営業で日本一になったときの話。

営業やりだしてはや16年。評価されるのは成果を出した時だけ。それが当たり前だと思っていました。

だからこんなカタチで評価されることになるなんて正直思ってもみませんでした。

11月下旬。

寒がりな僕がオフィスの暖房が効く場所を探し出す季節。ブラックな社長こと西崎康平から言われた一言。

「これ、エントリーしといたから優勝してきて」

何のことかよくわからないままとりあえず返事をしました。

「分かりました。優勝してきます。」

概要を見ると『営業天下一武道会』なるものが開催されるらしいのです。

株式会社コミクスが主催するこの大会は、業種も商品も異なる企業から12名の猛者が集まり、決められたテーマで営業ロープレを行いナンバーワンを決めるというもの。

1日目の予選で4名が勝ち残り、2日目に優勝者を決めるサバイバル方式。

画像

いや、すごい人ばっかり。

名実ともに強烈な方々。

正直これ見た時は震えました。

普段から営業に関する情報をTwitterやYouTubeで発信しているのに「トゥモローゲートの営業って大したことなくない?」って思われることだけは絶対に避けないといけない。

逆に、こんな猛者たちの中で「さすがトゥモローゲート!」って思ってもらえれば、これまでのブランド価値をさらに高めることができるかもしれない。

こりゃ絶対優勝するしかないなって思ったわけです。

前置きが長くなりましたが、今日はその『営業天下一武道会』で優勝するために準備したこと、意識したこと、実践したことなんかを赤裸々に書いてみようと思います。

営業職の人でも、そうでない人でも、目標達成のために日々闘っている人に参考にしてもらえるよう書いていきます。ちょっと長文になりますが最後までお付き合いください。

営業で日本一になるためにやったこと(準備編)

『営業天下一武道会』で勝つためにまず自分がやったのは以下3つの準備でした。

①「必ず優勝する」と周囲に宣言する
②大会について誰よりも詳しくなる
③7年ぶりに兄にロープレをお願いする

「必ず優勝する」と周囲に宣言する

何事も僕が一番はじめに大切にするのが「動機」です

「やった方がいい」と頭で分かっていても、心の底から「やりたい!」と思っている人と「やった方がいいからやろう…」という人とでは結果に大きな差が出ます。

なぜかって心の底から思っている人はアンテナの感度が違うから。

心の底から「この車がほしい」と思っている人は街中でその車が走っているのを見逃しません。WEB広告でその車が出てきたら必ずクリックします。手に入れるにはいくら必要なのか他に必要なものは何なのか徹底的に調べます。

逆に「なんとなく欲しい」としか思っていない人は走っている車を見逃すこともあればWEB広告をスルーすることもあるでしょう。結果として得られる情報量や情報の濃さが変わってくるんですよね。

その点で「動機」というのは何事においても本当に大事です。同じ目標を追いかけるにしても「動機」が明確なら2倍3倍もしくはそれ以上のスピードで進むことができます。

ではその動機はどうやって醸成していくのか?

動機は大きく2種類に分けることができるので、そこを整理することからはじめましょう。

①得られたら嬉しい、成し遂げられたら嬉しい、というポジティブな動機
②得られなかったらヤバい、成し遂げられなかったらヤバい、というネガティブな動機

ポジティブな動機で強く動ける人は経営者に多く見られる印象です。自分の成し遂げたいことのために事業をおこし、苦難にぶつかっても突き進んで乗り越えていくタイプ。

僕はどっちかと言うと逆で、後者のネガティブな動機で動くタイプなんです。優勝できなかったらヤバい、誰かにガッカリされるなんて死んでも嫌、っていうタイプ。

もちろん、先述したように優勝することで会社にとってすごくメリットがあるのは分かっていました。ただ、そのポジティブな動機だけでは僕にとってはまだ弱かった。だからこそ社内で宣言しまくったんですよね。

