「よくブラック企業なんて自分で言えますね」と言われるんですが自分たちはブラック企業ではなくブラック“な”企業です。なぜ自分たちの会社をそう呼ぶようになったのかを説明しますね。会社を設立してまずミッションとビジョンの策定に取り組みました。とはいえ事業内容は決まっていないし売上も実績もない。唯一あったのは「変わった会社を作りたい」という漠然とした思いだけ。そのためにはまずは変わった社員を、いろんな色(個性)を持ったメンバーを集めないといけないと思いました。情熱的な赤の人もいれば冷静な青の人もいる。そんな組織にしないといけないと思ったんです。そこで思い浮かんだのが絵の具です。絵の具はいろんな色を混ぜれば黒になりますよね。それと同じくいろんな色を持ったメンバーが混ざり合って黒になるという意味を込めてコーポレートカラーを黒にしました。色が混ざり合うという意味では虹色の選択肢もありました。それでも黒にこだわったのはシンプルな会社にしたかったから。お客様にとってわかりやすく、実行しやすく、成果を実感しやすいシンプルなサービスが提供できる会社にしたいと思ったから黒に最終決定したんです。
ただ『ブラック“な”企業』を名乗るようになったのは創業から4年が経った2014年のことです。きっかけは初挑戦した新卒採用でした。どういう打ち出し方をすれば面白いことをやろうとしている会社だと学生さんが思ってくれるか、選考に進んでみようと興味を持ってくれるか考えました。当時の社員は3人。実績はほとんどない。そんな会社が他と同じように打ち出しても誰にも見つけてもらえないだろうという前提から生まれたキャッチコピーが今でも採用のメインコピーになっている「ようこそ、ブラック“な”企業へ」です。当時から『ブラック企業』は学生の間でトレンドワードでした。その言葉を逆手にとってコーポレートカラーと組み合わせて打ち出せば注目を集められるんじゃないかと思ったんです。他にも案はありましたが、トゥモローゲートらしさもキャッチコピーのインパクトも「ようこそ、ブラックな企業へ。」に勝るものはありませんでした。そのキャッチコピーに沿ってまずは採用サイトを新設。デザインやコンテンツは一見ブラック企業です。「終電ギリギリまでの仕事」「辞められない会社」「家族にまで広がる干渉」といったワードが並んでいます。でも詳細を見てみると...知りたいひとはぜひサイトを覗いてみてください。『トゥモローゲート 採用サイト』で検索したら一番上に出てくると思います。「批判される怖さはなかった?」「ミスブランディングになるデメリットは考えなかった?」と聞かれることがあるのですが、社員3人の小さな会社だったので失うものは何もないと思っていましたし、炎上して潰れてもまた作ればいいやぐらいに思っていたので怖さはありませんでしたね。ちなみに「ようこそ、ブラックな企業へ。」で打ち出した採用は大成功。7000人のエントリーを集めました。
「世の中にきっかけを。」というミッションは創業当時から変わっていませんが厳密に言えば最初は「世の中にきっかけの種を。」だったんです。当時のコーポレートサイトには種が蒔かれて花が咲くまでのアニメーションを使っていました。ただ創業から数年が経った頃にもっとシンプルな言葉にしようという話になって「種を」をとったという経緯があります。そもそもなぜ「世の中にきっかけ」なのかというと、創業当時は事業内容が決まっていなかったので、それくらい広い意味の言葉しか使えなかった。システム開発会社なら「ICTで世界を変える」と言えるしデザイン会社なら「デザインで世の中を豊かにする」といったミッションを立てられますけど何をするのか決まっていないと話は別ですよね。なのでこれからどんな事業をやるにしても成り立つ「世の中にきっかけを。」という言葉にしたんです。きっかけを与える相手はお客様だけではありません。一緒に働く社員はもちろん、入社には至らなかったけど選考を受けてくれた学生さんや、SNSをフォローしてくれている人など、関わるすべての人です。トゥモローゲートに入ったから人生が変わったとか、トゥモローゲートに仕事を依頼したから会社が変わったとか、トゥモローゲートの社員のSNSをフォローしてから仕事がうまくいくようになったとか、そういった声をたくさんいただけるような存在になりたいなと。それに、自分たち自身が新しいことにどんどん挑戦していくという意味でも、「きっかけ」というキーワードはすごくしっくりきてますね。
他でもない自分もある人に与えてもらった「きっかけ」のおかげでここまでくることができたんです。ある人とは京都にある社員15人ぐらいのメーカーの社長さん。人材コンサル会社で働いていた前職時代にたくさんのことを教えていただきました。中でも印象に残っているのはその人の経営論。当時の自分は「会社にとって最も重要なのは利益を上げること」と信じていたのですがその人は「それだけでは誰も応援してくれないよ」「誰も共感してくれないし長生きできないよ」と教えてくれました。実際その人はその言葉通りの経営をされていて、たくさんの人に応援される人であり、応援される会社をつくっていました。間近で見させてもらったからこそ、起業してまず最初にミッションを定めることになりましたし、起業から10年以上が経った今でも経営理念を大切にすることができているんです。
ビジョンも創業当時から変わっていません。とにかく「変わった会社を作りたい」と思っていただけにビジョンも他の会社が考えないであろう変わったものにしようと思い『世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る。』に決めました。「変わった会社を創る」という意思が伝わりやすく、注目を集めやすい言葉はないかな?と模索したうえでの決定です。会社、社員、仕事。この3つの軸が組み合わさって初めて「オモシロイ」が生まれるという意味も込めています。よく聞かれるのはなぜ会社、社員、仕事の順番なのか?ということ。これには明確な理由があって。たとえば変わった社員を集めたとしてもその社員が変わったことに全力で取り組める環境がないと成り立たないじゃないですか。だからまずは変わったことに取り組める環境を整えて、その環境に魅力を感じた人が集まってきてくれて、その人たちと一緒に変わった仕事をつくっていく。これが順序として適切かなと思ったんです。ちなみにここで言う環境(会社)とは、体制というよりも思想という意味合いが強いです。儲かる儲からないはもちろん大事だけど、それ以上に、変わったことに挑戦する、オモシロイことに挑戦することを大切にする思想です。
