“売らないサイト”が問い合わせを増やす。自然に人が集まるホームページ設計の話

高馬直広

2025.12.22

172

企業からよくいただく相談に、
「ホームページからの問い合わせをもっと増やしたい」というものがあります。

正直に言うと、
「問い合わせだけを増やしたい」という依頼には、あまり答えたくありません。

私たちがつくるのは、“売るためのサイト”ではなく、
“信頼されるためのサイト”だからです。

実はこのほうが、結果として問い合わせが自然に増えます。
今日はその理由と方法を、体系的に、でもなるべくやさしくお話しします。

売り込むほど、人は離れる。これはホームページでも同じ。

今のユーザーは、売り込まれることにとても敏感です。

・メリットを押しつけてくるサイト
・実績と数字の見せつけ
・やたら大きい「お問い合わせはこちら」ボタン

これらを見ると、反射的に距離を置く。
行動心理学でも知られている“反発反応”が働きます。

ホームページは、ただの営業ツールではありません。
ユーザーにとっては会社の“人格”です。

信頼できるかどうかを判断する場所。
だからこそ、売り込むほど信用を失います。

逆に、理念や姿勢をていねいに伝えているサイトは、
押し売りしないのに問い合わせが増えます。

「買わされる」より「選びたい」
この自然な欲求を理解しているサイトが、成果につながるのです。

なぜ“売らないサイト”が問い合わせを生むのか

理由は大きく3つに整理できます。

① 共感が生まれたとき、人は自分から動く

理念や考え方がきちんと伝わるサイトは、
ユーザーが会社と価値観を重ねやすくなります。

この「価値観の一致」が生まれた瞬間、
問い合わせは“しようと思うもの”から“してしまうもの”に変わります。

② ストレスのない情報設計が、行動を後押しする

売り込むサイトほど、導線が不自然になります。
やたらとCTAが多い、フォームへの道が押しつけがましい。

一方で、売らないサイトは導線が自然です。
読み進める流れのまま、気づけば必要なページに辿り着く。

サイトの情報設計が“ユーザーを味方にしている”状態です。

③ 信頼を積み上げたサイトは、問い合わせの“質”も上がる

売り込み型のサイトは、「とにかく安くお願いしたい」という層を集めがちです。

ですが、理念中心のサイトは、
考え方や姿勢に共感したユーザーからの問い合わせが増えます。

問い合わせ数だけでなく、
プロジェクトの質・関係性の質が向上するのが大きな違いです。

“売るサイト”によくある失敗

一生懸命売ろうとしているのに、なぜかうまくいかない。
そんなサイトにはよく共通点があります。

① 情報を詰め込みすぎて本質が見えない

SEOを気にしすぎて、とにかく情報を足してしまう。
しかし情報が多すぎると、ユーザーは読む気を失います。

大事なのは“何を語り、何を語らないか”の整理です。

② CTAが強すぎて逆効果

「お問い合わせはこちら!」が連打されているようなサイトは、
ユーザーを“追いかけている”ように見えます。

追われると逃げる。
これは人間の自然反応です。

③ デザインと言葉の関係性がバラバラ

言っていることが誠実でも、
デザインが安っぽかったら信用は生まれません。

逆に、言葉とデザインが一致した瞬間、
サイト全体の説得力が一気に立ち上がります。

“売らないサイト”をつくるための設計プロセス

問い合わせを増やしたいのであれば、やるべき順番は明確です。

① まず理念と言葉を整える

・どんな想いで事業をしているのか
・どんな姿勢を大事にしているのか
・何をユーザーに提供したいのか

これらが曖昧なままデザインを始めると、
サイト全体がブレます。

② 会社の“人格”を描くストーリーをつくる

理念をベースに会社のストーリーを組み立てます。

ストーリーがあるとユーザーは安心します。
「この会社は何者か」がわかるからです。

③ 情報設計でユーザーを迷わせない

・ページ構造
・リンクの流れ
・読ませる順番

これらをきちんと整理することで、
押し売りではなく“自然な導線”ができます。

