デザイナーはプレゼン時に言いたいことを言うな。

デザインWeb

おはようございます。池田リョウです。

2022年までに「大阪で一番オモシロイ会社」を目指すトゥモローゲート株式会社の役員です。

大変僭越ながら、社内の二大部署のひとつ「意匠制作部」のゼネラルマネージャー(以下GM)をしています。

5月になりました。最近マスクのせいで話し相手が聞き取りづらく「なんて?」と言われる回数が増えました。となると誰だって「マスクがない時」とどう違うかを確認したくなりますよね(あるある)。A/Bテストとしてデータを集計します。結果はマスクがある方がちゃんと話そうとするので「なんて?」が減っていることがわかりました。普段は気を抜いてモゴモゴと話しているらしく、ひどいときは3分に1度のペースで「なんて?」が入ります。仲が良いほどモゴモゴ度は増すようです。仲が良いほど「なんて?」の相手の表情はイラついているように見えます。気の毒ですね。

そういえば、上の文章見て感じませんでした?

タラタラとこの人なにが言いたいんだろう?って。

そうなんですよね。

世の中には大きく4つのタイプがあると思っていて

①ロジカルに話すのは得意だが、活字になると淡白になるタイプ
②普段はあまり話さないが、活字になると表現活発なタイプ
③ロジカルに話せるし、活字コミュも強いモテモテタイプ
④普段はあまり話さないが、活字でもやっぱり奥手タイプ

僕は②です。頭に積まれたCPUが古いので処理能力が遅く、リアルでの瞬間的な情報処理は弱いのですが、文字を打ちながらのスピード感だと次第に考えがまとまってきます。③の人いますよね、うらやましい。④のタイプは今まであまり出会ったことないんですよね。おそらくこうなるとネコとかフクロウとか、暗闇でよく目を光らせている方々になるのかなと感じます。

さっくり目次行きましょう。

今宵はシンプルかつ王道のフルコースをお楽しみください。

デザイナーのあるある

前回のくだらなさ全開過ぎた記事「“デキる風”なデザイナーのウラを晒す4742文字。」を読んで、周囲のモノを全壊した人は少なくないと思います。改善します。

弊社トゥモローゲートの「TOPデザイナー久米川」の恥ずかしい姿を惜しげなく魅せた、高確率シェアの傑作記事です。

その記事内で語られたこの一節。

クリエイターは脳内を“視覚化”する力は長けてるが、 “言語化し発信する”力は未開発が続いているのだろう。

意味わかりますか?

要約すると「クリエイターって言葉で説明(プレゼン)するの結構ヘタだよね…」って話。今日はこの話に真面目にフォーカスしてみます。未だかつて誰も触れられなかった禁断の領域。聖域。神聖不可侵。

※本編ではデザイナーという職種を軽んじた表現もありますが、自分も元デザイナーだからこそ書けた記事です。

実はクリエイター・デザイナーって、相手に言葉で想いを伝えるのが苦手な人間が多いのです。職業イメージでは、オシャレ・頭良さそう・センスあるといった風に見られますが、イメージとはウラハラに現場で手を動かす彼らは意外と逆。センスのいいオシャレで気の利いた言葉や行動なんかは不得意な方だと思うし、どちらかというとコミュニケーションは不器用な人が多い。オシャレ好きな人も少ない印象で、服全体にはあまり気を使ってない人が5割以上。ただし帽子や靴など、ひとつの装飾だけに異常なこだわりをみせる確率は75%を超えた(約10年間・クリエイティブ界隈で働くイケダ調べ)

絶妙なニュアンスの違いがある。

では、なぜ彼らは言葉が苦手なのか?

それは、普段から伝える手段が“言葉”ではなく“モノづくり”での最終アウトプットになるから。モニタやテーブルの前で全集中の呼吸でモクモクと手を動かしてるし、頭で考えながらも意識は手や指を動かすことに向く。愛情表現は「愛してる」という“形がなく手にできないロマンチックな言葉”ではなく、愛を込めて「形」にした”目に見えて手元に残る現実的ななにか”なのです。

つまり、デザイナーはビジュアル化の能力が発達しすぎた故に、思考→言語への翻訳力が弱くなっているのです。あぁ、人間はただ神の前においてのみ平等である。

そんな彼らからプレゼン後によく聞く言葉は…

・クライアントにわかってもらえないんです(どうすればいいか不明パターン)
・人に説明するって難しいですね!笑(自分の中で重要度が低くまぁいっかパターン)
・全然デザインわかってへんやん ブツブツ…(相手が素人と言いたい)
・クライアントに一発OKでした!(よくわからず雰囲気OKを出され、よく考えた数時間後に修正連絡)
・もう一回つくります(言葉での伝達は諦めていて、反復と志がモットー)

