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企業ブランディングの成功事例5選|熱狂的なファンを生む有名企業のブランド戦略

企業ブランディングの成功事例①バーミキュラ(愛知ドビー株式会社)

バーミキュラのブランドサイト

2010年に発売されて大ヒットしたホーロー鍋のバーミキュラ。1936年創業という老舗企業『愛知ドビー株式会社』が、“町工場から世界最高の製品を作りたい”という思いで生み出した製品です。

一般的な鍋が数千円で買える中、バーミキュラはおよそ3万円。それでも累計30万個以上が売れる大ヒット商品となりました。なぜ相場よりも圧倒的に高いのに圧倒的に売れたのか。その裏に同社独自のブランド戦略があります。

圧倒的に高いのに圧倒的に売れたブランド戦略

バーミキュラがヒットした理由として、「ステンレス製の鍋」と「ホーロー加工した鋳物の鍋」の良いところを掛け算したことがあげられます。

「ステンレス製の鍋」は「ホーロー加工した鋳物の鍋」よりも気泡性が高く、無水調理ができるのが強み。水を使用した際の“食材本来の味が薄まる”というリスクを避けることができます。一方、旨みを引き出す上では食材への熱伝導が重要で、その点においては「ホーロー加工された鋳物の鍋」に軍配が上がります。

バーミキュラはこの2つのいいとこどりをしました。「ホーロー加工された鋳物の鍋」でありながら、無水調理までできる機密性の高い鍋を開発。鋳物の鍋をホーロー加工できる技術自体が珍しく、無水調理できるレベルまで気密性を高めるという挑戦はさらに難攻不落で、開発までに失敗作は1万個以上、月日は3年以上かかったそうです。

技術者の壮絶な努力から生み出されたバーミキュラ。ですが、顧客に伝えるブランドメッセージを見てみると、その機能よりも優先して触れているポイントがありました。

暮らしをかえる鍋

「息子がブロッコリーを食べた」
「調味料を使わなくなった」
「外食しなくなりました」
「誰かといっしょに食べたくなる」

そう。バーミキュラは、その機能性の高さで、あなたの暮らしを変えていく鍋なのです。

バーミキュラを利用することで生活がどのように変わるのか。機能面よりも顧客のメリットを先に打ち出していまし。そしてすごいのはここから。このメッセージを掲げるだけでなくサービスに落とし込んでいるんです。

ブランドメッセージをサービスで体現

バーミキュラには専用のコールセンターがあります。疑問に思ったことをすぐに聞けるようにするためです。

さらには社内に専属のシェフもいるそう。お客様からこんな料理をバーミキュラで作りたいんですが…という声を聞けば専属のシェフがレシピを考えて、実際に調理をした上で回答してくれる体制まで整えているんです。

まさにブランドコンセプトである「暮らしを変える鍋」を体現しています。言葉だけでなく、行動そしてサービス体制にまで落とし込んでいます。この一貫性がバーミキュラが不動のブランドを築けている理由であり、圧倒的に高いのに売れ続けている理由であることは間違いないでしょう。

掲げたブランドも体現しなければ意味がない

もしバーミキュラが上記のようなサービスや取り組みを全くしておらず、ただ機能が優れた高価な鍋という打ち出しをしていたら、現在のようなブランドイメージは築けていなかったと思います。

大切なのは掲げたブランドを体現すること。体現しなければどれだけ崇高な言葉でも魅せかけで終わってしまいます。実態とイメージの乖離をひきおこし、むしろマイナスイメージが広がってしまう可能性もあります。

企業ブランディングの成功事例②ハーレーダビットソン

ハーレーダビッドソンの企業ページ

コミュニティやイベントを活用したブランド戦略

ハーレーダビッドソンと聞けば、バイク乗りでなくても「アメリカ」「冒険」「自由」といったキーワードが思い浮かぶと思います。ブランドイメージが浸透している証拠ですね。

ハーレーダビッドソンのブランド戦略として特徴的なのは、「顧客コミュニティ形成」です。所有者だけが入会できるクラブを設立し、定期的に集会を開催することでオーナー同士のネットワークを形成しています。

