こんにちは。トゥモローゲートの意匠制作部で映像チームのリーダーを任せていただいているクラと申します。
皆さんは「好きな映画やドラマ」を聞かれた時どうお答えになりますか。
20代を映像の仕事に捧げた私はおそらく一般の同年代よりも少しだけ映像コンテンツを意識して見てきました。
その中には小規模な体制での制作ながら多くの心を魅了し続ける作品もありました。もちろんその逆もありました。拡散方法やマーケティングが的を得たものでなかっただけで世に知られなかった名作も少なくありません。
人間の五感で最も優先順位が高いのは「視覚」次いで「聴覚」があげられます。
動きのあるビジュアルで「視覚」を楽しませBGMやSE(サウンドエフェクト)で「聴覚」を刺激する映像コンテンツはスマートフォンでどこでも映像を再生できる時代において「最強の表現手法」と言っても過言ではありません。
時代のトレンドをとらえた映像だけがコンテンツとして正しいわけでは決してありませんが、人の目と心に「届くこと」そして「行動を促す」映像が絶大な影響力を持ち多方面から重宝されることは紛れもない事実です。
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企業のブランディングを主な事業とする弊社トゥモローゲートもその映像コンテンツを通してクライアントの課題解決策をご提案させていただくことがあります。
その中のひとつが国内に複数拠点を構えるオフィスナビ株式会社様(以後「オフィスナビ」と記載)の採用動画。
「オフィスコンサルティング」という職種を皆さんはご存知でしょうか。
お客様のビジネスを深く理解することから始まるこの仕事は、オフィス移転計画の立案からレイアウトプランの作成、ひいては経営課題の解決提案までも担当し、長期にわたって顧客企業に寄り添い続ける仕事。
“オフィスと人をより良くつなぐ”を理念に掲げるオフィスナビが力を注ぐオフィスコンサルティングという仕事。知名度は決して高くはありませんが、知れば知るほどその意義が身にしみる素晴らしい仕事です。
そんなオフィスナビの採用動画に与えられた目的のひとつが「ターゲットとなる求職者にオフィスコンサルティングという仕事の魅力を伝え、オフィスナビの採用を成功させる」こと。
就活市場においてコンサルティングファームの人気は非常に高いです。大手総合商社やメガバンクなどを抑えて上位を独占するほどです。
そんな中でオフィスコンサルティングの魅力をしっかりと届け、差別化を実現し、採用を成功させるにはどうすればいいのか。成果というゴールに向かってオフィスナビと二人三脚で創った採用動画の制作の裏側を書いていきます。
ヒアリングと企画構想を重ねる中でオフィスナビで働くオフィスコンサルタントの方々の特筆すべき魅力が見えてきました。お客様に対する「熱さ」であり「寄り添う力」です。
コンサルティング業に求められる「論理的思考」や「問題解決推進力」はもちろんのこと、オフィスナビの社員には「お客様や仲間のために本気になれる」そんな特性があるということが分かってきました。
企業や経営者の特性、事業フェーズ、市場状況など数ある要素を考慮した上で最適なオフィスを探し、オフィス所有者(ビルオーナー)との関係を構築し、契約というゴールに向かっていくその道のりはとても長く険しいもの。
そのプロセスには当事者にしか分からない多くのバックストーリーがあります。ヒアリングでお伺いできたそのストーリーには、この記事では書き表せないほどの”濃度”と”人情”を感じました。と同時にこんな思いに至りました。
お客さまの最適解に向かって共に走り続けるその姿勢を“リアル”に伝えることが採用動画の目的だ。
その目的を果たすための最適な手段として、オフィスコンサルティングのリアルをドラマにする方針を定めました。
名ドラマには名脚本アリ。
脚本は車で言うエンジンのようなものであり、演出や編集というガソリンが投入されることによって映像のパフォーマンスは最大化されます。
この脚本を担当したのはトゥモローゲート映像ディレクターの山下です。彼に伺った脚本の裏側をまとめます。