余裕(風)な表情で「絶対負けない。優勝してくるわ。」って。

それだけ大口を叩いて優勝できなかった時に周りにガッカリされるのが自分にとっては一番嫌なことだったので。

ポジティブ動機かネガティブ動機。

どちらが良い悪いという話ではなく、自分がどんなタイプで、どうすればうまくセルフコントロールできるかを見極めることが大事。

まずこの動機醸成をするところから『営業天下一武道会』への挑戦は始まっていきました。

大会について誰よりも詳しくなる

動機醸成の次にやったのはどういうルールで、どうなれば勝ちなのかを徹底的にインプットすることでした。

これって、シンプルですがすごく大事なこと。

インプットを徹底することで有効な対策とそうでない対策をハッキリ見極められます。限られた時間の中では有効な対策から順にやっていった方が絶対にいい。今回で言うと以下のような感じ。

2日間開催。1日目の予選は12名から4名勝ち抜き。2日目の決勝はその4名で争う。
→このルールを見た時「初日に全精力を注ぐ」ことを決めました。あれだけ猛者揃いの大会で余力なんて残していたら予選敗退も十分にあり得ます。だからこそ初日に全振りすることに決めたんです。

予選は3つのテーマから1つを選んでプレゼン。決勝はそれ以外2つのテーマから1つを選んでプレゼンする。
→いろんな視点でどのテーマが一番良いか考えました。結果、3つのテーマ全てでプレゼンを考えて一番いいと思ったものを予選にぶつけることに。そうすれば決勝にいってもプレゼンの準備ができているので有効だと考えました。ちなみに3つのテーマはざっくりこんな感じ。

【A】3億円を調達したSaaS企業のMRR1千万を3千万にする提案
【B】3億円を調達したメタバース企業が新たに起こす新規事業に対し商材を設定して提案
【C】エンジェル投資家に自らが考える新規事業を提案し資金を調達(3億円)
※顧客の課題や事業詳細などは自由に設定してOK

最終的に自分が予選で選んだのは自由度の高い【C】でした。

理由は一番差別化ができると思ったから。実はこの考えに至ったのは次の③に大きな要因があります。

約7年ぶりに兄にロープレをお願いする

普段ロープレを受けてフィードバックすることが多いので誰かにロープレをお願いするのは7年ぶりでした。それこそトゥモローゲートに入社した当時、兄にお願いしてセールストークを組み立てていった時以来。

それくらいロープレは大事です。仮想クライアントに対してプレゼンをすることで反省点や改善点が可視化されますし、何より第三者がどう感じたのかの客観的な意見を聞くことができる。こんな有意義な場はありません。

7年ぶりに兄にロープレを行い、もらったフィードバックは大きく2点。

フィードバック①
「相手の情報をもっと徹底的に調べてその人のバックグラウンドに合わせて話を展開した方がいい。」

本来、営業は受け手のことを徹底的に調べ上げてその人に合わせた解決策を提案するもの。ただし、今回の『営業天下一武道会』では、受け手の設定はプレゼンターが自由に決めます。

なので最初にロープレをお願いした際は受け手の情報をまとめることが出来ていませんでした。ひょっとしたら他の出場者の方も同じかもしれない。だからこそ、いつもの営業のように受け手の情報を調べてプレゼンすることで差別化ができる。そんなフィードバックをもらったんです。

幸い、大会のスケジュールに受け手が誰なのかは書いてありました。複数名いたため、誰が自分の受け手になってくれるのかは当日のくじ引きでしたが、このフィードバックをもらった後は、その受け手全員のホームページ、SNS、動画、インタビュー記事などを読み漁り、スプレッドシートにまとめました。

また、そこから考えたそれぞれの人に合わせた導入、ヒアリング事項、提案内容を練り、メモして手帳に貼り付けました。

相当読み込んだということもあり、本番時には暗記していたので使うことはありませんでしたが、それくらい徹底的に準備をしました。実際のイメージがコチラ↓

フィードバック②
「今のままでもそこそこ戦えると思うけど、絶対に優勝できるとは言えない。そう言えるための差別化が必要」

これは本当に大きなポイントでグサっとささりました。

と同時にこれを速攻で言い当てる兄に経営者としての強さを感じました。

何度も繰り返すように出場者は猛者ぞろい。普通にプレゼンしてもヒアリング力、課題解決力、プレゼン力にそれほど大きな差は出ない。そんな中でも「この人は一味違う」と思ってもらえる唯一無二の武器が必要でした。

