企業インナーブランディング術-目的や意味、進め方や事例を解説

インナーブランディングを解説します。

こんにちは。隼平です。

みなさん、洗練された内装で、おいしいお酒が飲めて、見た目も素敵な料理が並んでいるのに、店員さんの対応ひとつでお店自体にガッカリしてしまうなんて経験ありませんか?

ブランドは、物やサービスだけでなく、人や企業など様々なものに宿ります。そしてそのブランドを確立するために行うのがブランディングです。今回の記事では、企業における「インナーブランディング」にスポットライトを当てて書いてみたいと思います。

インナーブランディングとは?

トゥモローゲートではブランドを「約束」と定義しています。顧客やステークホルダーに対して“この企業はこういう価値を提供してくれる”という「約束」。その約束の内容をイメージづけるために行うことがブランディングです。

ブランディングと聞いて多くの人がイメージするのは、ホームページを作ったり、広告を打ったりと、サービスや企業の「見え方」に工夫を加える「アウターブランディング」です。これに対して「インナーブランディング」は、企業理念を社内に浸透させたり、行動基準を徹底することを指します。

ポイントとなるのは「内」「外」か。対外的にブランドイメージを築くことを「アウターブランディング」、社内に向けてブランドを強く意識させるために行うことを「インナーブランディング」と言います。

アウターブランディングはイメージしやすいですが、インナーブランディングについては漠然としたイメージしかない、と言う人もいるかもしれません。ただ、このインナーブランディングが、企業のブランド構築において極めて重要なんです。

インナーブランディングを蔑ろにして、外面ばっかり気にするくらいなら、外面が全然ダメでも中身が整っている方がまだマシ。そのくらいに大切なインナーブランディングについて解説していきます。

企業にインナーブランディングが必要な理由

顧客とブランドイメージが一致する

「どれだけ内側にこだわっても顧客には関係なくない?」なんて思ったアナタは要注意。ユーザーはサービスのデザインや質のみならず、それを提供する人の姿勢やストーリーにも目を向けています。自分自身も昔、サービスを提供している人の姿勢に感銘を受けたことがきっかけでファンになったものはたくさんあります。

なぜ例がラーメン屋なのかはさておき、ブランドはその商品やサービス、お店、ホームページなど、見栄えだけで生まれるものではありません。電話対応、接客、何気ない社員の行動など、そのサービスに関わる「人」からもブランドは築かれます。むしろ、商品やサービス、お店、ホームページ以上に強烈な印象を与えるのがです。

どんな人が、どんな思いでその商品やサービスを提供しているのか。ユーザーは、外側のブランドイメージを生み出しているのは人(社員)であることを知っています。ここを蔑ろにしてしまうと、「思っていたのと違う」という見栄えとのギャップを生み出してしまいます。

見栄えでそれほどいい印象を与えられていなくても、中身がしっかりしていたら加点になりますが、見栄えがいいのに中身がダメ、は信用を失います。それくらいにユーザーは人の行動を「本質」と捉えています。

採用の成功率が上がる

企業にとって永遠の課題とも言える採用。ウチもかなり困ってます…。

「いい会社だと思って入ったのに実態は全然違った」。特に若い世代からそういった声を聞いたことはありませんか?いわゆる入社後のギャップというやつ。いくら外ヅラだけいっちょまえに「いい会社ですよ」と発信していても待遇が悪かったり、福利厚生が整っていなかったり、理不尽が蔓延っていたらギャップが生まれるのは当然です。

それを防げるのもインナーブランディングのメリットの一つ。発信している情報とのギャップが生まれないように会社の中身を変えていく。理念の共有のみを目的としたオフサイトミーティングや人事評価制度の構築などを通して既存の社員に対するブランド力を高めていくんです。

入社後のギャップがなくなれば離職率は下がります。結果的に社員の仕事のモチベーションは高まり成果につながっていきます。また既存の社員からいい口コミが広がることで新たな人材の採用にも繋がっていきます。「100%リファラル採用」なんて未来が待っているかもしれません。

インナーブランディングをしっかりとやることで生まれる採用のメリットは無限大なんです。

社員のこだわりがブランドを強くする

冒頭にもあるように、ブランドとは「約束」。その約束を守るために必要なものが「こだわり」です。多くの会社において、このこだわりを最も強く持っているのが経営者です。

「こだわり」は、会社の人数が少ない時には社長一人でもコントロールできるケースが多いです。違和感を感じたら指摘をし、自ら体現して伝えることもできます。ただ、20人→50人→100人と社員が増えていくにつれて、自分の目が届かない範囲が必ず出てきます。これにより、社長のこだわりが社員増に比例して薄れていくんです。

