経営理念づくりや経営理念浸透のお手伝いをしている僕たちは、よくこんな想いを耳にします。
「これから先、長く続いていく会社をつくりたい」
売上、利益、従業員数、拠点数。企業として追い求める数字はそれぞれあれど、根本には「長く続く会社をつくりたい」という志のあるケースが多いです。その志に対して僕たちは、イマ何をやるべきで、3年後には何を目指すべきで、最終ゴールに何を設定すべきかを考え、提案し、その先のアクションまでサポートしているのですが…
実際に長く続いている会社の事例について、そこまで詳しく調べたことはなかったなと。50年、100年、200年以上も続く「長寿」と呼ばれる企業はどんな経営理念を掲げ、どんな事業や取り組みを行っているのか。詳しく調べてみることで、今後お客様に提案する内容を、より濃いものにできるのではないかと考えました。
そこで今回のブログです。100年以上続いている長寿企業を、経営理念を軸に分析してみることにしました。すると、見えてきました。長寿たるゆえんが。そして、そこから学べることの数々が。ピックアップする企業はこちらの5社。
井筒八ッ橋本舗『利益より永続』
笛木醤油株式会社『日本一、笑顔をつくる醤油蔵』
キユーピー株式会社『おいしさ、やさしさ、ユニークさ。』
株式会社赤福『赤心慶福(せきしんけいふく)』
清水建設『論語と算盤(ろんごとそろばん)』
長く続く会社づくりを志す経営者の方々や、その会社で働く従業員の方々に、学びのある内容を目指します。
INDEX
京都市の右京区に本社を置く、和菓子の製造販売企業「井筒八ツ橋本舗」さん。
京都に住んでいる人も、そうでない人も、一度は八ツ橋を食べて「うまい!」と言った経験はあるのではないでしょうか(僕は祖母のお土産でよく食べていました)。
創業は1805年(文化2年)。なんと江戸時代です。津田佐衛門という創業者が茶菓子、米、味噌、醤油販売などを行ったことがはじまりだそう。以降、「ほんまもん」をキーワードに質の高い商品を生み出し続け、誰もが知る和菓子ブランドとなりました。
そんな井筒八ッ橋本舗さんは、経営理念に『利益より永続』という言葉を掲げています。以下で紹介するのは、2018年にオーナーの津田佐兵衞さんが受けたwebメディアのインタビューの一部を抜粋したものです。
“私は経営者としては二流三流の人間ですから、難しいことは考えずに、先祖からの流れを守ろうという思いで家訓を大事にしてきました。中でも「利益よりも永続」は一番大事にしてきました。よく他業者の方は損して得取れというようなことを言いますけど、うちでは損はしない代わりに儲けることもするなと。利益を上げるために目標を定めるんやなしに、いつまでも商いを続けさせてもらえるよう、いい材料で一番いいものをつくるというのが私らの商売の仕方なんです。”
「利益よりも永続」は、創業家に代々伝わる家訓の1つから生まれた言葉です。オーナーは「おかげで利益は少なかった」とも振り返っていましたが、この家訓を大切にしてきたからこそ会社は少しずつ成長し、従業員は増え、おいしい和菓子をたくさんの人に届けることができたといいます。
経営理念は、言葉を掲げるだけではあまり意味をなしません。
経営理念に沿った取り組みをし、考えを浸透させ、メンバー1人ひとりが体現することで、より効果を発揮するものです。その視点で井筒八ッ橋本舗を調べてみると、気になる取り組みが見つかりました。1つは「イチ企業でありながら、地域を巻き込んだ祭りを主催している」ということです。その名も「八橋祭」。
京都市左京区にある「常光院」というお寺で毎年6月12日に開催しています。看板商品「八ッ橋」の由来にもなった江戸時代の音楽家「八橋検校」をしのぶため、五代目オーナーが昭和24年に企画しスタートしました。八ッ橋の手作り体験をはじめとするさまざまな体験ができ、ご家族連れを中心に地域の人がたくさん訪れるとのこと。
井筒八ッ橋本舗の規模を考えると、祭りで得られる利益はわずかでしょう。利益最優先の会社であれば、おそらくやらないのではないでしょうか。しかし、「利益より永続」を掲げる井筒八ッ橋本舗からすれば、長く愛される永続的な企業を目指すために、地域を巻き込んだ祭りを開催することは必然なのではないかと分析します。