実際このフィードバックを受けて当初は先に記載したテーマの【A】を選んで挑むつもりでしたが、大会2日前に【C】に切り替え、改めて練り直しました。

単に差別化といってもそこには自分の中で一つ考え方のフレームがありました。そのフレームのイメージはざっくりこんな感じ。

▼選定課題
【C】エンジェル投資家に自らが考える新規事業を提案し資金を調達(3億円)


▼差別化をするための思考の変遷
資金調達が成功する一般的な提案は?
     ↓
投資家に利益をもたらすビジネスを提案すること。
     ↓
1円も利益をもたらさない提案は普通はやらない。
     ↓
あえて「1円も利益をもたらさない提案」をして投資したくなるストーリーを描く。
     ↓
他の参加者との差別化が実現する。

こんな流れです。

兄にロープレを受けてもらったことで本番に向けての準備がより強固になりました。

ここからは、優勝するために本番でやったことを書いていきます。

実際のどんな提案をしたのかこのブログの後半に動画リンクを貼り付けていますので、ぜひそちらをご覧ください。

営業で日本一になるためにやったこと(予選編)

「誰こいつ現象」を回避する

大会当日。

普段あまり緊張しないタイプの僕ですが、今回ばかりは前日から過去一番くらいに緊張していましたし、会場についてもその緊張が解けることはありませんでした。

ただ、会場に着いた時点でやることは決めていました。それは大会の運営関係者の方、出場者の方、受け手の方、審査員の方、全ての方に挨拶してコミュニケーションをとって回ること。

大会が始まる1時間半くらい前に会場入りしていたこともあり、ほとんどの方とコミュニケーションをとることが出来ました。大前提としてお世話になる方々なのでご挨拶をすべき、というのがありますが、それと同時に勝つために必要なことだとも思っていました。

今回の会場は東京で、参加されている皆さんは東京でビジネスをやっている方も多く、この大会以前から知り合い同士だという方もたくさんいらっしゃいました。

一方、僕は普段大阪に住んでいますし、ビジネスの現場もほとんどが大阪です。以前から知っている人もごく数人しかいません。

そんな中で出場しても、その人達からすると「誰こいつ?」状態です。そんな状態でスタートしてもなかなか受け入れられにくい。

余談ですが、昔からなぜか友人の結婚式の二次会の司会進行をやらされることが多かったんです。

ああいう場って、知り合いじゃない人からしたら、知らない人がいきなり喋り出すのでなかなか場が温まりません。知らない司会の進行に耳を傾けるより、久しぶりに会った友人と話している方が楽しいに決まってますから。

でも、誰もが知っている有名人や、その場にいる全員と知り合いの人が司会だったらどうでしょう。多くの人が、隣の友人との会話を止めて司会者に注目するはずですよね。

なので、司会進行を担当する時は決まって一番に二次会の会場に入り、参加者の中で知らない人ほぼ全員とコミュニケーションとってから会をスタートするようにしています。

そうすると会が始まった頃にはみなさんが自分のことを知ってくれているので「お?さっきのあいつがしゃべりだしたぞ?」みたいな感じで耳を傾けてくれるんですよね。

余談が長くなりましたが、『営業天下一武道会』でもこれと同じことを意識していました。だからこそ、早めに会場入りして参加者や運営スタッフの方々できるだけ多くとコミュニケーションをとることにしたんです。

そして迎えた本番。

よくM-1などのお笑いのショーレースなどでも話題に上がるのが出場順。それが結果にも左右するなんてことも言われます。

ただ、今回に関しては12名のうち4名ずつブロックに分けて、A~Cブロックの1位3名と各ブロックの2位の中で最も得点の高かった1名を加えた合計4名が予選を通過するというもの。