その結果、社長は理想を語り、社員は現実をグチるみたいな企業あるあるが完成します。こんな状態では、新たに入ってくる仲間に社長がどれだけ理想を語っても、先輩社員が「社長はああ言ってるけど、ある程度でいいよ」みたいなことになり、ギャップが生まれ、サービスの質の低下や離職を招いてしまいます。

しかし、社長と同じくらいに強いこだわりを持った人が社内に複数人いたらどうでしょうか。社長の目が届かないこともその人がチェックをし、指摘してくれますよね。後輩の模範となるように体現してくれることもあるでしょう。

また、ホームページや広告など、新たにつくられるものに社長が直接関わっていなくても、社長のこだわりが受け継がれ、随所に現れたものができあがります。これにより、会社を拡大しながらも自分たちのブランドにこだわりを持ち続けられる強い組織ができあがるんです。

インナーブランディングの進め方

5つの手順を踏む

では一体どうやってインナーブランディングを進めていけば良いのか。それを簡単な概念図にしてみました。

明文化(Philosophy
そもそも自分たちはどんな価値を提供し、どこを目指し、そのためにどうあるべきで、何にこだわるのか。これが明確な言葉になっていないといけません。それも、できるだけ分かりやすく。見た社員が迷ってしまう言葉ではいけません。逆に言葉の意味自体が抽象的であったとしても、社員が同じ方向を見られるように定義されていれば問題ありません。これができていないと、たとえ明文化しても手段がズレていってしまいます。

実は弊社でも社員10人くらいの時にこのズレを経験しました。その時の詳細をまとめた記事も書いているので、お時間があれば見てみてください。

明文化する際の重要なポイントが「やること」「やらないこと」を明確にすることです。「やること」を決めるのはインナーブランディングにおいて当たり前になっていますが、「やらないこと」についてまで考られていないケースが多いと感じます。

この「やらないこと」を決めることでブランドの輪郭がよりはっきりするので軽視してはいけません。例えば「自社の規定する価格で販売する」というように「やること」を宣言するよりも、「値引きは絶対にしない」と「やらないこと」を宣言した方が、ブランドの意思をより強く表明することができます。

「やること」の裏返しが「やらないこと」でもあるので、2つを区分する際には「やること」にただやることを設定するのではなく、こだわりを持って追求し続けるものを設定する。逆に「やらないこと」には絶対にやらないと腹をくくっているものを設定する。そうすれば2つの違いがハッキリしてわかりやすくなります。

浸透(Penetration
誰にとっても分かりやすく、ズレがないように明文化できたとしても、その時点ではただの言葉にすぎません。明文化ができた次は、伝えることが重要になります。口酸っぱく言い続け、体現して見せることで、徐々に浸透していきます。そのために共有の場を設けたり、研修を行ったりすることが大事です。

③行動(Action
理念は理解できたものの、アウトプットしなければ、いつまでたってもブランド価値の向上には繋がりません。たしかに浸透ができたら自動的に行動に移っていくこともありますが、それを加速させるために制度設計をはじめとする仕組みを作り上げることが大切です。

その最たるものが評価制度。理念に沿った行動でビジョンに貢献した人が適正な評価を受けられる仕組みが整っていれば、社員自ら行動する大きな動機になります。逆に、理念を掲げているだけで、その理念に沿った行動でビジョンに貢献しても適正な評価を受けない組織では、明文化した理念が形だけのものになってしまいます。

確認(Check
表れだした行動や言動、表面化してきた考え方、これらを確認してズレがないかをチェックすることも大事です。弊社のマネジメントの役割を持つメンバー間で最も気を付けているのはここです。解釈にズレがないかを常に意識し、判断に迷う事例は確認、相談を徹底する。インナーブランディングは近くにいる人から受ける影響が大きいため、マネージャーが理念に沿わない行動をしていたら、そのチームのメンバーにまでズレが及んでしまいますから。

⑤徹底(Thorough
そのサイクルが行動に表れだして、そのズレも確認できる仕組みがあれば、後は徹底していくことです。インナーブランディングはアウターブランディングのように反響などが即数字に表れたりはしません。またちょっとした気の緩みから意識が薄れがちなので、徹底してやり続けることが何より大切。これが、ブランドイメージを構築していくことに繋がっていきます。

