トゥモローゲートの西崎です。
ひさびさにブログを書きます。先日とある専門商社に内定した30代の男性が、その男性の歓迎会の酒席で失言したことで内定を取り消されるというニュースがあったのをご存じでしょうか?その男性は内定取り消しを不服として訴訟を起こし、現在当該企業と争っているそうです。(2023年10月上旬時点の情報です)
もしも、内定を出したが入社前に「やっぱり違うな」となった場合、企業が取るべき行動とそのような事態に陥らないようにするための対応とは何か。最終面接を飲み会で実施し年間20名を不採用にするブラックな企業を経営する僕なりの意見をまとめてみたいと思います。
INDEX
まずは今回のニュースの概要から。
ある専門商社に内定を得た30代の男性が、入社前の歓迎会での飲み会において、支店長や他の社員たちとの交流の場に参加したことが話のはじまりです。この男性は面接段階では非の打ちどころのない振る舞いを見せ、会社からも将来を期待されていた存在でした。ここまではどの会社にでもある普通の話です。
しかし、その歓迎会の酒席で事件は起こります。
多量のお酒を飲んだ後の彼はまったく異なる一面を見せました。泥酔した彼は、支店長を呼び捨てにし、他の社員に対して「反社のようだ」と非難する言動を取り、さらには自らの入社理由を「ついでに受けただけだ」と軽く答える始末。
このような態度を目の当たりにした支店長や他の社員たちは、「彼と一緒に働くことは無理だな」と感じ(まあ、誰でもそう感じるでしょうが)、結果として彼の内定を取り消すという判断をしました。しかし、この内定取り消しに対して男性は不服を訴え、会社を提訴することになった、簡単に伝えるとそんな内容です。
下記にこちらのニュースを細かくまとめた記事があるので興味のある方は見てください。
さてここまでの話を聞いて、あなたは会社が下した「内定取り消し」という判断を妥当であると感じますか?
結論、今回の「内定取り消しは妥当な判断である」というのが僕の意見です。
もしも、自分の会社でこのようなことがあれば同じく「内定取り消し」という判断を下す可能性が高いと感じました。上司を呼び捨てにする、不快な言動をする、事業を運営するにあたり、会社のブランドを著しく壊す恐れがあるリスクは取らないというのが僕の判断です。
もちろん、いきなり「内定取り消しだ!」ということを伝えるわけではなく、本人と1対1で話をしこちらの意図を伝えた上で、本人の変化が望めない(今回のようなケースでは資質の問題なので変わるのは難しいという前提)ようであれば内定を取り消すという流れを取ることでしょう。
「いやいや、でも内定を出しているんだから、通知後に内定を取り消すのはおかしいでしょ」という意見もあるかもしれません。いったい内定通知の法的な効力とはどのようなものなのでしょうか?
内定通知の発行は法的に定められているものではありません。ただ入社までの期間に口約束だけでは企業側も求職者側もリスクがあるため、書面で正式に採用(入社)を双方で約束しましょう。というものが内定通知です。
内定通知は労働契約法第6条に定められている「労働契約の成立」に当たるケースがほとんど。つまり相応の事由がないにも関わらず、簡単に「とりあえず内定だしたけど、やっぱり採用するの辞めとこう」みたいな内定の取り消しは労働契約法第16条に示される「解雇権の乱用」に該当し法令違反ということになります。
では、内定通知を取り消すことができる相応の事由とはどのようなものでしょうか?
などが挙げられます。今回のケースでは、著しく不適切な言動に当たるとして、内定を取り消される可能性があると感じました。(もちろん詳細なやりとりを把握しているわけではないので、あくまで公表されている情報と、そこから推察できる状況からの判断となります)
では、逆に内定通知を出した求職者側が内定を辞退した場合の法的効力はどうなるのでしょうか?