その名も「Harley Owners Group (HOG)」。アメリカ国内だけでも100万人前後の会員がおり、バリエーション豊かなメンバー特典や会員同士の交流の場を提供することでハーレーを愛する人たちの熱量を醸成しています。

また、「ブルースカイヘブン」という大型イベントも定期的に実施しています。全国からハーレーダビッドソンのファンが一同に介し、ファン自身も企画に携わる参加型のイベントです。2日間で1万人前後のファンが集まります。

このイベントをきっかけにハーレーダビッドソンのバイクを購入する人も多いそう。すでにハーレーを乗っている人はハーレー愛をさらに深めます。新規既存問わず楽しめるイベントで強固なブランドを維持しているのです。

ブランディングの目的の1つに「濃いファンづくり」があります。ハーレーダビッドソンはコミュニティやイベントをうまく活用し、ファンの熱量を高め続けることで、愛され続けるブランドを構築しています。

30年も前から「コト消費」に着目

モノ消費からコト消費。

今では当たり前のように聞く考え方ですが、ハーレーダビッドソンのブランド戦略をたどると30年以上も前からコト消費を追求していたことが見えてきます。

先程のコミュニティやイベントもそうですが、なによりハーレーダビッドソンのバイクの機能自体がコト消費。車両価格は同業他社よりも大幅に高く、燃費は良くないし、車体は重たい。交通手段を追求した実用性とは無縁です。

なのになぜ長きにわたって愛されているのかといえば、実用性よりも「趣味」や「楽しみ」を重視したブランド戦略を実行し続けており、ファンに大きな共感を得ているからです。それを象徴する言葉があります。

▼ハーレーダビッドソン10の楽しみ
「知る」楽しみ(商品、歴史)
「乗る」楽しみ
「創る」楽しみ(カスタマイズ)
「選ぶ」楽しみ
「競う」楽しみ(レースでの競争)
「出会う」楽しみ(コミュニティで仲間と人と出会う)
「装う」楽しみ(ハーレーライフやファッション)
「愛でる」楽しみ
「海外交流の」楽しみ(世界的規模のオーナーズグループ)
「満足」(トータルの満足度)

これは、ハーレーダビッドソンが“お客様に提供する価値”として昔から定義しているもの。“「創る」楽しみ”や“「出会う」楽しみ”という言葉に、ハーレーならではの商品開発やブランドイメージが感じられます。

大型バイク市場はこれまで衰退傾向をたどってきました。

しかしハーレーダは大きな衰退もなく根強く支持され続けています。時代の変化に左右されやすい機能面ではなく、その理由は、人間の根源にある情緒的な欲求に応えるブランド戦略を打ち続けているからと言えるでしょう。

ハーレーダビッドソンのブランド戦略について

企業ブランディングの成功事例③ヤンマー

農業従事者のために天気予報のCMを流し続けた

ヤンマーと聞くと、「ヤン坊・マー坊」のテレビCMを思い出す人も多いと思います。このCMはなんと60年以上前の1959年から2014年まで放映されていた天気予報のCMです。

100年以上前の1912年に創業したヤンマーは、世界で初めてディーゼルエンジンの小型実用化に成功しました。それ以降、農業を快適にするという信念のもと、田植機やトラクターとった農業機械を開発・販売してきました。

「ヤン坊・マー坊」が天気予報のCMだったのもこの製品特性からです。「明日の天気」に商売や人生が左右される農業従事者に天気予報を届けることは、ヤンマーというブランドが果たすべき使命だったというわけですね。

創業100年目でのリブランディングプロジェクト

2014年のCM放映終了と同時にヤンマーが立ち上げたのが、「ヤンマープレミアムブランドプロジェクト」。農業だけでなく、建設機械やエネルギー産業にも挑戦していたことから、新たなブランドイメージを構築しようとなりました。

クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏と共に考え掲げたブランドメッセージは「A SUSTAINABLE FUTURE ─テクノロジーで、新しい豊かさへ。─」。テクノロジーで持続可能な社会の実現を目指すという宣言です。

その宣言を落とし込んだブランドロゴのテーマは「FLYING-Y」。ヤンマーという社名の由来でもある豊作の象徴「オニヤンマ」の羽をモチーフに、次の100年へ飛躍するんだというブランドの意志を反映しました。

