経営理念の重要性や注目度は、年々高まっていると言われています。
自社の利益だけでなく、社会的責任も求められるようになったこと。商品やサービスの機能面に加え、背景にあるストーリーや哲学も重要な購入基準になっていること。社員の働くモチベーションや会社へのエンゲージメントを高める動きが盛んになっていること。理由として、このようなものが挙げられます。
経営理念とはあまりにも大きい概念であることから、その定義や用途は企業や人によってバラバラです。よって、経営理念について学ぼう!と思っても、どの情報が自社にマッチしているのか見極めるのが難しい現状があります。
そんな中で重要なのは、企業や人によって違う定義や用途を、できるだけたくさんインプットすること。インプット する量が多いほど、自社にマッチしているものを見つけやすく、自社に落とし込みやすくなるはずです。
今回のブログでは、「経営理念についてインプットする」をテーマに、経営理念について書かれた書籍を7つ紹介します。経営者としての実体験から書かれている本、経営理念を学術的に分析した本、企業が経営理念によって再生を遂げた実話など、さまざまな切り口から経営理念について学べる本をチョイスしました。
僕たちトゥモローゲート株式会社も、経営理念を軸にした企業ブランディング事業を展開しています。僕たちには僕たちの“経営理念論”がありますが、紹介する書籍からは「そんな考え方があるんだ」「こんな事例があるんだ」と学べることが盛りだくさんでした。経営理念について学びたいという方はぜひ最後まで読んでみてください。
INDEX
リモートワークが普及したことで、企業の存在意義や、社員の働きがいについて考え直す会社が増えたと言われています。最初に紹介する『理念経営2.0 ── 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ』は、そのような状況でも経営を加速させるヒントになり得る、経営理念の重要性について説いた一冊となっております。
特徴的なのは、経営理念という概念を1.0と2.0に分けて解説している点です。経営者がトップダウンで理念の選定や浸透まで行う状態を「経営理念1.0」と定義し、社員も含めたみんなで理念をつくりあげ体現していく状態を「経営理念2.0」と定義しています。
この「経営理念2.0」の考えを軸に経営を進めることで、経営者や社員が自社の存在意義を理解し、それに沿った意思決定や行動を継続することができる。それが利益の創出に繋がるのはもちろん、社会や顧客にとって意義のある存在になることができると書かれています。
著者の佐宗邦威(さそうくにたけ)さんはP&Gのマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」「ジレット」など数々のヒット商品を手がけ、ソニーの新規事業創出プログラムに携わったあと、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を創業。パナソニック、NTTドコモ、日本サッカー協会などのブランディングを支援されてきた方です。
商品やサービスを消費者へ届ける“商売”を最前線で経験し、そのノウハウを名だたる企業や組織に還元してきた佐宗さん。そのキャリアや実績から得た知見を投入したのが本著であることを考えると、今すぐにでも読みたくなる、読んで経営に応用したくなると思ってしまいますよね。
本書には、経営理念の見直し方や浸透の仕方について、具体的な事例をもとに詳しく書かれています。
中でも「失敗談の語り直しが大事」という箇所があり、これは、僕たちトゥモローゲートが提供する経営理念のサービスにも共通するところでした。これまでの歴史や、その過程あった成功や失敗を理由まで言語化し、ありのまま社員にも共有することが、会社や経営者に対して愛着や思いやりが生まれ強い組織づくりに繋がると考えています。
僕たちのお客様は現状、中小企業が多いですが、名だたる大手企業を相手にしてきた著者も同じことを言っているということは、企業の規模やフェーズは関係なく、失敗談の共有は有効な概念であることがわかります。
「企業理念の見直しを考えている企業や担当者に取っていは非常に参考になる箇所(内容)が沢山あります。特に参考になった箇所は会社の歴史の中でタブー化された過去を語り直すこと。特に「失敗談の語り直し」は大切。その中から企業としての社会的な存在意義が見付け出され、新たな「ミッションやビジョン」が生まれる。この辺が面白く参考になった。
