採用市場の“戦い”は年々激しくなっています。
理由としてあげられるのは、労働人口の減少で単純に採用する人の母数が減ったこと。加えて採用に関する情報発信が容易になったことで、知名度が低い会社でも戦略次第で採用を成功させやすくなったり、逆に、知名度が高い会社でも手を抜いてしまうと成果を得られにくいという、実力主義の模様を呈しています。
そこで注目されているのが「採用ブランディング」です。
企業が行うブランディングには企業ブランディング、インナーブランディング、商品ブランディングなどさまざまありますが、求職者を相手に行うのが採用ブランディングです。僕たちトゥモローゲートは2014年に「ようこそ、ブラックな企業へ。」という採用キャッチコピーを掲げて以来、10年近く採用ブランディングに取り組んできました。
得られた成果としては、社員が3名しかいなかった2014年に約7000人のエントリーを集めることに成功したり、広告媒体を介さない直接採用を大幅に増加させたなどがあります。また、その過程で得たノウハウを、業種、エリア、企業規模など問わず、たくさんの企業へ提供してきました。
今回のブログでは、その過程で学んだ「採用ブランディングの効果を最大化する進め方」について書いていきます。前述した成果をあげたケースだけでなく、思うような成果を得られなかったケースもあります。それらを繰り返しながらたどり着いた現段階の最適解を書いていきます。より実践的な学びを得られるのではないかと思います。
INDEX
採用ブランディングの進め方を理解するにあたって、そもそも採用ブランディングとは何なのか?の前提を理解する必要があります。僕たちトゥモローゲートは『ブランディング=ターゲットと結ぶ約束』と定義しています。
顧客と約束を結ぶのは企業ブランディング、社員と約束を結ぶのがインナーブランディング、そして、求職者と約束を結ぶのが採用ブランディングというイメージ。ブランディングと聞くと下記のような話になりがちですが、
・おしゃれなオフィスに移転すること
・カッコいいホームページにリニューアルすること
・手に取りたくなるパンフレットをつくること
これらは一面でしかありません。ブランディングとは、ターゲットに対して絶対に裏切らない約束、つまり信頼や絆を強固にするための全ての活動を指します。上記のような取り組みは手段の1つなんです。
採用ブランディングのターゲットは新卒orキャリアの求職者です。その会社へ入社を検討している人たちとも言えます。そういった人たちとどんな約束を結ベば採用の成果を得られるのか?思考を深め、目的から逆算した戦略を構築し、一貫して実施していくことが、採用ブランディングを成功させるカギになります。
【ブログ】採用ブランディングについてはこちらにも詳しく書いてます
採用ブランディングの注目度は年々高まっています。Googleで「採用ブランディング」と検索すると1,000万件以上の検索結果がヒットします。これは「採用キャッチコピー」と検索した時と同じボリュームです。
感覚的にも採用ブランディングをサービスとして提供している会社や、自社に導入しているという企業が増えたように思います。なぜなのでしょうか。これから紹介する2つが大きく影響していると考えられます。
以下は戦後からこれまでの出生数、修正率のデータを示したグラフです。
引用:https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/birth/67287/
第1次ベビーブーム(1947年〜49年)には250万人以上、第2次でも200万人(1971年〜74年)を超えていた年間の出生数が、2016年に初めて100万人を下回ると、2022年には80万人を割りました。凄まじい勢いで減少しています。
出生数の減少は、労働人口の減少に大きく影響を与えます。そしてそれは採用できる人数の減少とも言い換えることができます。採用の“争奪戦”はどんどん激しくなっていることが見て取れますね。このような社会的背景から採用に関するさまざまな戦略が生まれました。そのうちの1つが採用ブランディングということです。
インターネットやSNSの普及により、採用における情報発信が比較的容易になりました。