オフィスコンサルティングの魅力はオフィスを仲介して終わりではないということ。お客様が何のためにオフィスを移転するのかの「目的」を達成するために、仲介から内装までを一貫して手がけることができるのが特徴。
長期にわたってお客様と寄り添う仕事だからこそ、オフィスナビで働く社員様は一人ひとりが「究極」と表現できるほどお客様想いであることがオフィスナビ不変の魅力です。
その魅力を感じさせるシーンをセリフやカットとして脚本に組み込むこと。また仕事におけるこだわりをテロップなど映像ならではの表現で伝えること。2つを成せれば採用動画の目的達成確率を上げられると考えました。
脚本作成におけるキーワードは「熱さ」と「洞察力」
後半に展開される「経営者に再提案するシーン」において、徹底的に突き詰めた「提案理由」を経営者へ臆さずぶつけていくシーンを撮影することで「熱さ」を表現。
その次に待ち受ける「ビルオーナーとの交渉シーン」では、なぜこのオフィスなのか?の「理由」はもちろんのこと、その会社が入居することによるビルオーナー側のメリットをセリフにすることで「洞察力」を表現しました。
そして、もう一つ。脚本のキーワードに設定したのは「挫折」です。
どんな仕事にも「挫折」はつきもの。オフィスコンサルティングも例に漏れず。そんな“リアル”を表現するために、動画冒頭で提案が通らない「挫折」のシーンを描きました。
挫折や失敗を繰り返しながらも確実に成長できる会社であることを伝えたい。成長過程で普段の生活では出会えないような人たちと出会えたり、普通ならできないような体験ができる仕事の魅力を伝えたい。
このような意図を込めて脚本を作り上げていきました。
作中では直接触れていませんが、本作の登場人物には細かなキャラクター情報が設定されています。その中でも重要な登場人物と、キーとなる情報をご紹介します。
主人公:高山ツナグ(25歳)
・仕事:オフィスナビ株式会社オフィスコンサルティング事業部
・見た目:第一印象が爽やかな好青年
・価値観:誰かの役に立ちたいと強く願っている
・長所:仕事に真っ直ぐで責任感が強い。誰かのためになることには全力で取り組める。
・その他:小学校から野球をはじめチームプレーの楽しさを知る。打順は2番か9番。
・本作を通して:自分の考えや行動に自信を持ち、どんな状況でも決断できるよう変化していく
経営者:島崎ナオ(28)オフィス移転をオフィスナビ株式会社に依頼
・仕事:仮想空間を取り扱うベンチャー企業「株式会社HEA(r)T」CEO
・見た目:スタイリッシュなイケメン
・価値観:何事において直感を信じる
・長所:決断が早い。ビジネスセンスが高くカリスマ性がある
・その他:会社経営に関して過去にトラウマがあり、社員と距離を置くようになる
・本作を通して:本心を打ち明けられる主人公に出会い、起業当初の明るく素直な雰囲気に変化する
仮想空間を事業としている「HEA(r)T社」は“インパクトのあるリアルなオフィス”を探しているという設定。難しい課題課題に挑むオフィスコンサルティング職には論理的な発想が求められることを伝える物語に沿った設定です。
作中で展開されるストーリーでは主人公と経営者の心情や考え方の変化が描かれます。
特に、中盤に展開される経営者にとって本当に「必要なもの」と「必要とされているもの」を的確に明示する主人公のプレゼンシーンは大きな見どころのひとつ。そこには徹底的にお客様に寄り添うというオフィスナビの企業理念が詰め込まれています。
複数のロケ地による撮影が行われた本作ですが、主人公が提案内容を模索するシーンでは実際にオフィスナビ大阪オフィスを使用。より現実の即した空気を感じ取れるシーンとなっています。
このドラマが就活生へ向けた「採用動画」であることを考えると「実際に自分が働くことになるかもしれないオフィス」や「どんな志をもつ先輩社員がいるのか」をイメージできる“招待状”的な役割も果たせるかもしれないと思っています。
今回のプロジェクトで何より追求したのはドラマとしてのクオリティーです。当然ながら、安易な考えで物語を表現することなんてできません。中でも絶対に欠かせない要素が2つ。「演出」と「映像の質感」です。
