
いきなりですが、問題です。
コピーライターとライター。この2つの仕事の違いについて説明してください。
「え、一緒ちゃうの?」
まぁ、そう思いますよね。
「ライターをちょっとカッコよく言うてるだけ。」
ぼくも最初そう思ってました。
「短い文章を書く人がコピーライターで、長い文章を書く人がライター。」
感覚としてはわかるんですが、それだけでは説明が足りないんです。
「どっちでもええわ。はよラーメン食いにいこ。」
おい、ちょっとおれの話を聞いてくれ。
…ということで、今回はコピーライターとライター、この2つの仕事の違いについて解説します。どちらも言葉を納品している仕事ですが、どんな価値を提供しているのかを探っていくと、明らかに違う仕事であることがわかるはずです。
ライターは何を納品しているのか。
まずはみなさんがイメージしやすいライターの仕事について整理してみましょう。新聞や雑誌、WEBに掲載されている記事を執筆することがライターの仕事です。インタビュー記事なんかもそうですね。
大きく求められるスキルでいえば、取材力と執筆力でしょう。正確な情報を集めるためには取材時のヒアリングや調査が必要ですし、それを読者に伝わる形で書き上げなければいけません。長文のコンテンツでも読みやすくするために、情報を編集する力も求められます。
トゥモローゲートが提供しているサービスでいえば、
・企業サイトの事業紹介や製品・サービス紹介の文章
・採用サイトの社員紹介や対談、採用情報などの文章
これらがライターの仕事に分類されます。このブログもそうですね。
では、その仕事の価値について理解を深めていきましょう。
ライターは「誰に」「何を」納品しているのでしょうか?
その解像度を上げるために少しだけ横道に逸れますが、ライターと同じく文章を書くことを生業にしているコラムニストやエッセイスト、小説家などの仕事について触れさせてください。
まずコラムニスト。主に新聞や雑誌、WEBメディアで社会的なテーマについて自分の意見を交えながら書くことが特徴です。エッセイストは個人の体験や感情をもとに文章を書く職業で、コラムニストより私的な視点や感性を伝えています。小説家はフィクションを創作する仕事で、物語の構成やキャラクター設定を考えながら自由に表現しています。
これらの文章を書く仕事と比較すると、ライターはクライアントの依頼に応じて記事を執筆する職業で、読者に分かりやすくまとめた情報を文章にして納品している、ということがよくわかると思います。この点は、これからご説明するコピーライターとの違いを語るうえで大きなポイントになるので覚えておいてください。
ちなみに、ライターへの依頼費用は仕事内容・経験・専門性・契約形態によって大きく異なります。一般的に、初心者ライターの場合は1文字あたり1円、上級者になると1文字あたり50円といった文字単価で設定されています。 また、記事単位やプロジェクト単位で、数万円〜数十万円といった形で設定されるケースもあります。
コピーライターは何を納品しているのか。
では、本題であるコピーライターの仕事内容や役割について紐解いていきましょう。
そもそも「“コピー”ってなんやねん」ですよね。一般には広告で使われる文字全般のことをいいます。
例えば商品のキャッチコピーやネーミング、企業のプロモーション動画のナレーション、そもそも広告で何を言うべきなのかを示すコンセプトだったり、それらを総称して“コピー”と呼んでいます。ごちゃごちゃ言うよりも実際にコピーライターが納品している言葉を見てもらうのが早いと思うので、ご紹介しましょう。
水と生きる。(SUNTORY)
今日を愛する。(LION)
空気で答えを出す会社(ダイキン)
昨日まで世界になかったものを。(旭化成)
MAKE BEYOND つくるを拓く(大林組)
…などなど、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
実はこういった一行は数百万円で買われているのです。では一体、どんな価値を生み出しているのか。いくつかの事例をご紹介します。
事例1 その一行で“IT市場を変えた”。Apple
Appleの有名なコピーにThink Differentというものがあります。
1997年のTVCMで使用され、アインシュタイン、ピカソ、ガンジーといった「世界を変えた人々」が登場しました。このCMを通じて、Appleは単なるコンピューター会社ではなく、創造的な思考を大切にするブランドであることを世界に印象づけたのです。そんなAppleにはもうひとつ重要なコピーがあります。
それが、Tools for the Creative Mindです。
(直訳すると、クリエイティブな思考のための道具)
これは社内で掲げられていたコピーだそうで、Appleの製品哲学を決定づけた言葉です。
当時コンピューターは、オフィスや研究室で使われる「高速で正確に計算する機械」として販売されていました。しかし、Appleは「Tools for the Creative Mind」という考え方を持つことで、コンピューターを「人間の創造性を刺激するツール」へと再定義したのです。この発想により、Appleと社会の関係が大きく変わっていきました。