特にインターネットが普及しはじめてからは、Web上での求人広告や、採用に特化したホームページを活用する企業が増えました。またスマートフォンが普及すると同時にSNSを活用した採用戦略がどんどん主流になっていきました。僕たちトゥモローゲートもSNSを積極的に活用しています。
引用: https://www.no-company.co.jp/news/230927-release-research
Z世代の就活生を対象としたアンケートでは、半数以上がSNSで就職活動に関する情報を収集しているというデータが出ています。企業側にとっても求職者側にとっても、採用とSNSは切っても切れない関係と言えるでしょう。
こうなると、情報発信に力を入れている企業とそうでない企業では、大きな差が生まれるのは当然のことです。だからこそ自社の魅力を発信し、求職者との約束を結ぶ採用ブランディングに注目が集まっているのだと思います。
採用ブランディングの概要と、注目されている背景を説明したところで、本題「採用ブランディングの進め方」に入っていきます。大前提、企業によって進め方は変わります。ここでは一般的な流れを書いていきたいと思います。この流れの通りに進めることができれば、採用で成果をあげる可能性を高めることができます。
採用ブランディングの第一歩は、採用における現状をしっかりと把握することです。これまでの採用実績、現在の採用状況、事業内容や強み、企業のこれまでの歩みや競合他社との比較など、あらゆる角度から調査していきます。単に情報を洗い出して終わりではなく、洗い出した情報からその企業独自の強みを見つけていくことも大切です。
トゥモローゲートが提供する採用ブランディングでは、情報収集のためのアンケートを実施したり、その背景を詳しく把握するための採用担当者や社員様へのヒアリングを通して、採用状況を正確かつ深く把握していきます。
①は、企業が「何を伝えていくのか」を決めるフェーズです。そこが固まったら次は「誰に伝えていくのか」を決めるフェーズに入ります。自社で活躍している人たちの共通点は何か?自社で活躍するために欠かせない要素は?目指す未来の実現にどんな人が必要なのか?いろんな角度から深掘りし、ターゲットを明確にしていきます。
誰に、何を伝えるのかが決まったら、次は「どのように伝えていくのか」を決めていきます。僕たちはこのフェーズを「採用コンセプトの策定」と呼んでいます。採用コンセプトとは、企業の魅力がターゲットに鋭く伝わるキャッチコピーのようなものです。
▼採用コンセプトの事例
「地図に残る仕事。」大成建設
「とがった丸になれ。」丸紅
「ようこそ、ブラックな企業へ。」トゥモローゲート
採用コンセプトに求められるのは、求職者の興味を“一瞬で”引きつけることです。パッと見ただけでどんな会社なのかが伝わり、しかも「この会社で働いてみたいかも…」と思わせる言葉であれば、採用ブランディングの成功確率は高まります。
若者世代の情報収集の“速度”は上がってきています。短尺動画の流行がその典型。そのため、発信した情報を時間をかけてインプットしてくれる…という前提でいるのは危険です。数分、もしくは数秒で魅力が伝わるコンセプトを打ち出すことが、令和の採用市場で勝ち抜くカギになります。
採用コンセプトで求職者の興味をひきつけたら、次はその興味度をさらに引き上げ、エントリー→入社へと繋げていくためのプロモーション戦略を実施していきましょう。
▼採用プロモーション戦略の例
・参加者がワクワクする採用説明会
・SNSやWebを活用したオンラインイベント
・採用市場で話題になる採用広告
なんとなくプロモーションをして、ただ認知を拡大するだけでは不十分です。定めたコンセプトに沿って認知を拡大していきましょう。トゥモローゲートがプロモーションを実施する際も、「コンセプトに沿っているかどうか」を何よりも重視します。
どれだけ派手な広告でバズっても、今までにない採用説明会で話題になっても、企業の魅力やスタンスとは違ったものだと、理想の効果は得られない可能性が高いです。エントリーはたくさん集まったけど求める人物像とは違う、なかなか内定には至らない、内定に至ってもすぐに離職してしまう、などの結果が想定されるからです。