M-1のように出場10組が一気に評価される大会であれば、一番手はどうしても審査が辛くなりがちで後半になればなるほど会場も温まるという事があるかもしれません。

でも、今回は同ブロック4名が終わった時点で審査→そのブロックの結果発表という流れ。正直、順番による差異はそれほど大きくないのではと考えていました。

むしろ、営業というジャンルで決まったテーマで提案するのであれば扱う題材が被ってしまうような可能性もある後半の方がやりにくいと考えていたので、できれば早めに発表できる方が望ましいと思っていました。

運命のくじの結果…

「Aブロック2番」

正直この瞬間「くじ運強いな」と思いました。

あとは全力で準備してきたものをぶつけるのみ。

実際のその時のプレゼンを主催者であるコミクスさんが配信していますので、ぜひ見てみてください。

結果、何とかAブロック4名の中で1位となり予選を通過することが出来ました。

営業で日本一になるためにやったこと(決勝編)

「アドリブプレゼン」という逆張り戦略

決勝は翌日。

幸いAブロックで早めに終わったためその後大会の様子を見つつも、頭の中で決勝どうするかを必死に考えていました。

決勝はプレゼンテーマ【A】~【C】の中で予選で選ばなかったものから選ぶルール。幸い、他の出場者の方のプレゼンも予選で確認できたので、全てのテーマのプレゼンを見ることができていました。

プレゼンの内容。会場の雰囲気。審査員の方々の反応。

現場のリアルな情報をインプットすることができたので、より具体的に差別化するイメージは持つことができました。

結果、実践したのがまたまた「逆張り」でした。

ルールとして受け手の詳細設定をプレゼンターがするという本大会。であれば逆に詳細設定をせず、その場のアドリブで対応する。それが決勝で考えた方針でした。

ただ、アドリブでやるにしても、それが皆さんに伝わらなければあまり効果は期待できません。そのため、決勝当日、ある布石を打ちました。

それはプレゼン直前にある設定発表の際、「細かい設定をせずにアドリブでいく」という事を宣言して、そこをポイントに見てもらえるようにしたこと。

受け手の情報は事前準備の時点で把握していましたので、それぞれの方の背景にあったポイントからヒアリングをできる自信はありました。問題は順番。どうしても雰囲気が固くなりがちな最初だけは避けたい。

運命のくじの結果…

「1番」

正直この瞬間「持ってんなー」と思いました。決まって速攻出番です。

実際のプレゼンはどうだったのか。

その様子もコミクスさんのyoutubeで公開されているのでぜひご覧ください。

【結果発表】有言実行ができてよかった

他の、3人の方のプレゼンも素晴らしくて誰が勝ってもおかしくないなと思いました。

それでも心の中では絶対に勝ちたいと思っていました。あれだけ会社で「優勝してくる」と言いふらしたので。

4位から順番に発表されていく過程は正直もう何も覚えていません。

普段営業に関する情報発信をしているトゥモローゲート。

動画に出演しているメンバー以外にも日々頑張ってくれているメンバーがたくさんいます。

そんなみんなの仕事は凄いということをどうしても証明したかった。

だからこそ、優勝が決まったときは本当に嬉しかったです。

発表の瞬間に一番声を上げて喜んでいたのが兄だったのは色んな意味で衝撃でしたが(笑)

ただ、それもやっぱり嬉しかったです。

その日の夜は会場に来てくれたトゥモローゲート東京支社のメンバーとご飯を食べに行きましたが、僕はずっと安堵のため息をつくか、興奮してこのブログで書いたようなこと熱弁するかのどちらか。

メンバーには迷惑かけました。

その対価としてお会計でびっくりする六本木のステーキを奢らされたので良しとしてください。

【まとめ】「誰よりも準備した」と言い切れるか?

目標を達成するために本気になる。

その結果、得られる経験値は代えがたいものである。

この大会を通して改めて痛感しました。

大事なのは、やはり準備。

「誰よりも準備した」と言い切れるまで準備することで自信にも結果にもつながります。

最後に、素敵な大会を企画・運営してくださったコミクスさんと関係者の皆様、審査員の方々、受け手の方々、出場者の方々、ご来場いただいた方々、応援してくれた会社のメンバー、本当に感謝しかありません。

ありがとうございました。

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