中小企業がオウンドメディアで成功するために大切な3つのこと

中小企業がオウンドメディア運営で成功するために大切な3つのこと

オウンドメディアを運用する企業は年々増えています。

背景の1つにあるのは新型コロナウイルスの流行です。営業活動が限定されたことで、問い合わせを狙う「プル型営業」を強化する動きが盛んになりました。そのうちの施策としてオウンドメディアに注目が集まっているのです。

オウンドメディア運用で期待できる成果は多岐にわたります。「企業認知の向上」や「ブランドイメージの浸透」。そこに日もづく「営業工数」や「採用広告費」の削減。さらにその先にある「売上」や「採用人数」などです。

それぞれの成果を目指し、多くの企業が発信を続けている“オウンドメディア戦国時代”の様相を呈しています(一般的なオウンドメディアの定義にはSNSやプレスリリースなども含まれますが、この記事ではブログ運営に特化して書いていきます)。

しかし、「記事をたくさん書けば確実に成果が上がる」なんて簡単な話ではありません。継続的に運用するには適切な知識と膨大なリソースが必要です。誰が書くのか。内容のチェックは誰がするのか。戦略立案や進行管理は誰が担うのか。僕たちトゥモローゲートのような中小企業であれば特に、半端な覚悟で成功できるほど甘くありません。

今回は、そんなオウンドメディア運営を3年以上継続し、サイト全体のアクセス数を約4倍、問い合わせを約3倍にアップさせる過程で学んだ「中小企業がオウンドメディア運営を成功させるために押さえるべき3つのポイント」と「オウンドメディア運営で生まれた成果」そして「感じている課題」について書いていきます。

コンテンツのつくり方やSNSでの拡散戦略といった手段的な話ではなく、オウンドメディアで求める成果をつかみとるために中小企業が持つべき心構えや注意点を中心に解説します。特に、豊富な資金やリソースは割けない中で、通常業務と並行しながらオウンドメディアに挑戦しようとしている企業様は必見の内容になります。

大切なこと①「1年間は成果が期待できない」という前提を持つ

会社の新しいチャレンジには目標設定が必要です。オウンドメディアの成功にも目標設定は欠かせません。その中で気をつけないといけないことがあります。それは「最初の1年間は成果が期待できない」という前提で目標設定することです。ここで言う成果とは、売上や採用人数など業績に直結する指標を指します。

なぜ、1年間も期待できないのか。

オウンドメディアの役割は、自社の考え、スタンス、事業、実績、ノウハウなどを発信することで、事業・採用・広報それぞれのターゲットに認知を広げ、理解を深めてもらうこと。それらは成果には直結はしません。成果までには問い合わせや商談、面談、そして検討期間やクロージングなどをクリアする必要があるからです。

つまり、オウンドメディアで担える範囲は限定的ということです。どれだけ質の高い記事を書いても、多くの人に拡散されても、サイトの情報が不足していたら問い合わせには繋がりません。問い合わせに繋がっても商談や面談で離脱される可能性は大いにあります。そもそもニーズが合っていないという根本的なケースもあるでしょう。

成果までにはさまざまな障壁があります。オウンドメディアはそれらを乗り越える1つきっかけでしかありません。そこから成果に至るには短くても3ヶ月、長ければ1年以上の期間を要します。例外はあっても偶然であるケースがほとんどで、再現性は限りなく低いと言えます。

XやyoutubeといったSNSなどのツールをうまく駆使すれば話は別。歯車が噛み合えば、1つの発信が何十万人、何百万人に知れ渡り、中には即問い合わせ・即エントリーが発生する可能性も多いにあります。しかしオウンドメディア単体で考えた場合は、「1年間は成果が期待できない」くらいの前提を持つことが必要になってきます。

これがないと、社内で「本当に意味があるの?」と疑問視されるケースも考えられます。そうなると精神的にも数値的にも継続が難しくなります。オウンドメディアの運営チームはもちろん、それ以外のメンバーも含めてオウンドメディは“長期戦”であるという認識を持ちましょう。