リクナビやマイナビなど、求人媒体はたくさんあります。企業の特性や目的に沿って選定し、戦略的に活用していきましょう。幅広いターゲット層にリーチできる媒体もあれば、特定の業種に特化した媒体もあります。採用ブランディングを通してどの層を獲得していきたいのか?そこから逆算して選定することが媒体活用成功のカギです。
掲載する情報の精度や独自性にも徹底的にこだわりましょう。求人媒体には膨大な数の企業が登録しています。同じ業種であったとしても数百、数千とライバルがいることが多いです。その中から見つけてもらい、エントリーしてもらうには、掲載する情報一つひとつにこだわり、魅力的なものにしなければなりません。
自社に興味を持ってくれている人が、
エントリーする可能性を高めるための採用サイト。
説明会にきてくれた人が、
次回選考に進んでみたいと思える採用パンフレット。
まだ自社のことを知らない人へ向けて、
認知を拡大するための採用動画。
目的や用途に沿ったデザインを制作するのが次のフェーズです。
目的が決まっていないけど「とりあえず」サイトを制作したり、用途が決まっていないのに「とりあえず」パンフレットを制作するのはあまりオススメできません。成果につながる可能性は低くなります。たとえ成果につながったとしても、それは再現性の低いもの、つまり「たまたま」である可能性が高いです。
【事例紹介】株式会社イヴレスの採用サイト
【事例紹介】SUNWOOD株式会社の採用パンフレット
【事例紹介】越しのゆグループの採用動画
ターゲットやコンセプトを定め、プロモーションやデザイン戦略を実施したら、次は「入社」そして「活躍」というゴールに向かって採用ブランディングを押し進めます。トゥモローゲートが提供している取り組みをいくつか抜粋。
せっかく興味を持ってくれたのに、人事担当者の対応でマイナスイメージを与えてしまい、選考の事態につながる。という例は決して少なくありません。採用において人事担当者は会社の顔です。僕たちは、説明会でのプレゼンテーションや電話対応・メール対応など、あらゆるフェーズで求職者の入社意欲を高めるノウハウをレクチャーします。
選考を通じて、求職者がその企業のことをより好きになること。これが、インターンシップを含めた選考の目的の1つです。その目的を達成するためにさまざまな選考を企画します。時にはゲーム形式の選考を導入したり、実務をガッツリ経験する選考を導入することで、自社にマッチする人材なのかどうかを見極められる選考フローを構築します。
せっかく内定までいったのに、内定辞退で入社に至らない…という結末は避けたいですよね。内定者フォローでは、入社までの期間を活用したインターンシップの導入や、内定式をはじめとするイベントの企画などを通して、内定後に入社意欲をさらに高める取り組みを提供します。
福井県を中心に温浴施設を展開し、「日本一番ぶろ」というビジョンを掲げる、おふろの総合プロモーションカンパニー『越しのゆグループ』さん。“地方のお風呂屋さんに大卒の就活生を呼ぶ”というテーマで、採用ブランディングを展開しました。
立地的なハードルや、人気職種・人気業界とは決して言えない状況を、どうやって打破するのか。たどり着いた解決策が「お風呂屋で働くのではなく、新しいお風呂を“つくる”もしくは“企画する”仕事です」というメッセージを打ち出すことでした。
『新浴構想』(にゅーよーくこうそう)というコンセプトを策定し、“お風呂をつくる”“お風呂を企画する”という仕事の魅力をWebサイトや動画を通して発信。採用コンサルティングと同時進行し、成果まで伴走しました。
【ブログ】お風呂スーツの社長は、どうして生まれたのか|採用ブランディング事例
大阪に本社を構え、全国を対象にオフィスの仲介から内装デザインまで一貫して手がける「オフィスコンサルティング」を提供するオフィスナビ株式会社。成果に貪欲に、粘り強く挑戦できる人材を求めて採用ブランディングを実施しました。
▼オフィスナビが求めた人物像
・本質を見極める洞察力がある
・粘り強く続けられるメンタルがある
・客観的にモノゴトを分析できる
・高い競争意識を持って働ける
・さまざまな業種業界への理解がある
