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「採用キャッチコピー」の重要性を考えたことはありますでしょうか。
採用課題の解決策として採用サイトなどに表示される採用キャッチコピーは重要な役割を担います。中でも「誰が、誰に、何を伝えるのか」が明確でその企業らしさを言い当てたキャッチコピーには採用を成功へ導く力があります。
従業員5000名以上の大企業が「第2創業者、募集」というキャッチコピーを使っていても「本当か?」と思ってしまいますが、数十名のベンチャー企業が同じキャッチコピーを使っていれば「お!」と興味を持つでしょう。
クリエイティブを生業とする企業が「真面目に、正しく。」のようなキャッチコピーを使っていてもクリエイターの心は動きませんが、創造的なキャッチコピーであればクリエイターが興味を持ってくれる可能性は高いです。
このように、採用活動をする上で事業、強み、採用課題、ターゲットに見合ったキャッチコピーを設定することがとても大切です。そのキャッチコピーを継続的に発信することが採用成功のカギになります。
今回のブログでは、採用ブランディング事業も行っているトゥモローゲートでコピーライターをつとめる私が、秀逸だと思った採用キャッチコピーの事例を紹介していきます。
なぜその企業がこのキャッチコピーを使っているのか?を分析することで採用キャッチコピーの重要性に迫っていければと思っています。
えびせんべいの製造・販売事業をメインとする桂新堂株式会社。採用キャッチコピーは「スタート えび家族」
採用サイトのメインビジュアルにあるシュールな写真がキャッチーで印象的ですが、その後に続くコンテンツを見るとこのキャッチコピーが単なる「ウケ狙い」ではないことが分かってきます。
これは、採用サイト内で紹介されている福利厚生の数々です。働く社員そして社員の家族まで考えている会社ということが見てとれますよね。また「採用メッセージ」というページには以下のような文章があります。
「スタート えび家族」というキャッチコピーで桂新堂さんが伝えたかったことには、「えびせんべいを作っている」という事業内容に加え、『社内の人間関係』もあったのではないかと推測します。
桂新堂さんの社員でも求職者でもない私ですが、キャッチコピーと採用サイトを少し見ただけで「どんな会社なのか?」をシッカリと理解することができました。その会社らしさや強みを伝える秀逸なキャッチコピーだと感じます。
メインビジョアルで動画が流れる『株式会社アスカフューネラルサプライ』の採用サイト。インパクトの強いその動画に添えられているのは「世界で一番ありがとうをあつめるチームへ」というキャッチコピーです。
株式会社アスカフューネラルサプライは、パート8名を含む従業員数24名の葬儀会社さん(記事執筆時点:2022年8月)。「葬儀施設の運営」という事業は求職者にとって距離を感じる可能性もあります。
そこを「お葬式を通じてありがとうをあつめる仕事」と再定義したのが同社のキャッチコピーです。「葬儀の仕事」と聞いて思い浮かべる先入観をガラリと覆す秀逸な言葉だと感じます。
全ての学習者の記憶定着をサポートし成績を向上させる学習サービス「monoxer」を提供するモノグサ株式会社様。採用キャッチコピーには『記憶』というワードを使用されています。
「学習者の『記憶』に着目する」という前例のないビジネスに興味を持ってもらうには、事業内容を簡潔に説明するのが先決と考えたのではないかと想像します。
事業に独自性があるからか、事業内容を説明されただけでも『独自のスキルを手にできることができるのではないか』『チャレンジングな環境で働くことができるのではないか』と感じることができます。
働く人のスタンスや社風をアピールするのも一つの手ですが、そうではなく事業内容をアピールする選択も、事業によってはアリだということがこの事例から読み取ることができます。
北海道札幌市に拠点を構える山﨑建設工業様。同社の大きな特徴は学校や商業施設、円山動物園などの大規模な建築に携わっていることです。
同社が建築に携わった北海道民になじみの深い大型施設一つひとつを、「いつか一緒に行きたいあの場所」「初めて恋をしたあの場所」と表現し、「造ったのは 実は、山﨑。」と山﨑建設工業の仕事の身近さを伝えています。
大規模なスーパーゼネコンなどに比べると「地域に根差した建築会社」は学生との接点が作りづらい側面もあることが予想されます。それでも学生の共感を得られるであろうビジュアルを採用サイトのメインビューに設定しています。
「実は、山﨑、このまちで、ずっと、あなたの隣にいた会社です。」という文章からも、北海道で青春を過ごした学生に対する「誰かの思い出をつくれる大規模な建築に携わりませんか」というメッセージが伝わってきます。
同社の採用実績を見てみると、北海道内の高校・専門学校・大学からの採用が多いことがわかります。その事実を知った上でもう一度採用キャッチコピーを見てみると、的確な言葉をターゲットに届けていることが分かってきます。
採用キャッチコピーは「何を言うか」ももちろん大切ですが、それと同じくらい「誰に言うか」も大切。山﨑建設工業様の事例は「誰に言うか」まできっちり設計していることが伝わってきますね。
ここからは弊社トゥモローゲートが担当させていただいた事例をご紹介します。
株式会社西村組は、北海道の紋別郡湧別町に本社を構える港湾工事を主な事業とする建設会社です。