基本的に「言葉・説明で納得してもらおう」という感覚は“低め”なことが共通です。

そもそもデザインのプレゼンでは、クライアント側は経営者や各部署の担当者・マーケターなど、デザイナーではないことが大半。お互いに使う言語が違うので、かろうじて共通言語となる「かっこいい」「いんぱくと」「しゅっとした」「あれみたいな」「もっとおっきく」などが飛び交う会議となります。

デザイナーは「伝える」ことは意識しているが「伝わる」ことまでは意識しない(人が多い)。クライアントはデザインの意図・価値がよくわからないまま話を聞き、なにかを返答したいが言語化できず「なんかちがう」といった回答になり、最終的には「ぱたーんできる?」のご名答へと着地するのです。

おめでとうございます。

この世から一番消えて欲しいフレーズを見事引き出しました。

デザイナーの意図説明を分解

次はデザイナーでよくあるプレゼンの傾向を探ってみましょう。

「今回の制作物はコーポレートサイトということで、ブルーをメインカラーにさせていただきました。ブルーはユーザーに信頼感・安心感を与える色でコーポレートサイトにはよく使われる色です。新しいブランディングとして企業イメージをスタイリッシュな見せ方にしていきたいので、余白を活かしつつトレンド感のあるグリッドを意識したレイアウトを施しました。メインビジュアルで使われるキャッチコピーではゴシック体を使い、力強く今っぽい雰囲気を演出しています。あしらいでは円を使い、御社の繋がりという理念を表現しています。」

どうでしょうか?一見すると100点っぽいプレゼンかもしれません。雰囲気ありますよね。

しかし、ちょっと感度の高い人なら気づくはずです。

・・・これ、このクライアントじゃなくてもよくない?
・・・最終的にこのデザインで目的果たせるの?
・・・ん?結局どういうこと??

「これってアナタは結局なにも言ってないよね?」という状態です。耳障りの良い言葉が並んでいるので、何もわからず聞いている側とすれば、あぁなんかいろいろ考えてやってくれているのかなぁ…と思ってもらえるし、その場の空間演出としてはバッチリかもしれません。

しかし、実はロジック&根拠がないデザイン説明なので、第三者が見たときに同じ反応は得られないこと、そして結果的にクライアントが好みの問題で“こうしたい”となったときにはただそれを無言で対応するしか道はありません。小さなひとつの穴から、どんどん信頼という名の糸はほつれてゆき、最終的にはクライアントが全デザインに修正指示をいれ、なんの意思もないクリエイティブが完成するのです。

なぜかそこには大事なものはない。意味がありそうで実は無意味なものだらけ。それは空洞。

そして最後にデザイナーは言います。

「あのクライアントは自分たちのやりたいようにするからやりにくい…」

それでは、どのようにプレゼンするのが良かったのでしょうか?

まずは今回のプレゼン課題点をほじり出してみましょう。ほじほじ。神の副音声を入れてみます。

「今回の制作物はコーポレートサイトということで、ブルーをメインカラーにさせていただきました。(神の声:なんでコーポレートサイトだからってブルー?この世のコーポレートサイトは全部ブルーになるの?)ブルーはユーザーに信頼感・安心感を与える色で(神の声:よく言われてるけどもうそのロジックはブルーが変な会社にも使われだして信憑性ないよね)コーポレートサイトにはよく使われる色です。(神の声:よく使われるならできればそれらと差別化してほしい…)新しいブランディングとして企業イメージをスタイリッシュな見せ方をしていきたいので(神の声:今想定されてる”スタイリッシュ”って具体的にどういうことだろう?この会社は金融系だけどそんなにスタイリッシュに持っていって大丈夫?)、余白を活かしつつトレンド感のあるグリッドを意識したレイアウトを施しました。(神の声:なんでうちのコーポレートサイトにトレンド感をいれたくなったんだろう?グリッドを採用した理由は?)メインビジュアルで使われるキャッチコピーでは英語のゴシック体を使い、力強く今っぽい雰囲気を演出しています。(神の声:英語キャッチコピーが最初のコピーで出るのは少しわかりづらくない?ゴシック使ったら力強く今っぽくなれるの?)あしらいでは円を使い、御社の繋がりという理念を表現(神の声:円=つながりって結構強引じゃね?)しています。」