僕たちトゥモローゲートは当初からこの考えを持っていましたし、メンバーの理解も得られていました。それでも、数ヶ月運用を続けても目に見える成果が出ないと、運営側としては申し訳なさや焦りを感じてしまい、結果的に目的とはズレた施策やKPIに直結しないコンテンツを急いで配信してしまうことも正直ありました。

大切なこと②KPIを「問い合わせ数」に設定しないこと

①をさらに具体的にした内容です。オウンドメディアを成果につなげるにはKPI(重要業績評価指標)の設定が必要不可欠ですが、KPIを設定する際に気をつけなければならないことがあります。それは「問い合わせ数」を設定することです。“サイト上の取り組みなんだから、問い合わせを目指すのは当たり前だろう”という考えは要注意です。

問い合わせは、オウンドメディアだけでは担いきれません。前述した通り、問い合わせに至るまでにはさまざまな障壁があります。どれだけたくさんのアクセスを集めても、コーポレートサイト内の情報が充実していなければ問い合わせには至りません。他にも複数の要因が絡まり合って問い合わせ数はカウントされていきます。

なのにオウンドメディアだけで問い合わせ数を追いかけてしまうと、しかるべきアクションをとっているのに成果に繋がらないという壁にぶつかり、オウンドメディア運営を続けるモチベーションが下がります。モチベーションが下がると戦略にブレが生じ、成果からさらに遠ざかってしまいます。

ではどのようなKPIを設定すればいいのか。下記のような項目が考えられます。

・ブログ関連ページのページビュー
・ブログ関連ページから他ページへの遷移数(率)
・選定したキーワードにおけるSEO順位

オウンドメディアの記事だけで達成できる指標を設定しましょう。ページビュー、他ページへの遷移数、検索順位はどれも、質の高い記事を配信できれば達成可能です(検索順位は他のページの影響もありますが、記事単体でも検索1位を獲得することはできます)。

紹介した3つはあくまで参考であり、そのとき会社が目標としている業績目標から逆算し、オウンドメディアで担うべき数字はどこなのか?を見極め、KPIに設定しましょう。その際に基準になるのが繰り返すように「オウンドメディアだけで達成できるかどうか」です。問い合わせ数を設定しては、絶対にいけません。

僕たちトゥモローゲートには、オウンドメディアだけでなく、コーポレートサイト全体を運用するチームや、X・youtubeなどを運用するSNSチームがいます。全チーム統一のKPIに「問い合わせ数」を設置し、その中でブログチームが担える数値、SNSチームが担える数値を整理してそれぞれのKPIに設定しています。

大切なこと③最初から「みんな」で書こうとしないこと

3つ目は「誰が書くのか問題」です。ここで大切なのは、最初から「みんな」で書こうとしないことです。

検索で上位表示されたり、拡散される記事を書くには、専門的なスキルや知見が必要です。文章に特化した職種や、経験自体が学びになる経営者や経営層など一部に限られます。そういった方々が社内にどれだけいるでしょうか。“どの社員が書いても質の高い記事を継続的に配信できる!”と答えられる会社は一部ではないでしょうか。

もし仮にそういった人材がいる会社でも、他の業務と並行しながらの継続は難しいでしょう。僕たちのような中小企業やベンチャー企業はリソースが足りないケースが多いです。オウンドメディア運営だけを専属で行うチームを作るのは簡単ではありません。どうしても通常業務と並行しながら運営することになります。

そのためまずは、質の高い記事を書けるメンバーを選抜し、配信頻度が低くなったとしても継続的に記事を配信できる体制を整えることが先決です。体制構築には時間がかかりますが、焦って不十分な記事を配信しても成果には繋がりません。週1本でも、月1本でもいいから体制を整える。そのあと執筆者を増やしていきましょう。

僕たちも、はじめは20人程度のメンバーがそれぞれ企画を考え、執筆するという体制でスタートしました。トゥモローゲートには、やる!と決めたら全力で取り組むメンバーばかりです。そのため週3本配信というハイペースを守れていました。しかし、すべての記事の制度を限界まで高められていたかと言われると、そうではありませんでした。