「私は中小企業の経営理念の浸透させるお手伝いをしています。この本にはそのステップがより具体的に描かれていて、とても参考になります。フレーワークも分かりやすく書かれているので、実践に落とし込みやすいと思います」
本書はタイトルの通り、経営者自身の「人生理念」をつくることが、経営を加速させる第一歩だと説いています。
企業の理念よりも先に経営者の理念から。経営者が何を目指すのか?そのために何をするのか?を明確にし、それに沿った言動を一貫させることで、社員をはじめとする周りの人を魅了し、組織が強くなるというロジックです。具体的にどのような手法と流れで理念を確立し、どのように組織に落とし込むのかまで具体的に書かれています。
また本書では「選択理論心理学」という理論を経営に落とし込む方法も紹介しています。
これは、人間は外部からの刺激ではなく、内側から湧き出る願望に基づいて行動するものだという考えが軸にある理論です。この理論を理解し、組織運営に適用することで、社員一人ひとりが自発的に行動し、成長する組織をつくることができると書かれています。学術的な視点で理念の重要性を説かれているんですね。
著者の青木仁志(あおきさとし)氏は、人材教育コンサルティング会社のアチーブメント株式会社の代表。45万人以上の人材育成や、5,000人以上の中小企業経営者の教育に携わるなど、「人」を軸に、さまざまな企業や組織を支援してこられた方です。
アチーブメント自身も「働きがいのある会社」ランキングで7年連続ベストカンパニーに選出されるなど、自社での取り組みも含めて数多の実績があります。その実績からくるノウハウが投入されたのが本書『経営者は人生理念づくりからはじめなさい』。説得力の塊ですね。
僕たちトゥモローゲートも、組織だけでなく個人の理念を言語化することも大切にしています。
「マイビジョンマップ」という弊社独自のフォーマットに沿って、人生を通して実現したい夢、数年後に達成したい目標、そのために継続するアクション、そしてそれらが会社のビジョンにどう繋がっていくのか?などを明確に言語化するんです。
社員ひとりがこれを作成することで、個人の夢と会社のビジョンが紐づきます。すると、日々の仕事を「何のためにやっているのか?」が強く意識できるようになり、「単なる作業」ではなく「夢を叶えるためにやりたいこと」になり、仕事のモチベーションが上がり、結果として成果が上がっていきます。自社での取り組みを通して効果を実感した僕たちは、マイビジョンマップを活用した取り組みをお客様にもご提案しています。
経営者をはじめとする個人の理念も大切に。そうすることで企業の“軸”がより強くなり、経営を加速させられる。実績のある本書を読み、その重要性をあらためて痛感しました。
「必死に頑張って社員を守るために努力をし、できる限りの時間を会社に・仕事に費やし、自分を犠牲にしながら働いてきたものの、報われない毎日。一体何が悪いのか、どうしたら自己犠牲をしない経営ができるのか・・・。もし、そんな思いを持たれている方がいらっしゃるとすれば、ぜひともおすすめしたい一冊です。」
「著者の体験からくるメッセージは、とても説得力があります。実践してきたからこその言葉の重みが感じられます。「未来を知る者は、その未来を創り出す者自身である。」「思考の中に、未来がある。」その通りです。この本を読むと、人を残す指導者になりたいと強く思います。自分次第で、どんな未来も実現できると心から思えます。指導的立場にある人ほど共感できる良書です!」
【購入ページ】経営理念の教科書 勝ち残る会社創りのための最強のツール
▼本書で解説されている主なポイント
・長寿企業の作り方と経営理念のメリット
・CSRの重要性や株主主義からの脱却
・理念を持たないリーダーの問題点
・経営者に必要なスキルや組織文化の形成
・優れた企業理念の具体例
トピックを見るだけで興味が湧いてくるのは僕だけでしょうか。企業が成長し、永続的な価値提供を続けるために、経営理念がいかに重要か。あらゆる視点から事例をもとに解説してくれる本書は経営理念の理解を深めるにうってつけの1冊です。
「短期的な利益であれば戦術や人材の力で達成できる。しかし、永続的な繁栄を実現するために経営理念の力が必要不可欠。」