実はこちらは、「理由に関わらずいつでも内定辞退が可能である」というのが一般的な見解です。民法第627条1項には、「雇用期間に定めがないときは、解約(内定辞退)の申し入れから2週間が経過すると雇用契約が終了する」と定められています。労働契約の解約について、応募者は解約の意志を伝えてから2週間後に契約を解約することが可能です。
例えば「内定時に会社から備品を支給されたが、その返却もなく一方的に内定辞退を伝え、連絡が取れない」など、常識を逸脱した身勝手な内定辞退については企業から損害賠償請求される可能性は0ではありませんが、原則としては内定辞退をしたことでそのようなケースになる判例はほとんどありません。
労働基準法においては、使用者(労働の対価として賃金を支払う人)よりも労働者(利用者により労働することで賃金を得る人)の立場的には強いです。
内定取り消し(内定辞退)の問題を解決するためには、内定を出してからどう対応するか以上に、内定を出すまでにどう対応するかが重要です。一度内定通知を出したり、内定承諾をしてしまうと、それをひっくり返すのは簡単なことではないし、できることと言えばお互いで話し合いをし、なるべく双方に損害のないよう穏便に済ませるくらいしかないからです。
今回の問題における大きな課題の一つ、
それは「内定までにお互いを深く理解できなかったこと」が挙げられます。
ここで大切なことは「お互いに」というキーワード。つまり、採用は求職者を見極めるだけの一方通行では、決してうまくいかないということです。求職者側にも会社を見極めてもらわないと、入社はしてくれたとしても、早期の離職に繋がるなど、結果お互いが幸せな状態にならないからです。
ここからは、弊社でお互いを深く理解するために取り組んでいること採用活動をいくつかご紹介します。
会社説明会や面接では、いい人材に会社のことを魅力的に思って欲しいという想いが先行してしまい、「会社の弱みや課題を伝えずに、良いところだけを伝える」ということをやってしまいがちです。ただよく考えてみてください、それでいい人材を採用したところで、会社の課題がなくなるわけではありません。
むしろ、「え、全然思ってたのと違うやん」となってしまい、早期の退職に繋がったり、会社の悪いクチコミが世間に拡がるリスクを伴います。この課題を解決する一つが「会社の悪いところをPRする」です。トゥモローゲートでは会社説明会の中に、「会社の悪いところを説明します」というコンテンツがあります。
会社における事業や採用、働き方の経営課題を伝えるという内容です。加えて、弊社を退職した社員が本当は何が嫌で辞めるのか?をまとめて書いた「私、会社辞めます。」というブログをホームページに公開し、説明会に参加した求職者に積極的に公開しています。
このブログはXでちょっとだけ話題になりました。もしかしたら今後の応募者が減るかなと思ったんですが、応募者は逆に増えました。説明会に参加した求職者からは、
「正直に伝えてくれることで逆に好印象です」
「実際に不安に思っていたことが書かれていて納得できた」
好意的なご意見が9割以上でした。ここで学べたことは、どこの会社も言わない会社のマイナスを伝えることで安心してもらうことができる、ということでした。まだまだ課題だらけの弊社を知ってもらうことで、「未完成だけど一緒にオモシロイ会社づくりをして行きたい」という求職者の絞り込みにも繋がっています。
僕たちの選考過程には、一緒に働く時間を疑似的に体験してもらう「選考インターンシップ」を設けています。
営業職なら営業を、デザイナー職ならデザインを、トゥモローゲートに入社して実際に行う業務を、シミュレーションとして一日体験してもらう選考です。固い雰囲気の会議室で真剣な顔して30分や1時間面接をしていても、なかなかわからないことが多いです。そしてこちらのことを理解してもらうのにも限られた時間では当然限界があります。
選考インターンシップは長時間の選考にはなりますが、社員がお客様役となり課題提示をし、その課題を解決する仕事を入社後に一緒に働くメンバーと、実際にやる仕事の流れに沿って体験してもらいます。
