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企業の事業内容や、提供している価値、大切にしている価値観などを一言であらわしたキャッチコピー。トゥモローゲートでコピーライターになるまではその必要性にピンときていませんでした。「なんとなく、それっぽいキレイな言葉を並べているだけだろう」くらいにしか思っていませんでした。
でも、いまは違います。企業のキャッチコピーは、お客様や求職者に与えるイメージそのものであり、社員の行動基準にもなる重要なもの。キャッチコピーが企業の本質を言いあてたものでなければターゲットの心にささる商品やサービスを開発することはむずかしく、社員が同じ方向をむいて仕事をすることもできません。つまり、企業活動においてその企業の本質を言いあてたキャッチコピーは欠かせないものなのです。
トゥモローゲートはMISSIONに「世の中にきっかけを。」VISIONに「世界一変わった会社で、世界一変わった社員と、世界一変わった仕事を創る。」というキャッチコピーをすえています。明確に決まっているからこそ「世の中やお客様に、ほかにはない、変わったきっかけを与えていくんだ!」という思考が統一されており、それにともなってサービスの目的も統一されており、メンバーが同じ方向をむいて仕事をすることができています。
つまり、キャッチコピーが明確だからこそ、ブレのない、しっかりとした企業ブランドが構築できていると言えるんです(もちろん完璧ではなく、まだまだこれからやらなければいけないことはたくさんありますが)。トゥモローゲートのブランディングについてはこちらの記事で詳しく解説しているので興味のある方はぜひ。
今回の記事は“企業ブランディングにおけるキャッチコピーの必要性”がテーマです。日本を代表するような有名企業のキャッチコピーに注目し、なぜその企業がそのキャッチコピーを採用しているのか?そのキャッチコピーがその企業にどんな影響を与えているのか?をコピーライター目線で考察することで、企業におけるキャッチコピーの必要性をお伝えできたらなと思っています。
お酢をはじめとする調味料や加工食品の製造販売を手がけるミツカン。1804年の創業から200年以上、いのちの源である食品を届けている会社です。そんなミツカンが「グループビジョンスローガン」として掲げるキャッチコピーがこちら。
「やがて、いのちに変わるもの。」
もし私がミツカンの社員なら、いま自分がつくっているものは、やがて誰かのいのちに変わっていくんだという責任と誇りを持って働けるだろうな。このキャッチコピーを見てそう思いました。例えばこれが「いのちの源をつくっている会社」という直接的な表現だとピンと来ないかもしれません。「いのちに変わるもの」と表現されることで自分にとって「命」がグッと身近な言葉に感じられ、背筋が伸びます。
社外向けの効果も絶大だと思います。
普段から「ミツカンは、いのちに変わるものを作ってくれているんだ!」と思うことはさすがにありませんが、パッケージやプロモーションを通じて何度もこの言葉を目にしているうちに“ミツカン=食品を丁寧につくっている会社”というイメージが染み付いていきます。そうやって染み付いたイメージは、お客様がさまざまな商品を見比べた上でどれを選ぶかの判断材料になります。まさに、ブランディングですね。
「やがて、いのちに変わるもの」が持つ力としてもう一点注目しているポイントがあります。それは“言葉の賞味期限”です。
「いのち」という言葉は時代が変わっても変わらず使われ続けます。何十年、何百年、何千年。地球上にいのちが存在している限りは。ということは、「やがて、いのちに変わるもの。」というキャッチコピーが古くなる可能性は極めて低いということです。ミツカンがまったく違う業態に変更しない限りその可能性はほとんどゼロに近い。200年以上続く老舗企業にふさわしいキャッチコピーであることが“賞味期限”の観点から見てもわかります。
企業が掲げるキャッチコピーは、その企業らしさを表すだけでも、本質的な魅力を言いあてるだけでもすばらしい力を発揮しますが、長いあいだ企業の指針であり続ける“賞味期限の長い言葉”であればなお素晴らしいということ。
ミツカングループが、「お客様に提供していく価値」の宣言です。
人のいのちの源である食品をつくっているという、誇りと責任。
「やがて、いのちに変わるもの。」は、そんな私たちの想いから生まれたことばです。
心に残る仕事。
歴史に残る仕事。
どちらも美しく、すばらしい言葉です。でも、どこかで聞いたことがあるからか、心が震えるほどの強い力があるか?と聞かれると返答に詰まってしまいます。そんな中、大手総合建設会社の大成建設が1992年にこんな採用キャッチコピーを打ち出しました。
「地図に残る仕事。」
〇〇に残る仕事。という言葉は世の中にあふれているにも関わらず、そのどれにも属さず、それでいて圧倒的な力を持つ壮大なキャッチコピーです。地図に残るということは、社会に不可欠な建物を建てているという誇りを持てるだけでなく、「この建物はじいちゃんが建てたんだよ」「この建物がママがつくったんだよ」と子供や孫に自慢できることでしょう。
「キツイ・キタナイ・キケン」
いわゆる3Kと言われていた建設業界は1992年当時から人材難に悩まされていたそう。そんななか、全国の地方新聞で「地図に残る仕事。」のキャンペーンが展開されるとまたたく間に大成建設へ求人応募が殺到。たった8文字が、会社の、業界の印象をガラリと変えた様は圧巻としかいいようがありません。
「地図に残る仕事。」が社員から出た言葉だというエピソードも非常に興味深いです。コピーライターが創り出したわけではなく、ある社員のインタビューで飛び出した言葉だそうです。社内の人が普段からなにげなく使っている言葉でも社外の人の心を動かす可能性があるということがこのエピソードから感じとることができますね。
