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名作コピー分析『胸をしめつけるのは恋だけでいい。』|コピーライターによるリレーコラムVol.02

想像もしていなかったテーマが回ってきました。

ブランディング会社のコピーライターが、「名作」と呼ばれるキャッチコピーを分析するリレーコラム第2回。分析するコピーは前回担当したコピーライターが無茶振りする形式なのですが、後輩の小川から無茶振られたコピーはこちらです。

(引用:withnews

『胸をしめつけるのは恋だけでいい。』

小川の書いた第一回の最後にもあったように、私まきぎは高校→大学と野球漬けの日々を送り、新卒でプロ野球担当の新聞記者として5年近く働いた“漢社会”で生きてきた人間です。

そうです。「恋に胸を締め付けられた」経験はほぼ皆無。なのにこのコピーを分析しろと言われて怒りにも近いプレッシャーを感じておりますが笑、無縁だからこそわかることがあると信じて分析してみたいと思います。

ブランドの視点から見る『胸をしめつけるのは恋だけでいい。』

インナーウェアを身につけた女性の写真と「胸をしめつけるのは恋だけでいい。」という言葉。

広告主は、衣料品や雑貨を中心としたSPAブランドを展開する『アダストリア』さん。同社のアパレルブランドの1つ『bijorie(ビジュリィ)』が2018年に発表して話題になりました。

SNSでも多くの人に拡散され、共感の声が吹き荒れたまさに名作コピーです。今回はこれを消費者目線で分析…と言いたいところですが、消費者の気持ちにはなかなかなれないので、「ブランド」の視点で分析したいと思います。

インナーウェアの広告なのでファッションブランドであることは想像できます。でも、コーポレートサイトを見ると、ただのファッションブランドではないということが見えてきました。経営理念のページを見てみると、

 

VISION「一人ひとりの毎日に「もっと楽しい」選択肢を

目指す未来を表す「VISION」には、ファッションに限定しない言葉が掲げられています。事業や取り組みに目を通すと、例えば「就労を目指す障がいのある方への就活サポート」というコンセプトの事業があったり、

「商業施設で働くショップスタッフのサステナブルな働き方を実現する」というコンセプトの『ささえあう 働く時間プロジェクト』の発足に携わったり。

ファッションという枠組みにとらわれない多様な取り組みをされています。このような背景を知ってから、「胸を締めつけるのは恋だけでいい。」というコピーを見てみると、違った視点での分析をすることができます。

言葉の表現から見る『胸をしめつける恋だけでいい。

単にインナーウェアの魅力を伝えるのであれば、「締め付けのない快適なブラ」といった機能面のワードを使用してもいいところ。しかしアダストリアは対象を「恋」に広げることで、恋をする女性を応援するブランドであると宣言するようなコピーを打ち出しました。

今回の商品のメインターゲットは女性だと思います。しかし、女性に買ってもらうことが最終の目的ではないのではないかと思います。ファッションを通して女性を含めた多様な人たちを応援し、VISIONである「一人ひとりの毎日に「もっと楽しい」選択肢を」を実現していくのが最終の目的。

だからこそ、インナーウェアの機能面ではなく、そこに取り巻く人の心情に着目し、表現を整えていったのではないかと分析します。

見た人が拒絶反応を起こさない言葉選び

言葉の表現に着目するとさらにこのコピーの凄さがわかります。コピーライティングで大切だと言われていることの1つに、「直接言わずにその企業や商品の魅力を伝える」があります。

「自分はすごいんだぞ!」と自信満々に言ってくる人がいると「うっ…」となりますよね。同じく自社や自社商品のことを自身満々にすごい!と言っている広告を見ると「うっ…」となってしまうこともあると思います。

その点、このコピーは、企業や商品の名前はおろか、インナーウェア、ブラジャー、下着といったジャンルの名前すら言っていません。

「締め付ける」という商品に紐づくターゲットだけがわかる言葉でジャンルを匂わせながら、恋という身近なワードにくっつけることで間接的に商品の魅力やブランドのメッセージを表現しているんです。

想像してみてください。

アンダーウェアのキャッチコピーを考えてくださいと言われた時、「恋」というワードが思い浮かぶでしょうか。僕は全く自信がありません笑。ましてそこに「締め付ける」という商品を匂わせる言葉と絶妙にくっつけるなんて圧巻の一言です。

アピールする広告ではなく応援する広告

ここまで分析して思い出したのはシャネルです。

シャネルというブランドが登場するまでの20世紀初頭は、女性は“服で自分を犠牲にしなければならない”状況でした。

全身のシルエットがくっきり分かるタイトなドレス。
足首ほどの長さがあるスタート。
全身を細く見せるためのコルセット。

女性が窮屈なファッションを強いられていることに疑問を抱き、立ち上がったのがシャネルの創業者であるココ・シャネル。彼女は以下のキャッチコピーを掲げて現状を変えに行きました。

「女のからだを自由にする」

商品をPRするのではなく、ターゲットとなる人を応援するキャッチコピー。これに沿って発売されたシャネルの製品は多くの女性から支持を得、やがて世界的なブランドに成長していきました。

「胸をしめつけるのは恋だけでいい。」

今回紹介したキャッチコピーも、PRではなく応援する方向性で構成されていますね。濃いファンづくりであるブランディングを支援する会社のコピーライターとして、心にとめておきたい事例だと感じました。

次回は『電気よ、動詞になれ。』

さて、次回です。

後輩コピーライターの小川に分析をお願いしたいのでこちら。

(出典:明電舎公式サイト)

こちらは2022年TCC(TOKYO COPYWRITERS CLUB)年鑑に掲載されている明電舎の広告。「電気よ、動詞になれ。」ボディコピーも含めて勇気を与えてくれるようなエネルギッシュなコピーです。

このコピーをコピーライター目線で分析してもらいます。背景は?目的は?表現として秀逸なところは?乞うご期待ください。

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