
今回ご紹介するのは、創業から約79年、法人化から約75年の歴史を持つプラスチックメーカー“吉川化成株式会社”の採用ブランディング事例です。
採用ブランディングにあたり、トゥモローゲートはビジョンマップ、企業サイト、採用サイト、採用動画、そして会社案内などのクリエイティブツールを制作しました。
本記事では、以上のツールを作るにあたっての
・採用課題を解決するブランディング戦略
・成果に繋がったクリエイティブ制作
などの全貌を公開。
採用ブランディングの戦略設計と、そこから得られた効果をご紹介します。
【課題と目的の整理】求めるのは”文化や価値観が合う幹部候補”
吉川化成株式会社(以下、吉川化成)は、1950年に設立された大阪本社のプラスチックメーカーです。
射出成形という技術を使い、家電や自動車の部品、医療機器、住宅用の建材など、暮らしに身近な製品を幅広く作っています。

設計から金型づくり、成形、塗装や組立までを自社で一貫して行えるのが強みで、国内では大阪や奈良、静岡、東北、そして大分など計10拠点。国外では、タイやマレーシアなどに計5拠点を展開しています。
また、品質や環境に関する国際規格の認証も多数取得しており、「大阪ものづくり優良企業賞」「ものづくり日本大賞」などを受賞。高い技術力と安心できる品質で、多様な産業を支えています。

そんな吉川化成が抱えていた課題が、将来の幹部候補を前提とした人材の獲得ができていないということ。
実は吉川化成の採用は社員からの紹介(リファラル採用)が多く、そこから現場担当者の採用を行っていました。
その中で社員が毎年3~5名ほど採用できるうえ、離職率はたった3%。「入ったら辞めたくない会社」「友人に入社を勧めたい会社」づくりがすでにできていたのです。
しかしその反面、300名以上の組織でありながら採用を担当する社員は1名のみ。次期マネージャー候補(営業マネージャー・工場長)の育成が遅れているという課題も抱えていました。
さらには新規事業や新拠点・海外展開を積極的に進めているうえ、現在の幹部層メンバーの定年退職も近づいている。そんな背景があり、スピード感を持って幹部へとのしあがっていくような、吉川化成への共感とポテンシャルが高い人材を採用する必要があったのです。

そのため、今回の採用ブランディングの重要な目的は「新しく言語化した理念に共感し、吉川化成が求める人材を採用すること」。
単に人材を確保するだけではなく、企業の文化や価値観にフィットする人材を戦略的に見つけ出し、長期的な成長に貢献してもらうことを目指したのです。

【目標設定】“ただ良い人を採用するだけ”で終わらせない
採用ブランディングは、単なるイメージアップで終わらせては意味がありません。
私たちトゥモローゲートは明確な数値目標を設定し、その達成に向けてコミットすることで、企業様の持続的な成長を支援します。
吉川化成の採用ブランディングで設定した具体的な目標は「毎年10名の社員を採用すること」です。
新規事業、新拠点や海外展開を積極的に進めており、かつ現在の幹部層メンバーの定年退職が近づいていることもあったため、部門や中途・新卒・高卒といったステータスは問わず、特に「①技術、②製造、③営業」の優先順位で人財を確保することを目指しました。

この定量的な目標設定は、採用活動の成果を客観的に測定し、必要に応じて戦略を修正していくための指針となります。ただ良い人を採用するだけでなく、企業様の今後の事業戦略において特に重要となるポジションに、質の高い人材を安定的に届けられるようにする。
これが、私たちが採用ブランディングで目指す具体的なゴールです。明確な目標設定が、採用活動全体の推進力となり、企業様の未来を拓く礎となります。
【課題の解決策】吉川化成が”就職先の選択肢”に入るには?
吉川化成が採用ブランディングを通して解決すべき問題と課題は、多くの企業が抱える共通の課題でもありました。私たちトゥモローゲートはそれらの根源に対し、戦略的なアプローチで解決策を2つ提案しました。

■PROBLEM 1:幹部候補となる社員の不足・理念共感が強い求職者のフィルタリング
前述の通り、これまでの採用は社員からの紹介がメインで、将来の幹部候補となり得る人材の獲得が難しい状況でした。
これは「幹部候補の獲得」という明確な採用目的がなかったこと。そして、企業の理念に深く共感し、長期的な視点で会社を牽引していく意欲のある人材を見極める仕組みが不足していたことに起因します。
そのため、私たちは吉川化成の理念を明確に言語化し、それを求職者に強く訴えかけることで、理念共感型のフィルターをかけることを提案しました。
採用プロセス全体で企業理念への理解度や共感度を測る仕組みを構築し、将来の幹部候補となり得る素養を持った人財を効率的に見つけ出し、採用に繋げることを目指したのです。
■PROBLEM 2:採用活動の認知不足と強みの伝達不足
吉川化成には、社員の愛社精神を育む社内制度や世界に誇る技術力といった魅力的な強みが豊富に存在します。
しかし、これらの魅力が外部に十分に伝わっておらず、企業の認知度が低いという課題がありました。その結果、「就職先の選択肢」として吉川化成が挙がりにくい状況だったのです。
この課題に対しては、吉川化成の「真の魅力」を可視化し、戦略的な情報発信を行うことで解決を図りました。
単なる企業紹介ではなく、社員の働きがい、そしてモノづくりへの情熱など、他社にはない魅力をストーリーとして伝えることで、企業の認知度向上とブランドイメージの確立を目指しました。
目標は大手のナショナルブランド企業に加えて、吉川化成が「良い就職先」として自然と求職者の選択肢に挙がるような状態を創り出すことです。
【ターゲット分析】採用ターゲットとなる3つのポイント
採用ブランディングを成功させる上で最も重要な要素のひとつが、「どのような人材を求めているのか」を明確にすることです。
私たちは、吉川化成の企業文化や将来のビジョンを踏まえ、3つの明確な人物像(ペルソナ)を設定しました。
これらはスキルや経験だけでなく、吉川化成の企業文化や価値観に深くフィットする人材を見極めるための重要な指標となります。