本書の中で特に僕が共感したのはこの部分。目の前の課題を突破したい想いが強すぎて、ついつい短期的な利益に着目しがち。もちろんそれが悪いわけではありませんが、長期的な成長を見据えるのなら他に着目すべきことがある。本書はその重要性を、具体的な事例から説いてくれています。
著者の新将命(あたらし まさみ)氏は、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップス、日本コカ・コーラなど名だたる外資系企業で活躍された方です。複数社で社長職を経験するなど経営経験も豊富。その実績を活かして本書以外にも様々な書籍を出版されています。リーダー人材の育成に関しては特に、秀でたノウハウをお持ちです。
外資系企業の組織論というのは、普段なかなか触れる機会がないぶん、興味深いですよね。同じ規模、同じ業種の会社であっても、国内企業とでは組織に対する考え方は大きく違うはず。本書には外資系企業の視点も存分に盛り込まれているため、経営理念についてより多角的に理解することができます。
本書で説かれている「短期的な利益」と「永続的な繁栄」の考え方を、僕たちトゥモローゲートは「時系列」で考えることが多いです。まずは、永続的な繁栄に欠かせないビジョン、大きな目標、達成要件を決めていきます。次に、達成要件をクリアするために欠かせない戦術の実行や、人材の採用に力を時間を割いていきます。
どちらか大切なのか、どちらを優先すべきなのかは、企業のフェーズや目指す場所によって違います。その中でも、経営理念という軸が決まっている状態で具体的な戦術を実行する流れの方が、多くの場合、求める成果につながりやすいというのが僕たちの考えです。
「実体験として、『経営理念の教科書』に書かれている事を愚直に実行した事で、組織が変革しました。理念を実現するにはどうすればいい?体現できてるか?迷った時の判断基準として使おう!など…本書には、理念が必要な理由(WHY)と活用方法(HOW)がバランスよく書かれており、理念実現経営を行う上で、最良の教科書だと思います。」
「「経営理念」こそ最も重要な経営課題である。”という言われてみればあまりに当然の事であるが、その大切さを再認識させられる内容であった。自社の最もあるべき姿「経営理念」を経営者トップが身体へ染みこませ、従業員の心に響くまで自分自信の言葉で繰り返し語りかけて、腹落ちさせる。そうすれば、会社に活気が生れ始め、自然とあるべき方向へと動き始める、逆境に耐える力も備わるかもしれない。」
会社、社員、顧客。
三方が幸せを手にするために不可欠なのが経営理念だと定義し、具体的な考え方や作成方法、実践と浸透のための手法、さらには有名企業の事例も交えて詳しく解説してくれているのが『経営理念の考え方・つくり方』になります。
タイトルの通り経営理念の「考え方」や「つくり方」にフォーカスした1冊です。「経営者や起業家のガイドブックだ」というレビューもちらほらあるように、現場に落とし込みやすい実践的な内容となっております。
経営理念はビジョン、ミッション、バリューなど企業によって言い方が異なりますが、本書では
・ミッション
・ビジョン
・クレド
・ガイドライン
・スローガン
・ウェイ
・バリュー
7つの概念に分けて紹介されています。経営理念の言い方について正解はありません。自社や経営者の本質的な想いや考えが落とし込まれており、現場のメンバーが体現できるレベルまで浸透しているのであれば、言い方は違ってもいいかなと思います。
著者の『坂上仁志(さかうえ・ひとし)』氏は、「ランチェスター戦略」の第一人者と言われています。
ランチェスター戦略とは、戦力で勝る「強者」と戦力の劣る「弱者」に分け、それぞれがどのように戦えば戦局を有利に運べるのかを考える戦略です。この戦略を経営に落とし込んだ「ランチェスター経営」という言葉がビジネスシーンではよく使われています。
坂上氏は、新日鐵やリクルートなどに勤務した後、人材派遣企業を立ち上げて高利益企業に育て上げました。そして現在はランチェスター戦略の第一人者として活躍。3000社以上の企業を見る中で「いい会社づくりには経営理念が必要不可欠」という考えにいたり、「理念と経営」の観点から中小企業を支援されています。
経営理念についてお話ししていると「理念と売上はどう関係しているの?」と言われることがあります。