創業当初はオフェンスとディフェンスに分けてそれぞれ8つのバリューを設定していました。デイフェンスには人として当たり前のことを。例えば「きちんと挨拶をする」「人に優しくする」「家族や仲間を大切にする」といったことです。よく「変わった会社を目指しているのにそこは普通なんだ」と言われるんですが、自分たちが定義する「変わった」は“人として基本的な部分を押さえた上で変わったことにチャレンジする”ということを改めてお伝えしておきます(笑)。話がそれました。一方のオフェンスには「大胆に攻めよう」といった攻めの姿勢を表すバリューを設定していました。ただ、それもビジョンマップ作成に合わせてブラッシュアップさせることになり、結果的に今の12個に厳選したんです。数が減ったのは抽象的なものを削ったからです。例えばオフェンスにあった「情報にアンテナを立てよう」は一目見ても何をしていいのかわからず行動につながりにくいですよね。そうじゃなくて、パッと見ただけで意味がスッと入ってきて、何をやらなければいけないのかを瞬時に判断でき、かつビジョンの実現につながっていく項目を厳選していったんです。どこかの企業を参考にしたとかはありません。自分たちの中で何が大事なのか?役員中心のミーティングを重ねて、自分たちにふさわしいバリューを厳選していきました。
社員の提案がきっかけで定めることになったトゥモローゲートの企画基準です。「ささる」✖「あがる」=「ひらく」という企画基準があります。その感覚的な部分を可視化できるようにしたのがTGキカクです。お客様に提案する企画はもちろん、自社の社内制度や新規事業など、新しいことに挑戦するときには必ずこのTGキカクを、厳密に言うとTGキカクに沿って作成したチェックシートのスコアをクリアしなければならないという制度を導入しました。これまでもずっとこのような制度が必要だと思ってはいたんですがなかなか手をつけられないでいました。でも、社員の提案がきっかけで話が進み、無事に導入することができたんです。「ささる」と「あがる」にはそれぞれ8項目を設けています。これを決めるために何度もテストを重ねました。過去にお客様に提案した企画や自社で行った採用企画を使って何度も何度もテストを重ねた結果、トゥモローゲートにとって大切なのはこの8項目だという結論に至ったんです。テストを含めたミーティングの回数はかなり多かった。自分が入った回だけでも2時間を5回ほど。ほかのメンバーは2時間を超えるミーティングを10回以上はやったんじゃないかと。時間と労力をかけて定めた企画基準なのでこれまで以上にクオリティを担保できるようになったと思います。また、全体のクオリティだけでなく「この企画は特に売り上げUPにつながりそうだ」「これはSNSでのシェアが期待できそうだ」といった企画の特徴も把握できるようになりました。
会社がオモシロイかオモシロくないかを判断する要素は何か?と考えて洗い出したのがこの8つです。事業内容、社員、制度。周りから見た時にどう映っているか。オフィス。経営者...。オモシロイ会社であるために抑えるべき8つを満たし続けていれば中期ビジョンの「大阪で一番面白い会社」に近づけるんじゃないかと。これはまだ仮説に過ぎませんが、その仮説を検証するための期限とゴールも明確に設定しています。「2022年までにこれを達成しよう」というゴールを。例えば社長が『情熱大陸』に出演するとか、会社として『日経就職ランキング』TOP10に入るとか。SNSに力を入れ出したのもそれがきっかけです。『情熱大陸』に出るのであればテレビ局の関係者にトゥモローゲートの名前を知ってもらわないといけない。そのためには社長が有名にならないといけない。有名になるための手段としてはSNSが最適じゃないか。じゃあYouTube登録者数10万人というゴールを定めよう...といった流れです。そんな感じで8つのオモシロイそれぞれに具体的なゴールを設定してそのゴールを達成するための手段を自分たちで考えて行動ができる組織づくりをしています。この8つはビジョンマップを作成した当時から変わっていません。『世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る』というビジョンがあり、そのもうひとつ手前に『大阪で一番面白いと呼ばれる会社になる』という中期ビジョンを設定し、その中期ビジョンを達成するために必要だと判断したのが8つのオモシロイということです。
創業当時はミッション、ビジョン、バリューやそれに対しての目標も全てざっくりしていました。ただ、経営理念をハッキリさせて、ビジョンマップというカタチで言語化したことで、会社がどこに向かっているのかが明確になり、同じ方向を目指してくれる人が集まってくれたおかげで、パフォーマンスは上がっていきました。どこを目指しているのかわからない中で頑張るのってしんどいじゃないですか。例えば42.195キロで終わると分かっているマラソンと50キロかもしれない...100キロかもしれない...とゴールが分からないマラソンだと、走っている行為自体は同じでもモチベーションが違うじゃないですか。何のために走っているのか、どこに向かっているのか、明確じゃなければモチベーションの維持は難しいんです。会社も同じです。もちろんトゥモローゲートという会社は課題がまだまだ山積みです。それでも一つずつ課題と向き合い、解決し、理想の会社像に近づけていくことが大事だと思っています。これからも変わった会社づくりに邁進していきたいと思います。