④ 理念を翻訳するデザインにする

デザインは飾りではなく“翻訳”です。

会社の姿勢、世界観、価値観が
視覚的に伝わるデザインになった瞬間、
サイトの温度が決まります。

⑤ 最後に、違和感のない導線を配置する

CTAを小さくする必要はありません。
ただし“押しつけないこと”が大切。

読み進めた結果として「ここだな」と思える場所に
自然に置いてあれば、それで十分です。

“売らない”Webサイトの制作事例

私たちは、どのプロジェクトでも
理念 × ストーリー × デザイン × 情報設計
を一本の線でつなぐことを意識しています。

どれか一つが欠けると、売らないサイトは成立しません。

会社紹介ページで、まず理念から語るのもそのため。
事業の説明より“姿勢”を伝える方が、ユーザーの信頼が早く積み上がるからです。

派手なデザインに見えて、実は骨格はとても誠実で地味です。

では、その考え方が実際のサイトでどのように表現されているのか。

これまでトゥモローゲートが制作してきたWebサイトの中から、いくつか事例をピックアップしました。“売らないサイト”をつくるうえでの参考になれば幸いです。

幸南食糧株式会社

幸南食糧株式会社様の企業サイトでは、事業や商品よりも先に “どんな会社でありたいか” を堂々と掲げています。FV(ファーストビュー)に理念を置き、企業の姿勢やステートメントを最初に伝える構成にすることで、単なる食品メーカーではなく、何を大切にして事業をしているのかが真っ直ぐに伝わるサイトになっています。

また、それによりなんの会社なのかの情報が後周りになることを避け、ビジュアルでお米の写真を真ん中に大きく乗せることで、直感的にそこが伝わるようデザインしています。

商品の強みを並べるより、まずスタンスを見せつつも、「なんの会社なのか」もしっかりビジュアルで担保する。その誠実な順番が、“この会社と仕事をしたい”と思わせる空気をつくり、売り込まずに価値観で選ばれるサイトにつながっています。

サンズグループ「プペル保育園」

えんとつ町のプペル保育園のサイトでは、園が大切にする 「子どもの“やりたい”を尊重する姿勢」 を中心に据え、世界観を軸としながらも、“誠実さや信頼が伝わる構成”を優先しました。

1日の過ごし方や方針、保護者・先生の声を必要な順に整理し、メリットを押しつけずに、「ここで過ごす未来が自然に想像できる」 流れをつくることに集中。飾るのではなく、価値観がまっすぐ伝わる状態を目指しています。

湘南鎌倉総合病院

湘南鎌倉総合病院様の病院事務に特化した採用サイトを制作。

病院事務にどうしても付きまとう「地味」なイメージの中にも、巨大な総合病院を動かすほどの壮大な仕事があるという魅力を捉え、テキストも、写真も、余白もとにかく「壮大」に、かつ直感的に伝わるよう表現。

ダイナミックな表現とは裏腹に、コンテンツは情報整理がきちんとされた設計をしています。

TOPページは基本的にすべてのページへのindexとなりますが、本サイトではすべての詳細ページへのリンクも設置し、いきたいところにすぐにいけるよう構築しています。

職種を限定することで、よりミクロなターゲットに向けたメッセージを訴求することで、実際に働く社員や、その職種を目指す求職者のやりがいを奮い立たせるような設計をしました。

結論:売らない勇気が、一番成果を生む

問い合わせを増やしたいなら、まず売り込みをやめること。

押せば押すほど、人は離れます。
逆に、誠実さと姿勢が伝わるサイトは、気づけば問い合わせが増えています。

理念が伝わる → 信頼が生まれる → 行動が自然に起きる。

この流れを設計できるサイトこそ、これからの時代に選ばれる“強いホームページ”です。

高馬 直広

トゥモローゲート株式会社意匠制作部マネージャー。飲食店で勤務しながら独学でプログラミングを習得し、数社のデザイン会社を経て18年にトゥモローゲートに入社した。フロントエンドエンジニアとしてWEBサイト制作を担当する一方、マネジメント業務にも携わっている。

TEL 06-7167-3950

https://tomorrowgate.co.jp