企業ブランディングの成果を高めるブランド動画事例集

企業のブランディングやマーケティングにおいて、動画は欠かせないツールになりつつあります。企業ブランディングをメイン事業とする僕たちトゥモローゲートも、動画制作のご依頼は年々増え続けています。

数十秒、数分という短時間で、自社の魅力やメッセージを直感的に伝えることができるのは、動画ならではの強みです。特に、短尺動画を観る習慣のある若い世代には、動画でのコミュニケーションが必須と言っていいでしょう。

ただし、やみくもに動画をつくるだけでは、求める成果は得られません。

自社の魅力や伝えたいメッセージの本質を掘り起こし、正確に分析したターゲットへ、ブランドが正確に伝わる動画をつくることが大切です。届けた相手にどう感じてほしいのか?どんな行動をとってほしいのか?まで想定し、戦略を練ることも欠かせません。そうしてはじめて、ブランディングの成果を高める動画をつくることができます。

今回は、ターゲットにブランドを伝え、ファンになってもらうことまで想定してつくられたであろう、ブランディングにおける動画事例を紹介します。自社のブランドを強化したい経営者の方々。クライアントのブランド動画制作を請け負っているクリエイターの方々。参考になるよう書いていきますので、最後までお付き合いください。

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企業ブランディング動画事例①『銀河高原ビールWEBムービー「心の一人旅」』〜競合商品との差別化を図る〜

ビールの広告を見ない日はない、と言っても過言ではありません。テレビCM、屋外広告、ネット広告などで、キンキンに冷えたビールを気持ちよさそうに飲む俳優さんの姿を、毎日のように見かけますよね。みなさん、好きなビールのCMはありますか?(僕が好きなのは“生きれば生きるほど、生ビールはうまい!のあれです”)

ビールの広告は、仕事が終わってビールを飲むまでのワクワクできる時間や、一口目を飲み干した後の爽快感、ビールを飲む場所で生まれるコミュニケーションなど、ビールをとりまく幸せを切り取り、視聴者に「飲みたい」と思わせる力があります。そんな中、こちらで紹介する『銀河高原ビール』のブランド動画は、少し方向性が違います。

銀河高原ビールを飲んだ主人公が、ココロ満たされ、前向きな人生を歩んでいく様子が“影絵”で表現されているWEBムービーです。俳優を起用するわけでも、高度なCGを用いるわけでもない。“影絵“で一貫したクリエイティブ。

仕事でクタクタになった主人公。
帰宅して冷蔵庫のビールを取り出す。
ひとつ注いで口に入れると開放的な世界が広がっていく。
次第に主人公の表情や姿勢がポジティブに変わっていく。

時間は約2分半。ストーリー形式の動画としては長いわけではありません。にもかかわらず、見終わった頃には、『銀河高原ビール』で手にできる快感や幸せを、感覚的に理解できる内容となっています。

「みんなで楽しむビール」から「一人でも楽しめるビール」へ

『銀河高原ビール』には、「自分と向きあい、こころを満たすひと時を」という想いが込められています(ブランドサイト参考)。この動画のタイトル『心の一人旅』も、ここからきているのでしょう。

ビールの広告といえば、宴会や家族団欒が描かれることが多い中、『銀河高原ビール』は“1人時間”に着目しています。これは、ブランドのターゲットを明確にした結果であり、競合製品との差別化をはかった結果だと分析します。

企業がブランディングをする際、必ず競合調査や市場分析を行います。そこで大切なのは分析結果そのものではなく、分析結果をどう活用するかです。競合他社がこうだからこうしよう!では独自のブランドは築けません。逆に、競合他社がこうだから自社は逆のことをしよう!でもダメ。

自社だけの魅力は何なのか。ターゲットは何を求めているのか。徹底的に掘り下げた先にある自社だけの価値を掘り起こし、アウトプットに落とし込むことが大切です。

『銀河高原ビール』は“1人でも楽しめるビール”という価値を掘り起こしたことで、独自のブランドイメージを構築しました。2020年に現在のブランドロゴ、パッケージデザインに大幅リニューアル。それ以来、ブランドイメージに沿った様々な施策を打ってきました。

ブランドリニューアル後1年間の出荷量は前年比14%増を記録するなど、定量的な成果にもつなげています。今回紹介した動画がその一翼を担ったということです。

企業ブランディング動画事例②『関西電気保安協会「相方が関西電気保安協会になってしまった男」』〜地元に愛される企業へ〜

思わず笑ってしまうCM。その代表格である関西電気保安協会のCM。そんな同社が2023に公開したWEBムービー『相方が関西電気保安協会になってしまった男』を紹介します。お笑いコンビ『ダブルヒガシ』の片方が、関西電気保安協会になってしまうという、ぶっ飛んでいるようで実に同社らしい作品です。

