを盛り込みました。
また、このビジョンマップに則った評価制度も構築。スキルと実績で評価する従来の評価から、ビジョンマップを体現できている人が最も評価されるように「マインド×スキル×実績×ビジョンへの貢献」の4軸で評価される制度を構築しました。
評価項目も明確になり、上長からメンバーへフィードバックすべき箇所も、一目でわかるようになりました。この評価制度を設けたことによりビジョンマップの浸透が大きく加速していくことに。
次に行ったのは企業サイトのリニューアルです。
この企業サイトではビジョンマップで定めた想いを胸に秘め、社員さんが誇れる会社になれるように、徹底して社員さんにスポットを当てながら企業を紹介。総勢30人を超える社員さんにご協力いただいて完成しました。
これまで幸志郎さんが採用を行ってきた中、求職者の皆様に対してかける言葉は「幸志郎さんが考える会社の想い」の域を出なかったそうです。それが、ビジョンマップを作成したことで「会社の想い」として伝えられるようになり、会社自体の想いに共感してくれる人が採用できるようになったとおっしゃっていました。
組織としても変化が見られました。チームに対して何をすべきか、今まで最初の一歩を踏み出せなかった人たち。そんな人たちも、ビジョンマップという明文化された“絶対に守るべきもの”ができたことで世代問わず、自信をもって行動を起こす人が出てきたそうです。
このプロジェクトを通して改めて感じたことは、ブランディングってきっかけに過ぎないな、ということでした。トゥモローゲートが関われば会社が勝手に良くなっていくわけではありません。本気で変化していこうという強い意志を持った人と共に、その想いをチームに伝えていくことで生まれた行動が成果につながるのです。
そのきっかけとして私たちを選んでくださった方々に全力で応えることをトゥモローゲートはお約束します。もしブランディングに関するお悩みなどあればぜひ一度ご相談ください。
最後まで読んでいただきありがとうござました。
また、今回ブログでのご紹介をご快諾いただいた西村組様、西村幸志郎さん、本当にありがとうございました。