ヒアリングやリサーチを通して浮かび上がった情報と、その情報から導き出したターゲット像を整理し、『TRY TRY TRY 挑み、考え、決めろ。』をコンセプトに設定。Webサイトや採用動画を通して、同社の仕事内容や魅力、スタンスを発信していきました。
【ブログ】粘り強く成果を出す人を採用したい|採用ブランディング事例
東大阪市にある家電メーカーのライソン株式会社。
「焼きペヤングメーカー」や「秒速トースター」など、話題性のある独自の製品を送り出し、メディアでも話題を生んでいる企業です。当時はまだ、新卒採用にチャレンジしたことがありませんでした。
採用ブランディングのテーマは“商品の幅を広げるために新卒採用を強化する”こと。
目指すべき姿、行動基準、価値観などを定義した経営理念に沿って、これからのライソンを発展させ、支えていくターゲット像を具体化。今までにない製品を生み出せる人を採用するために『令和の発明家』というコンセプトを策定し、Webサイト制作をはじめとする採用ブランディングを展開していきました。
【ブログ】採用ブランディング事例|ライソン株式会社採用サイト
最後に、採用ブランディングで期待できるメリットについて書いていきます。一言でまとめると「採用に成功する」になりますが、具体的にどのようなニュアンスの「成功なのか?」を大きく4つ書いていきます。
Google、Apple、ソフトバンクやトヨタといった大手企業は、その社名自体に求職者を引きつけるパワーがあります。しかし、中小企業やベンチャー企業の場合、自分たちで発信をしなければ、大手企業と比べると認知度はどうしても劣ってしまいます。
事業の優位性なのか、経営者のカリスマ性なのか、独特な文化なのか。数ある魅力の中で、ターゲットとなる求職者に身近なモノを抽出し、発信する。そういった採用ブランディングを実施することで、採用市場における認知度を高めることができます。
採用市場における認知度が向上すると、エントリー数の増加が期待できます。
採用ブランディングに取り組んでいないと、求職者に自社を認知してもらえるタイミングは、求人媒体への掲載やイベントを実施してからになります。しかし、採用ブランディングに取り組んでいれば、それよりも前に自社を認知してもらえる可能性が高いため、エントリーしてくれるタイミングの幅が広がり、エントリーの母数増加が期待できます。
エントリーの数が増えるだけでなく、エントリーしてくれる人の質の向上も期待できます。
「質」とは、能力が高い優秀な人という意味もありますが、「自社にマッチした人」という意味も強いです。前述した通り、採用ブランディングとは、ただ認知を拡大する戦略ではなく、自社の思想や価値観にマッチした層への認知拡大が期待できる戦略です。効果的に実行していれば、その層の割合を増やすことができるということです。
エントリーの段階で、自社の魅力や思想が伝わっている状態ですから、何も知らない会社にエントリーするよりも、志望度が高くなることは想定できますよね。企業にとって大きいメリットです。自社への理解が深いほど、内定〜内定承諾〜入社まで進む確率は高くなりますし、入社後のミスマッチによる離職の軽減にもつながるからです。
採用ブランディングで期待できるメリットは、求職者に対してだけではありません。今いる社員様のモチベーションアップも期待できます。
採用ブランディングで発信する情報や、その基となる企業の魅力や思想には、多くの場合、今いる社員様も触れることになります。そこで自社の理解と共感を深めることで、目の前の仕事や目指す未来に向けての熱量が高まる…といった効果が期待できるんです。
採用ブランディングの概要、進め方、事例、メリットなどを解説してきました。
ここまで紹介した以外にも、X(旧Twitter) やyoutubeなどSNSを活用して採用の成果につなげたり、経営理念の策定を通してイマやるべき採用戦略とは何なのか?から考えるケースもあります。
大切なのは、企業の現状や目指す未来に沿った戦略を見極めて、愚直に継続すること。
愚直に継続すれば、いつか必ず求める成果へ到達できるはず。
トゥモローゲートでは、最適な戦略を見極めるところから、成果まで伴走する採用ブランディングを提供しています。興味を持ってくださる方がいれば、最後に問い合わせフォームを添付しますので、ぜひ気軽にご相談ください。最後まで読んでいただきありがとうございました!