■POINT 1:オタク気質だがコミュニケーション力のある人
①人付き合いが上手い人: 周囲と円滑な人間関係を築き、チームの一員として貢献できる協調性を持つ人。
②話を受け入れ、必要であればしっかりと意見を言うことができる人: 他者の意見を尊重しつつも、自身の考えを明確に伝え、建設的な議論ができるバランス感覚を持つ人。
「オタク気質」という性質は、吉川化成独自の技術や部品を扱い、研究しつづける上で欠かせない要素でした。なぜなら、プラスチック製造の現場では探究心こそが技術者の原動力であり、顧客への提供価値だからです。
吉川化成が届ける製品の品質の高さを支えているのは、材料特性や成形条件に対する細やかな観察と改善の積み重ねです。いわゆる「オタク気質」とも言える深い探求心が試作から量産までのすべての工程で活かされ、顧客の多様なニーズに応える力となっています。日々の小さな工夫と挑戦の積み重ねが、70年以上の歴史で培った信頼につながっているのです。
そして、それをチームや顧客との連携に活かせるコミュニケーション能力を兼ね備えていることを私たちトゥモローゲートは重視しました。
■POINT 2:チャンスに対して好奇心をもって積極的に手を挙げることができる人
吉川化成では、現状維持に満足せず、新しい可能性を追求する人材が欠かせません。プラスチック製品の設計・製造では、自動車部品や医療機器など、精密さと高品質が求められる案件が日常です。その中で技術者は、材料特性や成形条件を細かく検証し、改善策を提案する主体性が求められます。
また、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO14001(環境マネジメントシステム)に基づく品質・環境管理を実践する中でも、向上心や学ぶ意欲が成長の原動力になります。吉川化成では、こうした一人ひとりの探究心と挑戦が信頼と技術力の積み重ねにつながっているのです。
そのため、つねに新しい可能性を追求し、困難な課題にも積極的に挑むことができる主体性と成長意欲の高い人材を設定しました。
■POINT 3:リーダーシップのある人
①清潔感があり、信頼ができる。ついていきたいと思えるような人: 外見だけでなく、内面からも信頼が滲み出るような誠実さを持つ人。
②結果が出るまで最後の最後までやり抜ける人: 困難に直面しても諦めず、目標達成に向けて粘り強く努力を継続できる強い意志を持つ人。
③立場や役職で仕事を区切らず、相手の為を思った行動がとれる人: 自身の役割に限定されず、チームや組織全体の成功のために、柔軟かつ献身的に行動できる人。
④チームワーク・チームプレーを理解している人(≒現場への敬意がある人): 個人の成果だけでなく、チーム全体の協調性を重視し、特に現場のメンバーへの敬意を忘れずに行動できる人。
吉川化成のプラスチック製造現場では、自動車部品や医療機器など精密な製品を扱う日々の業務で、ちょっとした判断や改善が品質に直結します。たんに指示を待つだけでは、納期や精度の課題に迅速に対応できません。そのため、自ら問題を見つけ率先して改善策を実行し、周囲と情報を共有しながら工程を最適化できる人材が必要です。こうした主体性と協働力は、70年以上にわたり医療・家電・産業分野で信頼される製品を生み出してきた吉川化成の技術力を支える原動力。日々の小さな工夫とチームでの連携が、高品質な製品を安定して届ける力につながっています。
この人物像として、ただ指示を待つだけでなく自ら率先して行動し、周囲を巻き込みながら目標達成に導ける資質を持つ人材を設定しました。
トゥモローゲートはこれら3つのポイントを満たす人が、吉川化成の理念に共感した採用のターゲットとなり得ると定めたのです。

そして、そのターゲットが吉川化成に惹かれ、強く共感できるであろう強みがこちらです。

吉川化成が採用したい人に魅力的に感じるであろう強みは、「想い・スタンス」と「実績・制度」のふたつの側面から多角的に提示されると考えられました。
【コンセプト設計】吉川化成は“変化と挑戦をつづける企業”だ
課題の洗い出しから目標設定、そしてターゲット設定などを経て、さらに整理を重ねます。