採用活動は地元の高校・大学からの推薦が主だった同社。採用ブランディングに関してトゥモローゲートにご相談いただいた内容は「西村組だけの魅力を求職者に伝え、道外からも応募がくる魅力的な会社にしたい」というもの。
西村組のある湧別町は、北海道の新千歳空港からさらに約4時間かけてやっと辿り着く町。例年、北海道の学生以外からの採用応募はほとんどありませんでした。
「北海道に縁もゆかりもない求職者が、どうすれば湧別町まできてくれるのだろうか?」
その疑問に対して「憧れの人のためなら、どんなに遠い場所でも会いにいきたくなるのではないか」と考えた弊社は、採用サイトでとある人物1人にフォーカスすることを決断しました。
それは、西村組取締役の西村幸志郎さん。現社長のご子息であり次期社長の筆頭です。
幸志郎さんは、弊社にご相談をいただく前からTwitter上で積極的に発信しており、弊社社員も何度もリプライのやり取りを重ねていました。そんな幸志郎さんとプロジェクトを進める中で、Twitterでの発信と実際の思いにブレがないことを知り、その人柄にトゥモローゲートは魅了されていきました。
その人柄を伝えるという企画の方向性を定めた結果「西村幸志郎がラップで思いを伝えるミュージックビデオ」や、「西村幸志郎という人間の魅力だけを伝える採用サイト」を制作しました。
それまでの採用手法から訴求方法をガラリと変えた結果、同社にエントリーする学生の層に変化が。
幸志郎さんに憧れ、道外から湧別町に選考を受けに来る学生が増えただけでなく、実際に西村組に入社してくれる人も現れました。先ほどの山﨑建設工業と西村組は同じ「北海道の建設会社」ですが、事業内容や会社の強み、欲しい人材などに合わせて求職者へ伝える内容を変える重要性が分かる事例となっています。
トゥモローゲートに採用ブランディングのご相談を頂いた家電メーカーの株式会社ライソン。
総売上1億円、TVや雑誌など50社以上の取材を受けた「焼きペヤングメーカー」を開発したことで有名な同社は、「他の家電メーカーが作らないような、一風変わった家電の開発」を強みとしています。
そんなライソンが必要としていた人材は「商品開発に意欲的に取り組む精神力・決断力・好奇心の強い人」。
好きな製品を企画し、開発から営業まで一貫して携わることができるというターゲット層に『ささる』事実をアピールするために、「常識で考えず、常識を考える 令和の発明家」というキャッチコピーを展開しました。
「天才とは、1%のひらめきと99%の努力」とエジソンが遺したように、「発明」には失敗が付きもの。ライソン代表の山社長も、この焼きペヤングメーカーの開発にあたって4か月間毎日ペヤングを食べ続けたとのこと。
画期的な発明のためなら泥臭い努力もいとわない。
そんなDNAがライソンに流れることを知った弊社は、好奇心と忍耐力を持ち合わせた人材を採用するためにあえて「ボツになったアイデア」を公開するなど、「令和の発明家になれる人材」にターゲットを絞って採用サイトを作り上げていきました。
求めるターゲット像をキャッチコピーに集約し、それをもとに採用サイトを展開した事例。もしよければ覗いてみてください。
創立39年(2022年9月現在)の株式会社アイ・エス・アイソフトウェアー。弊社へご相談いただいた内容はこちら。
「これまでに提供してきた、安定したサービスを担う真面目でアクティブな人材も欲しいが、これからのIT業界でズバ抜けて成長するためには、これまでのISIにいないキャラクター、ISIに『反抗』できるキャラクターも欲しい」
そのために設定したのが「安定のISI/反抗のISI」というキャッチコピーでした。採用サイトのメインビジュアルでは一定の時間が経過すると「安定のISI」「反抗のISI」が切り替わるという仕組みを実装。
サイトに加えて「安定派」「反抗派」のどちらを選ぶかによってコンテンツ内容が変わる採用パンフレットを制作したり、採用動画では「安定派」の社員と「反抗派」の社員が激論を繰り広げるドラマ調のムービーを制作したりと、さまざまなツール展開を行いました。
採用キャッチコピーをさまざまなツールを通して伝えた事例です。
「八百屋を、日本一かっこよく。」というVISIONを掲げる八百鮮が、求職者に対して「かっこよさ」を伝えるために定めたコンセプトは「SEND GUYS」というものでした。
「愛される」「憧れられる」「尖る」など、八百鮮の定義する『かっこいい』をサイト内で表現し、八百鮮で働く魅力を全面的に押し出していきました。
また「商店街や市場を活気づける」「結果で突き抜ける」「5年以内に店長の平均年収800万円」など、先述の「かっこいい」を達成するためのSEND GUYSとしてのこだわりや目標を具体的に示すことで、「口だけではなく、行動で示していく」姿勢を求職者に示す採用サイトとなっています。
ビジョンに共感してくれる層を目がけて、心にささるコンセプトを通して企業の魅力を伝えることで、SNS経由で多くの社員の採用につながるなど、数値としての結果にも繋げられた事例です。
業種の異なる8社の採用キャッチコピーをご紹介させていただきました。
どの事例にも共通しているのは「ターゲットや訴求内容を絞っている」ということ。絞るからこそ心にささる、成果のあがるキャッチコピーが生まれるのだと思います。
採用活動に課題を感じられている方々の参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。