現状は僕と、代表の西崎、そして役員や広報メンバーを中心に1つ1つ丁寧に記事を執筆している状況です。本当はもっと早くこの体制に切り替え、配信体制を整え、質を担保したまま量を増やしていくべきでしたが、まだそのフェーズには至っていません。当面は選抜メンバーで回しながら体制を構築したのち、執筆者の数を増やしていきます。

体制が整いきっていないのに「みんな」で書くことは、多様な視点での記事を配信できるメリットもある一方、記事の質やリソースの面で壁にぶつかる可能性が高いです。そのスタイルで最初から成功するには不可能とまでは言いませんが、かなりハードルは高いということを認識するべきです。

【実績紹介】トゥモローゲートのブランディング実績

オウンドメディアを3年間運用して生まれた成果

目標設定や「誰が書くのか問題」と向き合いながら、2021年3月からおよそ3年間オウンドメディア運用を続けてきました。正直、当初から描いていた理想には全然まだ到達できていません。アクセス数や検索順位などの目標もまだ達成できていません。そんな中でも業績につながった成果がいくつかありますので、紹介したいと思います。

生まれた成果①サイト全体のアクセス数が増えた(直接的な成果)

▼オウンドメディア運用前と運用後のアクセス数比較(コーポレートサイト全体)
・運用前:2018年度〜2020年度の3年間 → 計1,107,032PV
・運用後:2021年度〜2023年度の3年間 → 計3,912,929PV
※コーポレートサイト全体の数字

運用前と比べておよそ4倍近くのページビューを集めるサイトに成長しました。オウンドメディアとは別でSNSなどの広報戦略をやっているのと、イベントや実績を通して会社自体の認知も上がっているため、オウンドメディアだけの成果ではありません。それでも大きな影響を与えていることは間違いありません。

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生まれた成果②問い合わせ数やエントリー数が増えた(間接的な成果)

増えたのはページビュー数だけではありません。問い合わせや採用エントリーといったコンバージョンも順調に増えていきました。他の要素も絡み合った関節的な成果ではありますが、こんな感じ。

▼オウンドメディア運用前から現在までの問い合わせ数推移(コーポレートサイト)
・2020年度(運用前):361件
・2021年度(運用1年目):577件
・2022年度(2年目):933件
・2023年度(3年目):1,125件

「アクセス数」と「指定キーワードでの検索順位」を主要KPIに設定し、それに沿った記事をこれまでのべ284本配信してきた結果です。アクセス数だけを追いかけていたら、問い合わせはこれだけ増えなかったかもしれません。逆に検索順位だけを追いかけていたら、ここまでアクセス数は伸びなかったでしょう。企業全体の目的から逆算したKPIの設定と、KPIに沿ったアクションを徹底することが重要だということが見てとれるかなと思います。

生まれた成果③営業効率の向上&生産性の向上

アクセス数や問い合わせ数が増えたことにより、生産性向上にもつながりました。

オウンドメディア運営をはじめる前の2021年度までは、8割以上の仕事がDM、テレアポ等を使ったプッシュ型の営業がきっかけ。顧客開拓に多くの時間を割いていました。それが、オウンドメディア運用3年目だった2023年度は、新規契約案件の約7割が問い合わせ等のプル型営業がきっかけでした。これまで顧客開拓に割いていたリソースを、サービス品質の向上や教育、採用などに割くことができるようになったのです。

オウンドメディアをきっかけにサイト全体のアクセス数が上がると、事業紹介や実績紹介、採用情報など他の情報に触れる人の数も必然的に増えます。その中から問い合わせくださり仕事につながると、売り上げや採用人数といった直接的な効果に加え、長期的な成果につながっていきます。間接的な効果も期待できるということです。

生まれた成果④採用の質があがった

オウンドメディアの記事をきっかけにトゥモローゲートを知り、入社してくれたメンバーが増えてきました。オウンドメディアを最初は知らなかったけど、選考過程で記事を読んで会社の理解を深め、選考に活かし、入社して活躍してくれているメンバーも増えてきています。

オウンドメディアにはSNSやプレスリリース以上に濃い情報を書くことができます。その理由はシンプルで、文字数に制限がないからです。伝えたいことを余すことなく伝えられるため、ミスマッチの少ない、お互いにとってwin-winな採用の実現が期待できます。