もともと吉川化成にあった理念(根本思想)は「総親和」。
これには
「全社員がお互いに調和した時に会社は大きな力を発する。多くの優秀な熱意ある社員を雇用し、社員一人ひとりの成長を願い、個人の幸せを通して会社の夢を実現する。」
といった意味が込められています。
こうした吉川化成の本来の良さを活かしながら新たにコンセプトをまとめる、ということも忘れないよう意識していました。
それも踏まえ、吉川化成が今回必ず伝えなければいけないメッセージは

ということ。
それをもって生まれた、採用サイトのコンセプトが、


実は吉川化成にはゴルフサークルや釣りなどを通じた交流があり、社員同士がまるで家族のように親しい関係を築いています。そういった“温かさ”を土台にしつつ、製造業に携わりつづける人間として「変形・変化」しながら仕事に取り組む柔軟さや挑戦心を掛け合わせたのがこのコンセプトです。
仲の良さを伝えるだけではなく、時代が変わっても挑戦し、変革しつづける企業であることを表現するメッセージとして設計されました。
【サイト設計】“自分らしく働ける”を伝える採用サイトと、“信頼×期待”を築く企業サイト
採用サイトでは学生も閲覧することを意識して分かりやすさを最優先しつつ、ポップで表情豊かなデザインを採用しました。
メインビジュアルでは「吉川化族」というコンセプトを打ち出すために、会社全体の温かさや団結力を伝える意図で家族写真のような構造に。

それにより、社内の雰囲気や人間関係の良さを、ビジュアルで直感的に感じてもらえるように設計されています。
背景にはプラスチック成形を手がける吉川化成の特性である「変形する」という概念をサイトに反映。

四角、三角、丸などの抽象的な形を散りばめ、形状の変化や動きを視覚的に表現しています。このアプローチはサイト全体の動きや遊び心にもつながり、採用サイトならではの親近感や共感を強化する上でも重要な要素となりました。
そして、今回の採用サイトで特に注力したのが2点。
ひとつが「化族の生態」というコンテンツです。

製造業にありがちな「堅い」「地味」といったネガティブな印象を払拭し、オタク気質の人材がイキイキと活躍している会社であることを示しています。応募者が「ここなら自分らしく働ける」と惹きつけられるような役割を担っています。
社員一人ひとりを図鑑のように紹介し、仕事の様子や個性を表現。アニメーションにはフリック操作や立体的な動きも取り入れ、自社のコーダーと連携しながら実装しています。

もうひとつ注力したのが、採用動画「社員でワンカット映像チャレンジ」です。
その名の通りワンカットで撮影され、吉川化成の社員の自然な様子や協力して物事を進める雰囲気を表現することを目指しました。
これによりあたたかい「家族感」やものづくりに欠かせない「チーム力」を表し、かつ吉川化成そのもののキャラクターや内部の様子を分かりやすく表現しています。
そして、もう一方の企業サイトでは「問い合わせはあるが商談につながらない」という課題に向き合いました。

商談に繋げるためにサイト全体で「信頼感+期待感」を設計することが重要だったため、情報は整理されていて見やすく、かつ吉川化成らしい遊び心もある。全体を通して「この会社にお願いしたい」と思わせる体験を企業サイトでは目指しました。
そして、このサイトの象徴的なコンテンツが「バーチャル工場見学」です。

工場は単なる施設紹介ではなく、技術力や信頼を裏付ける大事な要素です。工場の様子や機械設備を見せることで会社の資本力や技術を視覚的に分かりやすくし、「この会社なら任せられる」と思ってもらえる体験を施しています。また、その後に地図を置き、日本国内外に拠点があることを示す流れも信頼感を補強する構成となっています。

結果、吉川化成の新卒採用は0名から3名に。
そして、中途採用は目標に掲げていた10名を越え、20名以上と大幅に増加。
「商談につなげる」という点でも課題をクリアし、吉川社長のXでも嬉しいお言葉をいただくことができました。

この成果は、吉川化成の確かな実績と、社員の皆様の積極的な協力姿勢があってこそ実現しました。
そして何より、事業や人そのものに大きな魅力があったからこそ、今回の採用ブランディングに落とし込むことができたと考えています。
吉川化成はこれからも「化族」を増やし、世界中で価値創造を続ける挑戦を行いつづけていくことでしょう。ビジョンを実現されるその日まで、弊社も一緒に歩み続けてまいります。
【終わりに】どの企業にも「家族」のような存在がいるはず
採用は、単なる人数の確保ではありません。それは、企業の未来を共に創る「家族」のような存在を見つけ、育んでいく活動です。
吉川化成のように、どんな企業にもまだ世に知られていない魅力的な強みや、ともに未来を切り拓く家族のような人財が眠っているはずです。
「採用に課題を感じている」「自社の魅力をどう伝えたら良いか分からない」
もしそんな考えが少しでも浮かんでいたら、ぜひトゥモローゲートにご相談ください。唯一無二の採用ブランディング戦略を創り上げることを約束します。
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