Why(なぜやるのか)を伝え続ける

先ほどの5つの手順の中で「行動」がなければブランド価値の向上には繋がらないと言いましたが、その行動もただ行っている行動か、目的をもって行っている行動かでは全く結果が異なります。前者の行動ではズレも発生しやすいため、肝心なところでブランドに致命傷を与える行動を生んでしまうかもしれないんです。

3人のレンガ職人

「3人のレンガ職人」という話をご存じでしょうか。元はモチベーションや目的意識を語る際にあげられる代表的な事例なのですが、実はインナーブランディングを語るうえでも非常に分かりやすい事例なのです。

旅人が道中、3人のレンガ職人に出会い、「何をやっているのか?」を訪ねるとそれぞれ別の答えが返ってきます。

1人目「指示を受けてレンガを積んでいる。」
2人目「レンガを積んで壁をつくっている。大変だけど生活の為だ。」
3人目「大聖堂をつくっている。完成したら多くの人が喜ぶ。」


ざっくり言うとこんな話。

1人目は「行動」はできています。しかし、とりあえず積めばいいと思っているため、場合によっては崩れ落ちてしまう積み方をしてしまうかもしれません。

2人目も「行動」はできています。生活の為なので、仕事を失わないようにと質も担保してくれます。ただ、どうあるべきかが分かっていないためこだわりは見られず、あまり細かいことを言うと他のお金を出すところに転職してしまうかもしれません。

3人目は当然「行動」ができ、今後必要なことも自ら想像して動きます。また、目的意識が高いので多くの人が喜ぶためにどうしたら良いかにこだわります。何より、今やっていることにワクワクしています。

「Why(なぜやるのか)」を伝え、共感を得ることができれば、受けた指示以外のことも想像して対応ができ、その行動にズレが無くなります。このズレの無い行動が顧客やステークホルダーへの「約束」を守ることに繋がり、ブランドを確立していきます。これが徹底できる状態を構築できれば、インナーブランディングは成功と言えます。

トゥモローゲートが提供するインナーブランディング事例(取り組み)

トゥモローゲートはサービスとしてもさまざまなインナーブランディングに関する取り組みをお客様にご提案しています。

人事評価制度設計

一般的な人事評価制度は、主にスキル×成果で評価します。かく言ううちも昔はそうでした。ただ、それじゃあビジョン実現に向かっていかないんです。トゥモローゲートは「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る。」というビジョンを掲げています。それなのにスキル×成果で評価をしていたら、オモシロイかどうかにかかわらずとにかくスキル×成果が出した人が評価されてしまいます。

それじゃあ誰もビジョンなんて追っかけなくなります。ではどうしているのか。私たちはマインド×スキル×成果×ビジョンへの貢献の4軸で評価する評価制度を採用しています。企業理念に則った言動・行動をもとに成果を残した人が適切な評価を受けられる仕組みを作っているんです。

理念共有プログラム

企業理念を社内に共有・浸透させるためのプログラムを設計します。主な取り組みとして挙げられるのは企業理念を全社員に共有するための「オフサイトミーティング」の企画と開催。業務を停止して、理念共有のためだけに1日を使うオフサイトミーティングはインナーブランディングにおいてとても重要になります。

このほかにも社内制度の構築やオフィスデザインなど、インナーブランディングにおけるさまざまな取り組みを行っています。もしご興味のある方がいらっしゃればこちらからお問い合わせください。

トゥモローゲートが提供するインナーブランディング事例(制作物)

企業理念を浸透させるための取り組みに加えてトゥモローゲートではインナーブランディングを目的とした制作物もご提供しています。

ビジョン共有動画(株式会社西村組)

北海道の建設会社「西村組」のビジョン動画。社員様に企業理念を理解してもらうため、西村社長が会社の歴史や理念について解説する動画を作成させていただきました。

スゴロク型クレド(株式会社ニュービレッジ)

「業界一ええ顔を生み出す会社」を目指す株式会社ニュービレッジのスゴロク型クレド。どんな思いで、どんな行動をして、どんな成果を生み出せばビジョンに近づけるのかをスゴロクで表現し、実際に社員様に使ってもらうことで理念の浸透を目指しました。

紹介したのはあくまで一例ですが、トゥモローゲートではこのように、社内向けの取り組みや社外向けの制作物作成を通してお客様のインナーブランディングをお手伝いしています。

ディズニーランドに見るインナーブランディングの事例

ブランディングを語るうえでよく事例にあげられるディズニーランド。訪れた人に「夢の国」と謳われるほど、そのブランディングは徹底されています。そんなディズニーランドがアウターブランディング以上に徹底しているものがインナーブランディングです。