トゥモローゲートはブランド提案の前に徹底的なヒアリングを行います。その中で出てきた情報からキャッチコピーを創るケースももちろんありますが、社長や社員から飛び出した言葉をそのままキャッチコピーに採用するケースも。中の人では気が付きにくい価値を見つけ出すこともブランディングにおいて非常に重要なプロセスです。
日本でもっとも有名な企業キャッチコピーといっても過言ではないでしょう。お菓子などの製造販売を行うロッテの「お口の恋人」。恋人のように寄り添い、やさしさや愛情を注ぐ食品を開発する、ロッテの事業内容や提供する価値を見事に表現した秀逸なキャッチコピーだとこの記事を書いていてあらためて感じました。
「お口の恋人」というメッセージには、「永遠の恋人」として知られる彼女のように、世界中の人々から愛される会社でありたいという願いが込められています。
引用:https://www.lotte.co.jp/corporate/about/philosophy/
働いている人の士気を上げる言葉にもなっているなと感じます。
“恋人と認められるようなクオリティの商品を開発しなければならない”という強い責任を働いている人は感じているはず。それに伴いとるべき行動や目指すべき場所が明確に想像できていることでしょう。お客様や求職者に与えるイメージだけでなく、働く人のモチベーションを上げ、結果として商品やサービスのクオリティを上げていく。「お口の恋人」にはそんな多角的なパワーがあると感じます。
余談ですが、アメやガムを食べたいときに「口がさみしい」という表現を使うことがありますよね。もしかすると「お口の恋人」はそんな表現に着想を得て生まれた言葉なのかもしれません。いや、逆に「お口の恋人」という言葉があったからこそ「口がさみしい」という表現が生まれたのかも…?
HRテクノロジー、メディア&ソリューション、人材派遣など。必要な情報を求める個人と企業が出会える場所を提供し、マッチングすることで双方の理想を実現するのがリクルートの事業の共通点です。そんなビジネスモデルを一言で表現したのがこちらのキャッチコピー。
「まだ、ここにない、出会い。」
「新しい出会い」「常識にない出会い」など、よく耳にする言葉と意味は同じです。そこを、「まだ、ここにない」という聞き慣れないワードをチョイスするだけで、直接的に表現するよりも「新しい」「常識にない」といったイメージを与えることができています。意味は同じでも表現が違うだけでイメージはこうも変わるんです。
たった1行、たった13文字ですが、何かあたらしいことがはじまるんじゃないか、これまでにない未来が待っているんじゃないかとワクワクする言葉です。外部の人間である私もそうですし、働いている人も同じことを感じているのではないでしょうか。“事業で新しい価値を提供してみせる!”と奮い立っているのでないでしょうか。
リクルートホールディングスは日本企業の時価総額ランキングTOP10に常に入る大企業であり、それでいて進化し続けている成長企業でもあります。そんな躍進を支えるひとつの要素が「まだ、ここにない、出会い。」というキャッチコピーであることは、あえて言うまでもないでしょう。
最後に紹介するのは、世界各国に展開している大手CDショップチェーン「タワーレコード」のキャッチコピー。みなさんも一度は聞いたことが、あるいは見たことがあるのではないでしょうか。
「NO MUSIC, NO LIFE.」
直訳すると「音楽なしでは生きていけない」
食事や睡眠といった生活に欠かせないことと音楽を同列に語ることで“音楽好きにとって音楽は欠かせないものなんだ”“それくらい熱を注ぐものなんだ”という音楽好きの共感を呼ぶキャッチコピーに仕上がっています。
ここでいう音楽好きは、お客様だけではないはずです。働いている人や、これから働きたいと思っている人に対してもパワーを与えるキャッチコピーだと感じます。働いている人は仕事に誇りを持てるでしょうし、就職活動中の人が”好きな音楽を仕事にしたい”と思ったときにタワーレコードの名前は間違いなく思い浮かぶはず。
キャッチコピーがインナーブランディングや採用ブランディングにも効果を発揮している、典型的な例ですね。
英語表記なのもいいなあと思いました。アメリカ発の企業なので当然と言えば当然ですが、もし「音楽なしでは生きていけない!」と日本語でストレートに表現されていたら「ちょっと言い過ぎじゃない?」と疑念を抱いてしまいそう。たとえ日本の店舗であっても英語で表現することで受け入れやすい言葉になっていると感じます。
トゥモローゲートでコピーライターとして働きはじめて2022年で2年目。
中小企業を中心にたくさんの企業のコピーライティングを担当させていただきました。それらの経験と、今回紹介した事例をふまえて考えると、企業ブランディングにおいてキャッチコピーは欠かせないものなんだということが改めてわかります。
企業の指針となるような言葉がバシっと決まっているからこそ、社長も、社員も、同じ方向をむいて走ることができるし、お客様や求職者に対しても自分たちの本質的な魅力を伝えることができるのです。逆に、指針となる言葉が決まっていないと、社内向けのブランディングも社外向けのブランディングもブレてしまいます。
トゥモローゲートはキャッチコピーをはじめとするデザインに加えて、ブランドにふさわしい行動を社員がとれているか、ふさわしい制度が整っているかなど、見せかけだけじゃない本質的なブランディングを提供する会社です。
ブランディングに関する悩みや疑問をかかえている方がいればこちらから問い合わせしてみてください。いいキャッチコピーを、いいブランドをご提案させていただきます。しれっと宣伝を入れたところで終わりにしたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。