屁理屈の多い、性格悪めな神の副音声でしたがいかがでしたでしょうか。

クライアントはデザイナーと話すことば選びが苦手。でも頭の中では結局こんなことを感じているのです。逆に言うとここらを改善できれば「ぱたーんできる?」をこの世から削減できるかもしれません。なんともECOですね。サスティナブルです。SDGsの12番です。

以外に難しい、デザイナーのプレゼン

それでは最後にどんなことを意識すれば、SDGsの12番を体現できるのでしょうか。

主題が大きく変わってきました。もうデザインプレゼンの課題ではなく、国際社会課題へと昇華させていきましょう。

デザイナーがプレゼン(意図説明)で意識すべきこと

・誰に向けてのデザインなの?
・あなたがどう思うってより、ユーザーはどう思うんだろう?
・そのデザインにしたらどういう効果があるの?

プレゼン(意図説明)で使おう「伝わる方程式」

伝わる=主張+根拠(事実+理由づけ)

トゥモローゲートの戦略企画部の武将である西崎隼平もよく使う型。

「〇〇やりたいんですよね(根拠)。なんで?って〇〇ではいつもこういった事実があるじゃないですか?(事実)。それってこういう理由からだと思うんですよ。(理由)」

とってもわかりやすいですね。一方、デザイナーあるあるでは“主張はあるが事実や理由がない”ことが多く、相手の理解に繋がりません。

「トレンド感を出した方がいいと思ったので、〇〇を取り入れました。はい・・・。」がまさにその例です。

また、くり返しますが相手に伝わるプレゼンでは「お互いに理解できる共通言語」を使うことが必須条件。デザインの意図説明だけではなく、ものごとの伝え方としてのポイントも少しだけ欲張りに抑えておきましょう

むずかしい単語は“印象値を下げる”と考えよう

専門用語を使えばそれなりに見えると思いがちだが効果は逆。わからない単語が出た途端、相手の文脈は途切れます。いいことないからやめとけ。

幅の広い(曖昧)表現は避けよう

「一般的」「最適化」「かっこいい」など人によって解釈が変わる説明は、話の現在地をわかりづらくする原因です。道案内は最後までていねいに。

共通理解を持てるデータを使って話そう

情報比較では、市場の動きや過去実績・類似事例など、主観ではなく事実を前提に話をしましょう。あなたがどう思うかは小話として最後にやわらかく話してあげましょう。

それでは最終的にどういったプレゼン(意図説明)にすべきか。エンドロールとしてご確認ください。

色々とハードルが上がってきました。それではどうぞ!

「今回のコーポレートサイトご依頼にあたり、事前ヒアリングの内容から最終的なサイトの目的は30代の会社員層からの新規契約・お問い合わせの増加、というゴールを目的にサイトデザインを考えました。サイトのメインカラーはCIカラーとしてロゴにも使われているブルーです。少しでも銀行としての安心感を強化したいため、このブルーのカラーコードから、落ち着いた配色バランスのマットなオレンジと白に近いグレーを割り出して採用しています。配色については最終的に好みもあるかと思いますので一度ご意見いただければうれしいです。

御社へのヒアリングを通して感じた印象や、御社サービスのクチコミから調査した中で集まっているイメージはそこに人がいるという暖かさや、お客様に寄り添ったサービスが強みとたくさんのクチコミから感じました(資料で集めている状態)。現状のサイトでは、人よりもイメージ主体でビルや抽象的な写真が全体の約80%を占めています。今回のリニューアルではこのように実際の社員様の写真や肌の色などを増やし、人のぬくもりをサイト内で感じてもらうことがイメージともマッチするはずです。

また30代の会社員ターゲット層では銀行での新規口座開設と同時にクレジットカードの見直しやグレードアップを検討される方が多いとわかりました。アクセントカラーのオレンジを一番重要な口座開設のボタンカラーに使用し、近くにクレジットカード申し込みの情報を設置させていただきました。弊社からの新しいご提案部分ですので、配色と合わせてご確認をお願いします。

今回全体的なデザインとしては時代を経ても色褪せないスタンダードなデザインを採用していますが、◯年周期でのリニューアルをお考えならこういった感じで少しトレンドに寄せたデザインもよろしいかと思います。また、他社比較としてご参考にいただきたいのですが、〇〇社ではこの様なデザインを採用されていますが〜〜」

おあとがよろしいようで。

真面目に話した最後は、自分の一番言いたいこともちょっとだけぶつけてやりましょう。

(本当はもっとデザインあそびたいぜ!ってね)

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