僕たちトゥモローゲートは、「経営理念に関する取り組みに注力することは、売上をあげたい会社にとって有効な施策となり得る」と考えています。短期的な売上だけでなく、継続的に購入・利用してもらえるファンづくりにも繋がっていくものだと考えます。
経営理念をつくったから売上がすぐに上がる、という単純な話ではありませんが、企業や商品が生まれた背景、届けたい相手、それらに込められた想いを経営理念として言語化することで、企業がやるべきことや商品を届けるべき相手が明確になり、結果として売上につなげることができます。
また、企業や商品の魅力を顧客に伝える際の熱量や説得力が上がり、共感してもらえ、ファンになってもらえる確率も上がります。それらが巡り巡って売上という数字につながっていきます。そのような流れを経営者として経験してきた坂上氏が書いた本書の内容は、かなり説得力が高いです。
創業50年を超える「ろ過布」製造のニッチ企業が、企業理念を見直したことをきっかけに売上を50%ほどアップさせた話です。二代目社長が社員の反発を受けながらも、企業を根本から変革するために、理念を軸にした取り組みに果敢にチャレンジされたストーリーが生々しく書かれています。
本書で特に学びになるのが、売上を上げるために顧客開拓や製品開発をする前に、なぜ企業理念を明確にするのか、なぜ事業形態を変える必要があるのか?を社員に伝え、組織内の意識改革をいの一番に取り組んだという点です。
猛烈な顧客開拓や、革新的な製品開発に成功すれば、売上や利益は爆発的に上がる可能性があります。しかし、それを提供する側の社内が一つにまとまっていなければ、継続が難しくなり、短期的な成果に終わってしまう可能性が高いです。最悪の場合、企業の存続すら危ぶまれます。
本書ではその重要性を具体的な事例から学ぶことができます。創業からこれまでの流れ、抱えていた組織課題、社員の反発、自発的な組織に生まれ変わるまで…細かく記載されているからこそ納得感はとても高いです。
執筆されたのは当事者の大塚雅之さん。「ろ過布」を製造する大塚実業株式会社の創業者の長男として生まれ、旅行代理店に勤めたあと1994年に大塚実業に入社。2005年に専務取締役、2009年に代表取締役社長に就任されました。これまで紹介した本とは違い、ご本人が執筆されているパターンで、より臨場感が伝わってきます。
「この大塚社長の理念や社員や社会への思いが素晴らしい!世の中、このような会社の社長ばかりだと日本も本当に良い国になると感じました。」
「異なる業種とはいえニッチ企業会社として、このような考え方で試行錯誤して励んでいる人がいるということは大変勉強になった。前を向いて頑張りたい。」
北陸に拠点を置く、小規模な段ボール製造会社の変革を描いた本書。「ワンマン経営」から「理念経営」への移行過程が詳しく紹介されています。
著者が会社を引き継いだ当時は成長の見込みが少なく、ただ目の前の仕事に追われる日々でした。しかし、リーマンショックを乗り越えた後、社員が主体的に考え行動できる組織へと変貌し、成功を収めました。本書はこのような組織変革を実現するために行われた具体的な取り組みを事例に基づいて解説しています。
「理念ドリブン」というキーワードがこの本の中心にあります。これは、企業の全ての経営活動が理念に基づいて行われるという考え方。人事改革、ボランティア活動、社員が自主的に行動できる体制の整備、理念を深く理解するための仕組み作りなど、さまざまな挑戦を理念を軸に行い、成長企業へと変化させた過程が紹介されています。
トゥモローゲートも同じ原則に基づいて経営活動を行っている会社です。すべての経営活動の基盤となるのは経営理念です。VISIONの実現に近づけるかどうか。MISSIONの体現につながるかどうか。VALUEに沿った行動ができているかどうか。選考、企画、新規事業など全ての判断軸に経営理念を活用しています。
【ブログ】ビジョンとは?組織が強くなるビジョンマップの作り方
著者の橋本淳(はしもとあつし)氏は、本書で紹介される段ボール製造会社「さくらパックス」の代表取締役です。同社は「顧客本位で、ハートのリレーで笑顔を創り、世界の和をつなぐ」という理念のもとに経営改革を推し進め、伸び悩んでいた企業から成長企業へと変貌しました。
さくらパックス株式会社は、ダンボール製造というニッチな業界において、2023年には約100億円の売上、経常利益率7~8%、自己資本率83%という優れた業績を実現しています。この成果の背景には、優れたビジネスモデルがあることはもちろん、それ以上に経営理念が深く関わっていることが本書を通じて理解することができます。