ディズニーランドではお客様のことを「ゲスト」、働く従業員を「キャスト」と呼び、キャストが守るべき行動規準として「SCSE」というものが定めらています。

【 Safety 】
安全な場所、やすらぎを感じる空間を作りだすために、ゲストにとっても、キャストにとっても安全を最優先すること。

【Courtesy】
“すべてのゲストがVIP”との理念に基づき、言葉づかいや対応が丁寧なことはもちろん、相手の立場にたった、親しみやすく、心をこめたおもてなしをすること。

【 Show 】
あらゆるものがテーマショーという観点から考えられ、施設の点検や清掃などを行うほか、キャストも「毎日が初演」の気持ちを忘れず、ショーを演じること。

【Efficiency】
安全、礼儀正しさ、ショーを心がけ、さらにチームワークを発揮することで、効率を高めること。

引用:http://www.olc.co.jp/ja/csr/safety/scse.html

この4つの行動基準は優先順に並べられているそうです。「夢の国」と謳われるディズニーランドですからパフォーマンスや楽しませることを最重要視している(上記で言うところの「Show」)と思いきや、その優先順位は3番目。最も優先されるべきは「Safty」と位置付けています。私はこの考え方を表す一つのエピソードに感動しました。

皆さんの記憶にも残る2011年3月11日、「東京ディズニーリゾート」がある千葉県浦安市でも震度5強の地震に見舞われました。その際、園内には7万人の来場者と1万人のキャストがいて、キャストの内の9割はアルバイトだったそうです。来場者はもちろんのこと、キャストも今まで経験したことのない大災害に大きな不安があったことと思います。

そんな状況下でキャストが来場者のためにとった行動は素晴らしいものでした。防災ずきんの代わりに売り物のぬいぐるみを、防災食の代わりにお土産のお菓子を、無償で配布。しかも、すべて現場各自の判断で即座に対応。さらには普段は絶対に見せないバックヤードを避難経路にし、1500人のゲストを安全な場所に誘導したそうです。

これらの判断は紛れもなく、普段から「SCSE」という行動基準を徹底していたからこそできたことだと思います。その姿勢は年180回に及ぶ「震度6強 来園者10万人」の防災訓練にも表れています。「震度5強 来場者7万人」という実際に起こった災害は想定の範囲内だったのです。

このような文化、姿勢が根幹にあるからこそ、ディズニーランドはファンを生み出し続ける強いブランドを構築できているのでしょう。

参考:https://www.bosai-nippon.com/feature/1596
   https://bcp-manual.com/emergency/disney-emergency-training/

その他のインナーブランディング事例

リッツカールトン

みなさんよく知る高級ホテル「リッツカールトン」では従業員の方々が常に会社の価値観を記した「クレドカード」を持って仕事をしているそう。常に価値観を共有しているからこそいつ、誰が行っても最高品質のサービスを届けられるのだと思います。以下はそのクレドに記されている内容です。

リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

引用:https://www.ritzcarlton.com/jp/about/gold-standards

スターバックス

みなさんお馴染みスターバックスはブランディングがうまい企業として有名です。要素として大きいのは顧客満足度よりも従業員満足度を重視している点だと言われています。さまざまな制度を設けるなどの取り組みで従業員満足度を高めてインナーブランディングを成立させ、結果的にサービスの質が上がり「また来たい」と思えるお店づくりを実現。内側を変えて外側を変える。ブランディングのお手本のような事例です。

参考:https://ascii.jp/elem/000/000/927/927416/

インナーブランディングをやるべきタイミングとは?

インナーブランディングには時間と労力が掛かります。特に、人数が増えれば増えるほど組織改革の難易度は上がっていきます。逆に、インナーブランディングが徹底され、文化として根付いている組織は、人数がどれだけ増えていってもブレることはありません。文化が魅力的な企業として他にもグーグル、アップルなど世界的企業が事例にあげられますが、これらの企業もインナーブランディングへの意識が非常に高いことで有名です。

もしインナーブランディングの強化を考えていて、今後も自社の成長を視野に入れているのであれば、やり時は今。新型コロナウイルスが猛威を振るう世界情勢の中で実務を堅実に行うことはもちろん大切ですが、そんな時だからこそインナーブランディングの強化をすべきタイミングなのかもしれません。

このブログを読んで何かしらのきっかけになれば嬉しいです。他にもブランディングや理念についてブログで書いていますので、ぜひ見てみてください。

長文ご覧いただき、ありがとうございました。