ヤンマーのブランドについて

庶民的なイメージを払拭するプロダクトデザイン

創業100年を機に再定義した企業のブランディングをヤンマーは商品にしっかり落とし込むことで一貫したブランドイメージを構築しました。

どちらかといえば庶民的なイメージが強かったという同社の課題を解消するため、商品のプロダクトデザインにはマセラッティやフェラーリなどのデザインを手がけた奥山清行氏を起用。農作業のためのウエアデザインは、イッセイミヤケのデザインに携わった滝沢直己氏を起用しました。

構築したブランドやデザインを発信する手段として、2016年ごろからテレビCMや新聞広告を展開。根本的なブランドを構築し発信することで、ブランドイメージを少しずつ変えていきました。その結果、新規顧客・既存顧客を問わず社外からポジティブな反応が寄せられ、社内や採用面においてもいい成果が波及したそうです。

ブランディングの成功に欠かせない「一貫性」

企業のブランドイメージは事業や言動、発信などすべての企業活動が複合的に絡み合って形成されます。そこで重要になるのがヤンマーから見る「一貫性」。一部分ではなく全てに一貫したブランドを落とし込み、体現し続けることで、少しずつ、少しずつ、ブランドイメージは構築されていくということを再認識できる事例です。

企業ブランディングの成功事例④マツダ

「マツダ地獄」で得た教訓を活かして

マツダのホームページ

「マツダ地獄」とは、バブル崩壊後にささやかれたマツダ車を揶揄する言葉です。

当時のマツダは不振を脱却するために大胆な値引きを行っていました。しかしネガティブな結果につながってしまいます。ブランド価値が低下し、下取り価格が大きく下がってしまったんです。

下取り価格が下がってしまうと、必然的に買い替えの際の選択肢は狭まります。結果、一度マツダ車を買った人は、買い替えの時に再びマツダ車を買うしかなくなるという負の連鎖。この状態が「マツダ地獄」と呼ばれました。

マツダは言うまでもなく国内大手の自動車メーカーです。成長する自動車産業と伴走するように拡大路線を歩んできました。しかし、上記の教訓を活かしてリブランディングや戦略切り替えに挑戦することを決断します。

ナンバーワンブランドではなくオンリーワンブランドへ

とった戦略は、拡大路線でシェア競争を続ける競合他社とは違うフィールドで勝負することでした。万人に愛されなくてもいい。10人に1人。もしくは100人に1人が「絶対にマツダでなければ嫌だ!」と思ってもらえればいい。

ナンバーワンではなく、オンリーワンを目指すという方向性です。そこで定められたキャッチコピーがこちら。

Be a driver.

一度は聞いたことや見たことがあるのではないでしょうか。このキャッチコピーには、「既存のルールや常識に縛られない、人生のドライバーを応援する」という意味が込められているそうです。

「Be a driver」は何がすごいのか

直訳すると「ドライバーになろう」といった意味になりますが、キャッチコピーに続く、マツダが「マニュフェスト」と呼ぶ文章を読み込むと、その本質的な意味が見えてきます。

マツダは、ドライバーでありたい。

何よりも、運転が大好きな人でありたい。誰よりも、クルマが大好きな人でありたい。
だから、自分たちが走らせて、退屈だと思うクルマは、絶対につくらないと決めている。
そこに、走る歓びがなければ、クルマをつくる意味などない。そう思っているのです。

マツダは、ドライバーでありたい。
これまでの常識にとらわれることなく、 これからのクルマを、
もっとワクワクするものへと導く人でありたい。

誰もがあきらめてきた、走る歓びと、環境性能、安全性能という
一見矛盾するような技術の両立に挑みつづけるのは、そのため。

クルマをこれからもっともっと面白くする、
もっともっと高い次元のものへとドライブをかける張本人でありたいと思うのです。

Be a driver.

