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企業のビジョンはなぜ必要なのか|多角化企業を例に解説

企業活動の軸となる「ビジョン」

「こんな会社になりたい」
「こんな世の中をつくりたい」

企業の実現したい未来を言語化した「ビジョン」は自社の事業内容に即した言葉になるケースが多いです。しかし、事業が多岐にわたる場合、複数の事業を包括した言葉を設定する必要が出てきます。

企業規模の拡大と共に事業が多角化し、「同じ企業なのにやっていることが違う」「事業部によって目指す未来が違う」となるのはよくある話。外から見ると「この企業、こんな事業もやってたの!?」と驚くこともあります。

それでも同じ企業なのだから、社員の目線を統一する意味でも1つのビジョンを設定する必要があります。今回のブログでご紹介したいのはまさにそこ。

多角的な事業を展開している企業はどのようなビジョンを掲げているのか調べてみました。

「事業の多角化にともなって社内の一体感が薄れてきた」
「事業がたくさんありすぎて1つのビジョンを定めるのが難しい」

こういった悩みを抱えていらっしゃる企業の方々のヒントになることを目指して書いていきます。

ダスキン

『世界一ひとにやさしいダスキン』
〜新たな文化を創り出し、暮らしを豊かに笑顔あふれる社会を目指します。〜

こちらがダスキン株式会社の掲げるビジョンです。

「ダスキンといえば掃除の会社」というイメージを持つ方も少なくないでしょう。掃除道具のレンタルや清掃サービスなど清掃関連の幅広いサービスを手がけてられているダスキン。にもかかわらずビジョンには清掃関連の言葉は登場しません。なぜなのでしょうか。

1963年に創業したダスキンは、水を使わずにほこりを取る化学雑巾「ホームダスキン」という商品を開発し、一躍有名に。日本の一般家庭に新たな文化をもたらしました。しかしその8年後には畑違いである「ミスタードーナツ」の日本出店に名乗りを上げ、日本に「ドーナツ」というこれまた新しい文化をもたらすことに成功します。

さらにダスキンはその2つを「フランチャイズ経営」で展開。「儲かるビジネスを他人にやらせるなんて…」という風潮の中、化学雑巾の訪問販売とミスタードーナツの店舗経営を外部へ委託。このダスキンの決断がのちのフランチャイズ文化をつくっていったとも言われています。

清掃関連事業、飲食関連事業、そして周りの人に商売の権利を与えるという姿勢。この3つがビジョンにある「世界一ひとにやさしい」というワードにリンクしていると感じます。またその後に続く「新たな文化を創り出し、暮らしを豊かに〜」という言葉はその功績を見れば合点がいきますよね。

AOKIホールディングス

「スーツのAOKI」で有名なAOKIホールディングスですが、スーツ関連事業だけでなくエンターテイメント事業にブライダル事業と多角的な事業を展開されています。

中でも意外性があるのはエンターテイメント事業です。カラオケ「コートダジュール」やインターネットカフェ「快活クラブ」。これらは全てAOKIホールディングスの傘下で経営されているサービス。

「AOKIすみれが丘店」2階の空きスペースの有効活用をするためにカラオケ店をオープンしたのがエンターテイメント事業のはじまりだそうです。

そんなAOKIホールディングスは「グループコンセプト」として以下の言葉を掲げています。

人々の喜びを創造する
~生命美の創造~

コンセプトに「スーツ」という言葉は登場しません。もちろん、スーツのエッセンスは「生命美」という言葉に込められていますが、そこには先ほど紹介したエンターテイメント事業やブライダル事業のエッセンスも込められていると言えるでしょう。

このコンセプトだけを見てAOKIホールディングスだと分かる人は少ないかもしれません。しかし、その幅広い事業や成り立ちを知ると納得感はグンと増します。「生命美」という言葉はAOKIのために…と思ってしまうほどです。

Daigasグループ

2018年に「大阪ガスグループ」から名称を変更した「Daigasグループ」。歴史と伝統のあるブランド名をわざわざチェンジするチャレンジングな同社は、事業展開においても挑戦的。

2017年に新規事業のアイデアを創出し、実際に事業化するプログラム「TORCH」を立ち上げ。このプログラムから生まれた事業が、人がすれ違った時にお互いのおススメ本が交換される「taknal」というアプリです。

巨大なエネルギー産業に軸足を置いてきたDaigasグループがSNSアプリを立ち上げることを誰が想像できたでしょう。でも、Daigasグループの「目指す姿」に目を向けると、その挑戦が行き当たりばったりではないことがわかります。

暮らしとビジネスの“さらなる進化”のお役に立つ企業グループ

だからこそエネルギー事業にとらわれることなく、「さらなる進化」につながるサービスを開発できたのだと感じます。そもそも新規事業プログラム「TORCH」も立ち上げも、このビジョンにもとづく挑戦的な社風がなければ実現しなかったことでしょう。

富士フイルム

写真フィルムの開発や製造、販売などを手がける富士フイルムですが、今やサプリメントやディスプレイ材料など多岐にわたる商品開発において、抗酸化技術やナノテクノロジーなどフィルム製造で培った技術力を発揮しています。そんな同社のビジョンはこちら。

「オープン、フェア、クリアな企業風土と先進・独自の技術の下、勇気ある挑戦により、新たな商品を開発し、新たな価値を創造するリーディングカンパニーであり続ける。」

中でも「独自の技術の下」という言葉に富士フイルムの信念が込められていると感じました。事業を多角的に展開している同社ですが、むやみに多角化しているわけではありません。「独自の技術力」をもっとも発揮できる領域はどこなのかを慎重に見極めているということが見てとれます。

自社のビジョンに「独自の技術」という言葉を掲げるのは勇気がいること。それでも富士フイルムがこの言葉を掲げているのは、圧倒的な実績と未来に向けての決意表明の意味合いも込められているのではないでしょうか。

サンスター ~オーラルケア事業と自動車部品事業~

「口は、生きるの一丁目。」というキャッチコピーを掲げるサンスター。

主に歯磨き粉などのオーラルケア製品を製造していますが、このサンスターが製造している意外な製品が「バイクの部品や接着剤」。同社の事業は、意外にも自転車部品の製造販売から始まりました。

そこから自動車のタイヤを補修するためのチューブ入りゴム糊を開発し、工場に余った金属チューブに歯磨き粉を入れて売り始めたのがきっかけというのですから驚きですよね。

そんなサンスターが1963年に掲げた社是「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」というもの。歯磨き粉だけを開発する会社であれば、「常に人々の健康の増進に奉仕する」だけの社是でもいいはず。

そこに加えて「生活文化の向上」に奉仕することを明示したという点で、自転車部品から創業したサンスターのルーツが垣間見えます。

(サンスターのみ『ビジョン』ではなく『社是』をご紹介させていただいております。先に例に挙げた4企業とは異なる側面もございますが、ご了承ください)

まとめ

新規事業に参入することと、新規事業がうまくいくことは全く別の話。

全ての事業を包括するビジョンや理念を設定することで、「自分のやっている事業は会社として何の役に立っているのかわからない」と社員のモチベーションが下がる事態も防げます。

自社のビジョンは事業に沿った形になっているのか。逆に、これからの新規事業は自社のビジョンに合ったものなのか。この記事が考えるきっかけになれば幸いです。

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