オフィスナビで働く方々の仕事に対する「熱さ」を訴求するにあたり、主人公にどのような表現をしてもらうのかが非常に重要でした。本作の主人公の特徴は、オフィスコンサルティングに欠かせない論理的な思考力と周りから慕われる実直な姿勢を持ち合わせていること。
経営者とビルオーナーから大切な財産を任せられる重責から逃げることなく、相手への敬意と真っ直ぐな思いをブラさず、成果へ邁進する。まさにオフィスナビ社員のような主人公の人格を伝えるために、あらゆるシーンにそのエッセンスを散りばめていきました。
誇張した演出はドラマのバラエティー性を豊かにしますが、目的を見失った演出は映像における“品性”のようなものを欠如させます。本作の撮影現場ではその絶妙な間を突くことを目指しました。
“全力で顧客の期待に応え思いにコミットするオフィスコンサルティングの魅力伝える”という本質のもと、バラエティー性と品性を両立させた主人公役の演技は、世間で評価されている著名な作品にも劣らない仕上がりだと思っています。
演技だけでは表現しきれない技術へのこだわりが詰まった動画でもあります。例えば、バックグラウンドで大きな役割を果たしているのが“照明(ライティング)”です。
ビルオーナーへの交渉シーンでは主人公の背景にわずかな光を差し込ませています。
平面だけに留まらない照明設計は映像の質感を大きく左右します。クリアで人物をたたせるライティングは照明技師のこだわりが光った証拠。
このこだわりによって、オフィスナビの社員が持つ「熱さ」や「寄り添う力」をより強く表現することができたと思っています。
すこしマニアックな話をさせてください。
撮影に使用したカメラは『SONY FX6』。XAVC-I QFHD 4:2:2 10bitで内部収録できる本機は人物のディテールと映像美を実現するためのセレクトです。
コンパクトかつ高品質な画を実現できる『G Masterレンズ』との調和性は、オフィスナビの仕事の魅力を伝える本作においてベストな選択だったと思います。
また、ポストプロダクションで柔軟な色彩表現を実現するために収録形式はCine EL/S-Log3を選択。
全てのカットの色彩表現(カラーグレーディング)でもこだわりが詰め込まれた本作において、ラストカットで”やや寒色で表した表現”を入れ込んだのは、『「主人公への信頼」と「一年後の未来」を演出する』というプリプロダクション〜ポストプロダクションまで一貫したコンテンツ完成イメージの調和の結晶です。
時系列や感情の変化を「撮影技術」「編集技術」での表現したのが“本ドラマ”。
安易な考えで物語を表現することはできない。
このドラマにはクライアントの課題解決を測る脚本設計や、出演者そして技術者の細かなこだわりを節々に詰め込みました。この記事で紹介しきれなかったものまで含めるとその数は膨大だったと自覚しています。
クライアントの課題解決において映像の果たす役割は小さなものではありません。それはオフィスナビの採用動画においても普遍の事実です。
細部までこだわりを追求することで「ターゲットの目と心に“届く”映像」にし「行動を促す」ことができれば課題解決に直結する作品を作ることさえできると思っています。
紹介したオフィスナビ株式会社の採用動画はリリースされたのが2022年の8月でこのブログを書いているのが2022年の10月。
どれだけの成果を創出したのか?の詳細はまだ計測できていませんが、最後に、オフィスナビの金本代表より、動画のご感想やリリース後の周囲の反応などをお伺いしました。
ー動画を初めて見た時のご感想を教えてください
「完全なドラマだと思いました。同時に、これなら求職者の人たちに我々の思いや仕事の内容ややり甲斐をより伝えられるのではと感じました。」
ー動画に対する社内的なご反響(社員様)
「“家族にも見せたい”と言われたのが嬉しかったです。ほかにも“普通に感動した”“ここまでやる会社無いですよね”などポジティブな反響が多かったですね。」
ー動画に対する社外的なご反響(お客様、知人)
「求職者の人は見てくれてるようで、応募のきっかけになったと話してくれた人もいました。」
(おわり)