「経営理念の大事さに気付き、実際にそのことを理念とか考えていない組織や社員にどうやって浸透させ、かつ利益を上げてきたかの事例が学べました。
「書いている内容も共感できることが多く、お会いして話を聞いてみたいと思うほどでした。こういった会社が世の中にもっと増えてほしいと感じます。」
【購入ページ】経営理念の浸透ーアイデンティティ・プロセスからの実証分析
経営理念が事業の発展や業績向上にどのように寄与するのかについて、論理的かつ実証的なアプローチで徹底的に掘り下げ、その関連性を実証している1冊です。最大の特徴は、数年にわたる大規模調査から得たデータに基づいて書かれている点。実体験を直接的に語る本とは異なり、客観的な視点から経営理念を学ぶことができます。
特に興味深かったのは、理念の浸透度を「情緒的共感」「認知的理解」「行動的関与」の3つの項目で測定し、これらが従業員の行動にどう影響するかを分析しているところです。分析結果として導き出されたのは、経営者以上に、現場のマネージャーやリーダーの関与が経営理念の浸透に大きく影響を与えるという事実でした。
社員数が60名前後のトゥモローゲートにとっても大きな学びでした。
僕たちは社員数が10名を超えたあたりでコミュニケーション不足が顕著になり、組織がバラバラになりかけました。経営理念を見直し、ビジョンマップを作成したのはちょうどその頃です。そして今はまた別の課題にぶつかっています。それが、マネージャーやリーダー層による現場への経営理念の落とし込みです。
全くできていないというわけではありませんが、まだまだ強めていかないといけないと痛感しています。そんな組織課題の解決の糸口を、膨大なデータに基づいて論理的に解き明かしているのがこの書籍というわけです。
本書は、高尾義明氏と王英燕氏の共著です。
高尾義明氏は、京都大学教育学部を卒業後、神戸製鋼所での勤務を経て、京都大学大学院の博士後期課程を修了しました。その後、経済学、経営哲学、社会科学など複数の分野で、複数の大学において講師や教授、客員教授として活躍しています。
もう1人の著者、王英燕氏は、中国の大学を卒業後、鋼材製品会社で勤務し、スタンフォード大学でビジネスリサーチの修士号を取得しました。その後、京都大学大学院経済学部で博士課程を修了し、高尾氏と同様に博士の学位を持っています。
これまで紹介した書籍の著者は、自らの経営経験やコンサルタントとしての立場から経営に関わってきた人たちでした。一方の本書は「学問」という視点から経営理念を深掘りしており、また違う角度から経営理念を学ぶことができるのでおすすめです。
「経営理念はどうしたら企業内に浸透するのか、どうやって従業員に浸透していくのか・・・それは経営者・マネジメント層にとっても大きな関心事であろう。しかしながら、これまで従業員に焦点をあてた学術的な研究(とりわけ質問紙を使った調査研究)はあまり多くなかったようである。本書は、個人の視点からの理念浸透の理論アプローチを整理し、大規模な質問紙調査からその浸透メカニズムを導きだしている」
「これまで分析途上であった経営理念の浸透に関して多面的な視点から分析された学術書である。本書にも記載されているが、経営理念研究は、これまでどちらかというと創業者や中興の祖といった経営理念を創造・策定される側からの論理から、その意義、機能などが研究されてきた。近年になって、浸透方法や浸透手段について研究されてきているものの、やはり、それは経営的な視点からが多い。本書は、この経営的な視点に対する限界を指摘し、受け手側である組織成員=従業員の視点にたって研究されている」
ひとえに経営理念と言っても企業の特性やフェーズによって定義は違いますし、捉え方や活かし方も違うものです。大切なのは、経営者は経営層はもちろん、現場のメンバーまで納得感の高い状態で経営理念を理解し、体現できる組織をつくることです。それができれば、定義なんかは正直そこまで重要ではないと思います。
今回紹介した本を読めば、膨大な数の経営理念事例に触れることができますし、多角的な視点で経営理念についての理解を深めることができます。ぜひ手に取ってみてください。そして、自社にマッチした考え方ややり方が見つかれば、ぜひ活用してみてください。あなたの経営がさらにオモシロクなる1つのきっかけになるはずです。