社員満足度を“やめた”会社の方が、組織は強くなる|「満足」ではなく「共感」で組織は動く

2025.12.08

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多くの企業が「社員満足度を上げよう」と努力しています。
福利厚生を増やしたり、自由な働き方を導入したり、社員アンケートを実施したり。社員に“満足”してもらうための施策は、どの会社でも当たり前のように行われています。

しかし、最近はこうも思うんですよね。

「社員満足度を上げること」そのものを目的にしている会社ほど、組織としての力を失っているのではないか。

満足度を上げる取り組みは一見ポジティブに見えます。でも、その裏には「社員が辞めないように」「採用で見栄えを良くしたい」といった会社都合の意識が潜んでいることも少なくありません。

本当に大切なのは、社員を“満足”させることではなく、理念に共感して、一緒に前に進みたいと思える状態をつくることではないでしょうか。

今回は、形式的な「社員満足度向上施策」の限界を考えながら、理念を軸にした“本質的なエンゲージメント経営”についてお話しします。

社員満足度とエンゲージメントはまったくの別物です

まず最初に整理しておきたいのが、「社員満足度」と「エンゲージメント」の違いです。


社員満足度(Employee Satisfaction):職場の環境や待遇にどれだけ満足しているか。

エンゲージメント(Employee Engagement):企業の理念や目的にどれだけ共感し、自分ごととして関わりたいと思っているか。


満足度が高い状態は「この会社、居心地がいいな」という感覚。一方、エンゲージメントが高い状態は「この会社の理念を自分が実現したい」という想いです。

つまり、“快適さ”を重視するのが満足度、 “共感と貢献”を重視するのがエンゲージメントなのです。

エンゲージメントが高い組織では、社員が自ら考えて動き、周囲を巻き込み、組織の目的に向かって行動します。一方で、満足度ばかりを追いかける組織は、社員が“与えられる立場”に留まってしまう。そこには主体性が生まれません。

満足度を追いかけすぎると、組織が“個人化”していく

うちの会社も、過去に「社員満足度を上げよう」と試行錯誤した経験があります。

誕生日プレゼント制度をつくったり、フレックスタイムを導入したり、社員旅行や社内イベントも頻繁に開催していました。確かに、最初は喜ばれます。「うちの会社っていいよね」という声も増え、SNSでも好印象です。

けれど、数ヶ月経つとその効果は薄れます。

「最近はあの制度なくなったんですか?」
「他社はもっとすごいらしいですよ」

そんな声が出てくるようになるのです。

満足は“慣れ”によってすぐに薄れていくそして社員一人ひとりの要望を叶えようとすればするほど、組織はバラバラになっていきます。

「リモートがいい」「出社したい」「服装を自由に」「残業を減らして」…。それぞれの希望に応じて制度を整えていくと、会社全体の方向性が見えなくなってしまう。

つまり、満足度を優先しすぎると“理念の軸”が失われていくのです。

ネットフリックスが示す「理念共感でつながる組織」

「社員満足度」を目的にせず、「理念への共感」を軸にしている代表的な企業が**Netflix(ネットフリックス)**です。

同社の有名なカルチャーデックには、こう記されています。

Our vacation policy, for example, is two words: “Take vacation.”
And our expenses policy is just five words: “Act in Netflix’s best interests.”

” This (almost) no rules rule gives employees the freedom to exercise their judgment. It also prevents the process creep that typically happens when companies grow and try to dummy proof their organizations — stifling creativity and making it harder for businesses to adapt.

引用:https://jobs.netflix.com/culture

「たとえば、休暇ポリシーはたった2語です:「Take vacation(休暇を取れ)」。
経費ポリシーは5語だけ:「Act in Netflix’s best interests(Netflix の最善の利益になるよう に行動せよ)。(途中省略)

この「(ほぼ)ルールのないルール」は、社員に自らの判断力を行使する自由を与える。また、企業が成長し、組織を“ミスのないようにする(dummy-proof)”過程でよく起こる「プロセスの肥大化(process creep)」を防ぐ。それは創造性を抑制し、企業が変化に適応することを難しくしてしまう。」

Netflixは、ルールで縛るのではなく、理念に共感できる人を採用し、信頼によってマネジメントする文化を築いています。

社員一人ひとりが理念を理解し、自らの判断で行動する。
自由と責任の文化が根付き、強いエンゲージメントを生み出しているのです。

この考え方は、満足度を高めるための“制度づくり”とは真逆です。
制度を整えるよりも、理念に共感できる人を集め、理念を信じて行動する環境をつくることが、結果的に強い組織を生み出しています。

社員満足度だけを考えていては、世界を代表するような企業にはなれない

世界を代表する企業──Google、Apple、Meta、Amazon。
彼らが世界的なブランドを築いた理由は、社員満足度が高かったからではありません。

理念・ビジョン・文化が強烈だったからです。

Googleは「世界中の情報を整理し、誰もがアクセスできるようにする」。
Appleは「人々の生活を豊かにする最高の製品をつくる」。

理念に共感した人たちが集まり、その理念を体現する文化が日々の行動や判断を支えています。だからこそ、彼らの組織は常に革新を生み出せるのです。

満足度だけを追い求める企業からは、このような“理念に支えられた一体感”は生まれません。

エンゲージメント向上の本質は「理念浸透」にある

トゥモローゲートでは、これまで多くの企業のエンゲージメント向上施策を支援してきました。
その経験から強く感じるのは、理念を中心に据えた組織ほど成果が出るということです。

理念を単なる“スローガン”ではなく、“行動指針”として日常に落とし込むこと。それがエンゲージメント向上の第一歩です。

たとえば、
・採用時に理念への共感度を重視する
・評価制度を理念に基づいて設計する
・社内表彰の基準を「理念体現」にする
・経営層が定期的に理念を語り直す

このように、理念を会社の“判断軸”にすることで、社員一人ひとりが「何のために働くのか」を意識できるようになります。

その状態を可視化し、エンゲージメントを測定するために僕たちが開発したのがB-SCORE(ビースコア)です。

理念・文化を軸に、社員の共感度や行動度をスコア化し、どこにズレがあるのかを見える化することで、“理念経営”を定量的に育てていくことができます。

B-SCORE公式サイトはこちら

まとめ:社員満足度をやめて、「理念への共感」を育てよう

社員満足度を上げること自体は悪くありません。しかし、それを目的にしてしまうと、組織の軸がブレてしまいます。

本当に強い組織とは、社員が理念に共感し、その実現のために主体的に動く集団です。満足度を上げることよりも、共感を生み出すことに時間を使うべきです。

もし今、あなたの会社で「エンゲージメント向上施策」を実施しているのに成果が感じられないとしたら、
一度立ち止まって考えてみてください。

「この施策は、誰のためにやっているのか?」

その問いの先にこそ、理念を中心とした“強い組織づくり”のヒントがあります。

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西崎 隼平

トゥモローゲート株式会社常務取締役。ブラックな企業の営業企画を統括する最高戦略企画責任者。社員5万人、FORTUNE500に10年連続で選出される企業から、当時社員7人だったトゥモローゲートに入社した。現在は戦略企画部のマネジメントや新規事業の推進を担当している。代表・西崎の実弟。

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