このCMから学べるブランディングのノウハウは2つ。

①企業のキャラクターを正確にとらえる
②ぶっ飛んだ企画でもコアメッセージはしっかり伝える

1つずつ解説してみます。

企業のキャラクターを正確にとらえる

企業ブランディングを成功させるために大切なのは、その企業の“キャラクター”に沿った打ち出しをすることです。具体的には、企業に対してユーザーが抱いているイメージと、ブランディングとして発信する情報や取り組みの実態をマッチさせる発信をすることです。

例えば、子供から大人まで、腹を抱えて笑ってしまう、お笑い芸人を起用したCMがあるとしましょう。SNSでまたたく間に拡散され、総視聴回数は1000万回を突破。テレビや新聞に取り上げられるほど話題になりました。しかし、広告主である企業が、大切な人への特別な贈り物を製造販売している企業だった場合、どうでしょう。

購買に繋がらないどころか、昔から製品を愛しているファンに「〇〇らしくない」とガッカリされてしまい、ついには「特別な贈り物として購入するのが恥ずかしくなった」と思われてしまう。そんな未来も十分に想像できますよね。これが、企業のキャラクターを正確に捉えなかったゆえに起きる、ミスブランディングの極端な例です。

大切な人への、特別な贈り物。この“キャラクター”に沿ったシチュエーション・企画・表現がされたCMであれば、たとえ爆発的に拡散されなかったとしても、昔ながらのファンはさらに愛を深めてくれ、新規ファンの獲得〜継続まで見込めます。キャラクターを捉えるか否かで、結果は大きく変わってくるのです。

その点、関西電気保安協会のCMは、全てのシリーズで企業のキャラクターが一貫して表現されています。テレビCMであろうが、WEBCMであろうが、昔の作品であろうが、最新作であろうが「思わず笑ってしまう」アウトプットを続けています。だからこそ、関西圏で知らない人はいない、愛される企業の立ち位置を確立したのだと思います。

ぶっ飛んだ企画でもコアメッセージはしっかり伝える

関西電気保安協会のCMは、ただ笑いを誘う内容ではありません。

よく見ていくと、コミカルなシーンにのせて、事業内容や実績、スタンスが絶妙に表現されています。これも、ブランディングで成果をあげるために重要なことの1つです。企業のキャラクターを正確に捉えた、心を動かす秀逸な企画であったとしても、広告主が本当に伝えたいことが伝わらなければ成果にはつながりません。

「電気保安協会」という、日常生活では意識することのない存在を、コミカルな広告表現で身近に感じてもらう。ユーザーとの距離を詰めたあと、本当に伝えたい事業内容やスタンスを伝える。まさにお手本のような構成です。

一般消費者に直接サービスを届けるBtoC企業とは違い、BtoB企業はその業界の人でない限り、ほとんど誰にも知られていないことが多いです。業界内での知名度さえあれば、既存事業はうまくいくかもしれません。しかし、未来を支える人材の採用や、BtoC事業に参入した時は、一般消費者への認知がなければうまくいかないと思います。

関西電気保安協会は、その地域柄“笑い”と“自社”を掛け算した広告を、継続的に発信してきました。だからこそ、関西圏で不動の知名度や、ブランドイメージの獲得に成功したのだと思います。

企業ブランディング動画事例③『M-1グランプリ2022 × ウルフルズ「暴れだすV」』〜業界ごと変える豪快なブランディング〜

僕は、お笑い=カッコいいという価値観は、M-1グランプリのプロモーションが築き上げたと思っています。

特に、開催休止期間を経て再開された2015年大会以降、大会前に発表されるプロモーションムービーのクオリティはぐんぐん上がっていった印象があります。youtubeの再生回数はもれなく100万回超え。コメント欄やネットの反応には、大会本番と同じくらいプロモーションムービーを待ち望んでいる人もいることがわかります。

動画の内容を知る

お笑いの歴史を調べてみると、お笑い=カッコいいどころか、お笑い=道をそれた人がやるものと思われていたことが分かってきます。現在30歳の私でさえ、子供の頃イタズラがバレた時には「アホなことしてたら吉本入れるぞ」と冗談まじりに言われていました。昭和から平成にかけてのお笑いに対する価値観が垣間見えますよね。

一方でこの動画は、まるでアスリートのドキュメンタリーのよう。

「アホなことしてたら吉本入れるぞ」とは真逆のイメージですよね。

2023年大会では、慶應大学出身のコンビ『令和ロマン』がチャンピオンになるなど、お笑いのイメージだけでなく、実態も変わりつつあります。1つの大会のプロモーションが、お笑い芸人という職業のイメージや実態にまで影響を与えている。これ以上ないブランディング事例だと感じています。

この事例から学べるブランディングの真髄。それは、ブランディングには、商品や企業のイメージはもちろん、業界のイメージすら変えるポテンシャルがあるということです。そのために重要なポイントは大きく2つ。

①事実を企画の原点にすること
②しつこく発信し続けること

事実を企画の原点にすること

お笑い=カッコいいイメージを浸透させられたのは、事実としてお笑い芸人がカッコいいからです。実態とかけ離れた誇張表現ではないのです。動画わずか4分ですが、名だたる漫才コンビが苦悩する様子、喜びを爆発させる姿、涙する表情が捉えられています。大人が人生をかけた勝負に挑む姿には、高校野球にも似た感動があります。