もちろん配信する記事の質によって効果は変わります。むやみやたらに記事を量産するのではなく、自社が欲しい人物像を定義し、求めている情報を見極めて発信しましょう。トゥモローゲートでは仕事内容や社員の人柄に加え、携わったプロジェクトの背景や成果、社風や文化などを幅広く発信することで、採用に繋げている現状があります。

オウンドメディアを3年間運営して浮き彫りになった課題

成功するために大切なことや成果について書いてきましたが、現状が満足いく状態かと言われると、全くそうではありません。目標数値には届いていないし、目標達成のために出来ることはまだまだあります。最後はそんな、オウンドメディア運営における課題をお伝えして終わろうと思います。

課題①チーム体制の構築ができていない

継続的な成果を生み出すベストなチーム体制はまだ構築できていません。

前述した通り、僕と代表の西崎をはじめとする一部のメンバーで回している状況です。それ以外のメンバーたちも、何かしらのプロフェッショナルです。営業、企画、デザイン、人事…それぞれの強みを活かした記事の企画から執筆サポートまでできれば、事業・採用ともに多くの反響を呼ぶ記事を量産できるはずです。

このチーム構築の壁を突破できれば、今まで以上に幅広い視点から質の高い記事を配信でき、ページビュー数や問い合わせといったKPIに成果が波及していくはずです。これまでにないオモシロイ仕事が舞い込んだり、今まで出会えなかったような人が仲間になってくれたりと、可能性は無限大なのです。

通常業務とのバランスをとりながら、しっかりとリソースを確保し、コツコツ体制を構築する。最初は多少無理をしてでも仕組みを整える。運営側がもっともっとコミットすることが、課題解決の糸口になります。

課題②ブランドイメージと記事のバランスに苦戦している

オウンドメディアで配信される記事は、会社の公式発表です。

配信された知識、スキル、考え方、スタンスは、執筆者が誰であれ「その会社の発言」として見られます。SEOで上位表示されても、SNSで拡散されても、公式発表としてふさわしくない内容を配信してしまうとブランドイメージの棄損につながり、ひいては会社の損失につながっていきます。

特に、僕たちトゥモローゲートはブランディングの会社で、当然ながら自社のブランドも大切にしています。いくら「ブランディング」というキーワードで上位表示される見込みがあっても、自社の考えと違ったり、自社のブランドが毀損する可能性が少しでもある内容なら絶対に配信しません。

このバランスをとるのが、なかなか難しい。世の中で見られる情報と、自社が伝えたい情報は、必ずしも同じではないからです。交わることがなさそうなこの2つを交わらせる。絶妙な企画力や執筆力が求められます。

「たくさんの人に見られれば何でもいい」という考えなら、世間を騒がせている話題に過激な提言をしたり、タブーに言及すれば目標は達成できるでしょう。しかし、それをやったところで何が残るでしょうか。成果に繋がらないアクセス数と、中長期的な損失しか残りません。

これは極端な例ですが、ブランドイメージと成果を両立するにはこの矛盾を突破する記事を作成しなければなりません。純粋に企画力をもっと上げなければいけませんし、自社に対する正しい理解をもっと深めなければいけない。この点僕たちはまだまだパワーアップできる余地があると感じています。

【最後に】中小企業がオウンドメディア運営を成功させるために最も大切なこと

最後に、成功させるために最も大切だと思うことを書きます。

それは、「責任者の熱量」です。

どれだけ精密なKPIを立てても、質の高い記事を配信しても、PDCAを回しながら継続する熱量がなければ成果は出ません。出たとしても一時的なもので終わってしまいます。成果が出ない期間が続いても、周りからの視線が冷たく感じても、とにかく継続できる。そのレベルの熱量があることが、成功に必要な大前提です。

最後は根性論になってしまいましたが、それまでに書いたノウハウや生まれた成果を参考に、オウンドメディア運営に役立てて欲しいなと思います。「オウンドメディア運営について相談したい」という方がもしいれば、最後に問い合わせフォームを貼っておきますのでぜひご検討ください。最後まで読んでいただきありがとうございました!

【問い合わせ】オウンドメディア運営について相談する

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