音楽制作や映画編集などのクリエイティブな分野で欠かせない存在となり、教育現場や家庭にも広がりました。そして、直感的に使えるデザインやマウスの開発へとつながったのです。さらに、Appleストアのように製品を売るだけでなくブランドを体験できる場が生まれるきっかけにもなりました。
Tools for the Creative Mind
Apple製品のあり方を定義し、流通、企業文化、さらには世界のIT市場にまで影響を与えたコピーです。
事例2 その一行で“ターゲットを広げた”。Nike
Just Do It.で有名なNikeにもAppleと同様、これと並ぶ重要なコピーが存在します。
それが、Athlete*(アスリート アスター)です。
Nikeの創業者フィル・ナイトは、「すべての動く人はアスリートである」という考えを持っていました。つまり、アスリートとは競技をする人だけではなく、運動しようとする意志がある人すべてを指す、という思想です。この考えを一行にまとめたのが「Athlete」に注釈を意味する「*(アスタリスク)」を添えたAthlete*です。
この言葉によって、Nikeがターゲットとすべき対象は「スポーツ選手」だけではなくなりました。
障がい者や年配者、子どもなどを起用したCM展開が行われ、スポーツを超えたライフスタイルブランドへ拡大。ヘルスケア分野へと事業も広がり、「すべての人の運動を応援するブランド」へと進化したのです。
事例3 その一行で“従業員の在り方を定めた”。 スターバックス
最後に、スターバックスの事例です。
スターバックスにはThird Place(サードプレイス)というコンセプトがあります。聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
では、Third Placeとは何なのか。これは、人が過ごす場所を3つに分類する考え方です。
・第一の場所=仕事や学校など、オンの場所
・第二の場所=家庭など、オフの場所
・第三の場所=職場でも家でもない、もうひとつの居場所
つまり、スターバックスは「第三の居場所」として、お客様がくつろげる空間を提供することを使命としています。そのため、このコンセプトは単なるマーケティング戦略ではなく、従業員の接客スタイルにも大きな影響を与えています。
例えば、スターバックスの従業員は食事が終わったお客様のテーブルにすぐ駆け寄って食器を片付けることはしません。回転率を重視するレストランなら、食器が空いたらすぐに片付けますよね。しかし、スターバックスでは「くつろげる場所」としての空間を大切にしているため、あえて片付けを急がないのです。
さらに、お客様が来店した際、「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と挨拶をしたり、カップにメッセージを添えるなど、自然で温かみのあるコミュニケーションを大切にしています。
このThird Placeというコンセプトは、ブランドの方向性を示すだけでなく、従業員の接客や店舗の雰囲気にまで深く根付いているのです。
生み出している価値をわかりやすくするために、世界レベルで実績を残している企業の話を例に出しましたが、イメージしていただけたでしょうか。要するにコピーライターは企業と社会との関係性を変えたり、あたらしい行動指針を生み出すような、ビジネスやブランドを成長させる言葉を売っているのです。
コピーライターって未経験でもなれるの?
さて、ここまで聞くとラーメンとパスタを比較するレベルを超えて、コピーライターとライターが別の仕事であることがわかると思います。それぞれ魅力はありますが、一行で大きな変化を起こせるコピーライターって、なんかカッコ良くないですか?
トゥモローゲートではそんなコピーライターを未経験からでも募集しています。(もちろん、経験者の方もめちゃくちゃお待ちしています。)
実はぼく自身も営業職からトゥモローゲートにコピーライターとして転職してきた一人です。価値ある一行を世の中に届けるために、 毎日、言葉と向き合いながら実績を積み重ねています。
まだまだ道半ばですが、最近強く感じていることがあります。それは、コピーライターほどクリエイティブの世界への扉が開かれている仕事はないということ。
どんな業界や職種であっても、言葉でコミュニケーションを交わした経験はあるのではないでしょうか。
商談でお客様の心を動かした言葉。
SNSの投稿で予想以上に反響があった言葉。
部活でチームを奮い立たせた言葉でもいい。
忘れることのできない誰かの言葉もあると思います。
もし面接でお会いすることがあれば、そんな言葉の経験を聞かせてください。
まだこの世にない一行を、一緒に探しに行きましょう。
▶︎トゥモローゲートの採用情報はこちら

小澤 良祐
トゥモローゲート株式会社意匠制作部コピーライター。健康食品などを扱う通信販売の会社で営業企画として約10年つとめたのち、2023年に入社。35歳にして人生初転職を経験する。企業のWEBサイト制作を中心とした取材や執筆、企業のコンセプトコピーの考案などを担当している。
TEL 06-7167-3950