事実を企画の原点にするとはこういうことです。

ブランドの「事実」から魅力を抽出し、ターゲットに最もささるカタチで発信するのがブランディングです。逆に、嘘や誇張表現ではいけません。小手先の発信で得られる効果には継続性はないのです。むしろ、「言っていることと実態が違う」とガッカリされ、逆効果につながってしまう可能性も大いにあります。

M-1グランプリのプロモーションムービーから学ぶべきはここ。本当にカッコいい一面がある。なのにまだ知られていない。そこを掘り起こしたのが、大会の価値そしてお笑いのイメージまで変える爆発的な成果につながったのです。

しつこく発信し続けること

このシリーズが単発で終わっていたら、現在のようなブランドイメージは築けていなかったと思います。

毎年恒例のイベントに合わせて、毎年必ず配信する。数年にわたって続けることで、少しずつM-1のイメージそしてお笑い自体のイメージが変わっていった印象があります。ブランディングとは、一朝一夕でなし得るものではない。しつこく継続して初めて得られるものだということを、改めて実感できる事例でした。

現時点で見えている成果は、お笑いのイメージを変えたという点ですが、このイメージに魅力を感じた若い人材がお笑い業界に流入すれば、お笑い産業自体が今まで以上に盛り上がっていく未来も考えられます(もしかしたら、その流れはもう生まれているかもしれません)。

優れたブランディングには、業界ごと変えていく力がある。ブランディングが持つ無限の可能性を痛感しますね。

企業ブランディング動画事例④『こしの湯グループ採用動画「入浴構想」』〜スーツでお風呂に入る社長〜

最後は僕たちトゥモローゲートの事例を紹介したいと思います。福井県を中心に、コンセプト型の温浴施設を展開する会社『越のゆグループ』の、採用強化を目的としたブランド動画です。

温浴業界の採用事情は、決して順調ではありません。特に、都心から離れた地方となると、若い戦力を採用するのは一苦労。自社の存在を知ってもらうところから始めなければいけません。そこで企画したのがこちらの動画でした。

採用目標を射止めた採用ブランディング

社長本人が、スーツ姿でお風呂に入っている様子。
若手社員からの奇抜すぎる提案にも、本気で向き合っている様子。

同社の考え方や方針、福利厚生などを、コミカルに落とし込んでショートドラマ化。ただコミカルなだけではなく、伝えたい情報やメッセージをしっかりと伝える目的に沿って、制作を進めていきました。

大元のコンセプトは、『新浴構想(にゅーよーくこうそう)』です。

温浴業界は変わっていかないといけない。
変わらなければ、若い人材に選ばれることなんてできない。
そのためにまずは新しい入浴のカタチを提唱したい。

代表の想いをカタチにしたコンセプトです。そのコンセプトの表現の1つとして、採用動画を制作したのでした。

採用動画に加え、サイトや風呂桶、SNS採用企画などを実施した結果、都心の学生からもエントリーが集まり、入社に至るという成果もあげられました。プロジェクト開始時に立てた採用目標もクリアすることができました。

「認知してもらう」ための“お風呂スーツ社長”

ブランディングのファーストステップとして、「まず知ってもらう」があります。どれだけ魅力的な事業があっても、人材がいても、知られていなければ成果は生まれません。今回の事例のように、地方・不人気業界というハンディキャップがあるケースはなおさら。そのための最適な戦術が、“スーツでお風呂に入る社長”だったのです。

ただ目立つことをしよう!という軽いものではありません。『新浴構想(にゅーよーくこうそう)』のコンセプトに沿って、今までにない取り組みをしていく企業であることを伝える手段として、選択した結果です。

認知を広げるための戦略は、扱い方を間違えれば逆効果に繋がります。

場合によっては炎上し、マイナス効果を被る可能性すらあります。そうならないために大切なのは、企業がもつ「事実」や「信念」に沿ったカタチで企画を練ること。ここさえ押さえておけば、意図しないカタチで炎上することはありません。もし、批判的な意見が集まったとしても気にする必要はなく、むしろ濃いファン獲得が期待できます。

トゥモローゲートのブランディング動画実績を詳しく見る

ブランディングの目的や用途から企画することが大切

商品の認知を広げる動画、企業のイメージを伝える動画、採用希望者に魅力を届ける動画。ブランディングの動画といっても、目的はさまざまです。そんな中で大切なのは、ブランディングの目的から逆算して企画し、動画をつくりあげていくこと。「なんとなくカッコいい動画をつくる」では、期待する効果は見込めません。

このブログで紹介した動画はどれも、内容と背景を少し知るだけで、企業側の目的が見えるものばかり。これからリリースされるブランディングの動画に対しても、「目的は何なのか?」の視点で見ることで、ただの「視聴」から「ブランディングの勉強」に変えることができるかも。ぜひ参考にしてみてください。

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