「Be a driver.」という言葉には、車のドライバーという意味に加えて世の中にドライブ(前進、駆動)をかけていくという意味も込められています。私が読んでいて特にグッときたのは2段落目。

「何よりも、運転が大好きな人でありたい。」
「クルマが大好きな人でありたい。」
「自分たちが走らせて、退屈だと思うクルマは、絶対につくらないと決めている。」

自分たちがつくるクルマの一番のファンは、自分たちである。そう宣言するかのような言葉には、クルマをこよなく愛する人たち、とりわけマツダファンの心を震わせるパワーがあります。

さらに、Be a driver. の第2弾と題したキャンペーンではこのようなメッセージを発信しています。

自分の人生の、主人公になろう。

自分の行く道を、自分の意志で選ぶ人になろう。
自由に、積極的に、人生を美しいものにしよう。
既存のルールや常識に縛られない人になろう。

自分の行く道は、自分で決めた方が、楽しいに決まっている。
人生のドライバーになろう。

Be a driver.

マツダにとっての主役は「クルマ」ではない。クルマを通して人生を美しいものに変えようとする姿勢や、その人そのものが主役である。機能性や利便性以上に、企業のスタンスや思想をむき出しにしたメッセージです。

自社や自社商品の1番のファンであることが大事

どれだけ役に立つ商品やサービスであっても、売る人たちが商品のことを「好き」でなければ魅力は伝わりきりません。拡大路線のシェア競争を勝ち抜くのではなく、オンリーワンブランドを築くためにマツダは「好き」を追求し、発信しました。だからこそ今での熱狂的なファンが多くいるブランドとして君臨しているのだと思います。

企業ブランディングの成功事例⑤トゥモローゲート

魅せかけではない中身からつくりかえるブランディング

最後に自社の紹介もさせていただきます。僕たちトゥモローゲートは企業ブランディングを提供する会社です。これまで業種、規模、エリアなど問わず、250社以上のブランディングを手掛けてきました。「魅せかけではない中身からつくりかえるブランディング」を1つのテーマに実績も重ねてきました。

2017年ごろまでは採用ブランディングをメインとしており、「とにかく目立つもの、カッコいいものをつくるのがブランディング」と考えていました。実際、社員3名の会社にも関わらず7000名のエントリーを集めるなど成果も出ていました。その実績から「オモシロイ採用企画を提案して欲しい」と依頼をいただくようにもなっていました。

経営理念を起点に事業・採用・インナーがさらに好転

しかし、社員数が10名を超えた2018年に壁にぶつかります。これまでと同じことを言っているはずなのに、社員に真意が伝わらない。「オモシロイ企画」の定義や解釈が会社と社員で微妙にズレてきている。社内におけるコミュニケーション不足からそのような違和感が少しずつ生まれ、事業や採用にも影響が出始めていました。

10名にも満たなかった頃は「言わずもがな」で通じていた価値観や行動基準が、増員に伴い伝わらなくなってきた。そこで着手したのが経営理念の明文化・再定義。『ビジョンマップ』を作成したのはこのタイミングでした。

何をやるのか?の手段(WHAT)よりも先に、目的(WHY)とゴール(HOW)に着目。ビジョン、ミッション、バリュー、中期ビジョンや達成要件に至るまで徹底的に言語化し、経営判断はもちろん企画や採用基準、評価基準に至るまでこの『ビジョンマップ』に沿って実行することで、一体感の醸成をはかっていきました。

ビジョンマップの作り方や詳しいメリットについてはコチラ

これらの取り組みを通して事業面だけでなく、インナー面や採用面でも多くの成果を得ることができました。また、そのノウハウをお客様に提供することで、お客様にとっての成果も創出することができています。(ビジョンマップを起点とした企業ブランディングについてや成果についてはコチラのブログにさらに詳しく書いてあります

企業ブランディングの成功事例をまとめてみて

国内外の人気企業や、自社における企業ブランディングの事例をまとめてみました。共通するのは「自社の現在地や目指す未来、そして本質的な魅力を掘り下げ、一方で“ブランドターゲット”の心理を徹底的に分析し、成果が最大化する施策を見極めている」ということです。

目先の手段ではなく、なぜ?どのように?何をやるべきなのか?を追求して、取り組みを継続する。これが、企業ブランディングにおいて最も大切な考えの1つであることを、学ぶことができました。

企業ブランディングをお考えの方へ

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