こちらの選考は、社員の職種特性を見るという点でも効果的ですが、それ以上に「求職者に弊社の仕事をギャップなく知ってもらう」という点でも効果を発揮してくれます。会社側も求職者側も、お互いに時間も手間もかかりますが仕事や会社、働く仲間のことを理解するという点でとても有効です。
<選考インターンシップのポイント>
弊社では求職者の方の興味も意志も強くなってきている最終選考前にこの選考インターンシップを実施しています。インターンシップを実施しても、まだまだ理解できない場合は再選考を実施したり、役員との面談を実施するなど、お互いのことをより理解できるための選考フローを心がけています。
そうなんです。タイトルにある通り、今回のテーマでもある「飲み会」を弊社では最終選考として実施しています。会社の代表者(社長)の僕と1対1で食事をしお酒を飲みながら面接をしています。年間30名ほどの最終選考を飲み会をしながら実施し、10名が採用、20名が不採用という判断をしています。
毎年最終選考に参加してくれる30名の求職者は、5次選考(多いひとでは6次選考)まで進んだひとたちです。
それだけの選考を潜り抜けてきているので、みな一緒に働いてみたいと思わせてくれる魅力的な人材ばかり。ただ僕らもまだまだ小さな会社ですべての人材を採用することができません。最終選考としてご飯を食べながら、飲みながらお互いにどんな人生を送りたいかを確認するための時間として設けています。
「酒を飲みながら面接するとかけしからん」そんな意見も聞こえてきそうですが、このやり方をすることで、お互いを深く理解しあえる可能性が拡がります。会食の場だから出る本音や、話しにくい話、普通の面接では見えてこない多くの情報を相互に交換することができるからです。(お酒が飲めない人はノンアルコールでまったく問題ありません)
実は、最終面接でする話の内容は特に決めてません。
本当にその求職者に合わせて聞きたいこと、話したいことを聞くようにしています。その中でも参考までによくする話として挙げると、
このような話を、だいたい2時間~3時間くらいかけて、外に出てその日の求職者の食べたいものや、美味しいものを選んで飲み会選考をしている感じです。最終選考の様子を一部Youtubeでも(求職者の情報は配信できないので、僕が話をしている様子が中心ですが)配信しているのでご参考まで。
だいたいこんな感じで、僕が半分話し、求職者が半分話すというカタチで進行しています。
2023年12月からはオフィスを増床してキッチンを作りシェフが料理を提供していく体制ができるので、最終選考も求職者の好みに合わせた食事を企画し、楽しみながら面接を進められるようさらにオモシロイ最終選考に改善していきます。
今回のブログでは、企業の内定取り消しをテーマに企業がどう対応すべきかについて、僕なりの意見をまとめてみました。
企業の選考活動は、「求職者を選ぶ」という意識だけではなく、「求職者から選んでもらう」という意識も必要です。求める能力を持つ人材を選んで採用できたとしても、求職者側が目指す方向とズレていれば結局は早期退職につながり、時間と労力をかけて必死に採用した社員がすぐに辞めてしまうからです。
きっと僕たちのやり方以外にも、お互いのことを理解できる選考を考えて実施している会社は山ほどあると思います。
ここでみなさんにお願いです。
このブログをXにポストするので、みなさんの会社で取り組んでいる「お互いを理解するための選考」を教えてもらえませんか?このポストのコメントや引用リポストが、お互いのことを理解できる選考で溢れれば、企業にとっても求職者にとってもギャップが少なくなる、そんな素敵な世界にちょっとだけ近づけるきっかけになるかもしれません。
<みなさんの会社の採用の取り組みやブログへのご意見は下記Xのコメントよりお願いします>
ここまで「採用ギャップをなくそうぜ」ということを偉そうに書いてきましたが、うちの会社もまだまだ採用における課題感が山積みです。これだけで終わると「採用課題なんてない良い会社」で終わりそうだったので、弊社自体が直面する採用課題のリアルと今後の方針についてまとめておきます。
ここからは社員に向けての発信なので、興味のある方だけ読み進めてください。
動画でも伝えてるけど、ひさびさに大きな壁にぶち当たってるなって感じるここ半年ほど。社員数が50名を超えた辺りから、社員数の増加に伸び悩むというはじめての経験に直面しているトゥモローゲート。
2023年現在、トゥモローゲートが抱える採用課題は大きく2つ
①正社員になる前に社員が辞める課題
②目標の採用人数を達成できていない課題
この2つの採用課題をクリアしないと、自分たちの目指す「大阪で一番オモシロイ会社」を実現することは難しい。現在の状況を社員全員で理解し、自分たちの課題と向き合うきっかけになることを願ってまとめてみる。
まずは正社員になる前に辞める問題。トゥモローゲートで正社員になるには、正社員登用を前提として6か月間の試用期間を経ての正社員登用と、6か月間以上の契約社員を経験した上での正社員登用の2つのルートが存在する。(フリーランスなどの場合は、業務委託から仕事を依頼して正社員を目指すやり方もあるがこれはかなり例外的)
特に今年になって増えているのが、試用期間中、契約社員としての期間中に「思ってたのと違った」と正社員になる前に会社を辞めてしまうパターンだ。今年だけでこのケースが2件あった。
「本人が思ってた以上に営業として成果を残すのが大変だった」
「外から見てると華やかなイメージだが泥臭い部分も多かった」
「リモート勤務は入社年次や理由を問わず希望できると思っていた」
これらの理由から、やっぱりやっていけないとなり退職に至る。これが一つ目の採用課題だ。
トゥモローゲートの今期の採用目標人数は15名。ちょうど今期折り返しである9月末時点での採用人数は5名と達成率は30%と厳しい状況になっている。SNSでの認知もありここ5年で大きく採用のやり方は変わってきた。
5年前まではリクナビやマイナビなどの求人広告、人材紹介会社を介しての採用活動が100%だったが、いまではSNSでの採用が60%、リファラル採用が30%、広告人材紹介会社からの採用は10%まで減っている。応募の数は増えている。ただ求めるマインドやスキルを持った人材からの応募が足りていない。
これは特に意匠制作部(クリエイティブを担当する部署)において顕著に表れている。XやYoutubeでの露出は戦略企画部(営業や企画を担当する部門)のメンバーの割合が多い。そのせいか、トゥモローゲート=営業の会社というイメージが根強い。実態は既存社員の6割は意匠制作部で、戦略企画部は3割ほどだ。
会社のレベルアップと合わせて毎年採用基準が高くなるなかで、今までのやり方だけでは目標の採用人数を充足させるのは難しい。意匠制作部を中心に、プロジェクトやデザイン実績の認知をどのように拡大していくか(SNS以外のやり方でもまったく問題ない)が大きな課題となっている。
これらの問題に対する具体的な手段については全体ミーティングで話をしようと思うし、メンバーからの解決案も沢山ぶつけて欲しい。ここでは対外的にも会社の方針を知ってもらいたいのでその大枠だけを伝えておく。
・いいことも悪いことも伝えるギャップのない情報発信
・仕組みとしてコミュニケーションを活性化させる
・実績強化によるデザインに強い会社という認知
抱える課題解決には、さらに「お互いの理解を深める」会社づくりを実行していかなければいけない。
伝えたつもりとか、誤解を生むような表現を避けなければいけないし、泥臭いことや大変なことももっともっと発信していかなければいけないし、強いところも弱いところも曝けだしながら、自分たちらしくオモシロイに挑戦し続ける必要がある。
トゥモローゲートが2025年までに目指すのは「大阪で一番オモシロイ」と言われる会社づくりだ。
自分たちの力でビジョンを実現しよう。月曜の全体ミーティングでまた共有します。