永続的な企業になるには、長く愛されることが必要不可欠。
長く愛されるということは、世代を超えて愛してくれるファンがいるということです。
井筒八ッ橋本舗は祭りに加え、以下のようなファン獲得の取り組みをされています。
その名の通り、八ツ橋を実際に焼いてみることができる体験です。およそ200年前から受け継がれてきた製菓技術にふれ、八ツ橋だけでなく京都のお菓子文化を好きになってもらうことが目的。お子様をはじめ、たくさんの人が足を運ばれるそうです。
井筒八ッ橋本舗の名物の1つ『あん入り生八ッ橋夕子』の手作り体験です。手焼き体験と同じく、八ツ橋、そして、京都のお菓子文化に触れてもらうことが目的。主に夏休みの期間に行っており、夏休みの自由研究として体験するお子様がたくさんいらっしゃるそうです。
八ツ橋ができるまでの過程を見学できるツアーです。原材料、生地の練り方、形成、焼成などさまざまな工程を見て、八ツ橋の裏にあるストーリーや、そこに込められた井筒八ッ橋本舗の想いに触れることができます。
手焼き体験、手作り体験、見学ツアー。どれも、短期的な利益だけを求めるのであれば優先順位は低いはずですが、「利益より永続」を優先する井筒八ッ橋本舗からしてみれば、何より優先すべき取り組みであることがわかります。
永続的な企業になるために=長く愛してくれるファンづくりのために祭りを主催するのは、いいアイデアだなと感じました。大企業や老舗企業だから成り立つのでは?と思う方もいるかもしれませんが、僕はそうは思いません。
例えば、SNS上で誰でも参加できる祭り(イベント)を主催したり、地域の祭りのスポンサーになったり、自社の商品やサービスに関係のあるお店を出店するなど、やり方はさまざま。短期的な利益には繋がらないかもしれないけれど、粘り強く継続することで、そこにいる人たちが将来的なファンになってくれる可能性は大いにあります。
井筒八ッ橋本舗さんのように、永続的な企業を目指すのであれば特に。
笛木醤油(ふえきしょうゆ)株式会社は、1789年(寛政元年)に埼玉県で創業した醤油製造会社です。江戸時代に始まりこれまで200年以上、「杉桶仕込み」と呼ばれる伝統的な製法で、丸大豆、小麦、天日塩のみを使用した醤油を製造・販売されています。
日本国内にとどまらず、海外輸出も行っており、香港、台湾、オーストラリア、フランス、米国、カナダ、マレーシアなどへの輸出実績アリ。またレストラン、ミュージアム、直売店を展開するなど、老舗企業でありながら、既存の枠にとらわれない革新的な取り組みを継続されています。
理念の一部に『日本一、笑顔をつくる醤油蔵』という言葉を掲げています。
その言葉の背景、決まった経緯、これから先の展望について、同社の第12代目当主・笛木吉五郎さんが、webメディアのインタビューでこのように回答していました。
“弊社は、積極的な海外展開への取り組みや革新的な会社経営手法から、地域経済をリードする中核企業として「地域未来牽引企業」に選定されています。訪日外国人旅行客関連の売り上げも増加しており、2019年11月には創業230周年記念事業として川島町本社に「金笛しょうゆパーク」をオープンし、国内外の顧客を呼び寄せる計画です。キャッチコピーは「日本一、笑顔を作る醤油蔵」。(中略)取扱店数拡大とリピート注文獲得による安定した輸出ビジネス化を図って行きたいと考えています。”
失礼にあたるかもしれませんが、「200年以上前に創業された老舗企業」と聞いて浮かぶイメージとはかけ離れた(もちろんいい意味で)、先進的な取り組みや想いに驚きました。
醤油は料理を彩る調味料です。しかし、その役割は手段の一つでしかない。笛木醤油株式会社が見据えるのは、その先にある「笑顔をつくる」という目的であり、その目的に沿ったチャレンジを行っていることがわかります。
笛木醤油が2019年にオープンした「金笛しょうゆパーク」。
醤油を通して「食べる」「学ぶ」「買う」「遊ぶ」体験を一つの場所で楽しめる複合施設です。
「食べる」体験を届けるのは、『しょうゆ蔵のレストラン』。しょうゆのおいしさを出汁とともに味わえるお店です。
続いて「買う」体験を届けるのは、『金笛直売店』。通常のしょうゆはもちろん、唐辛子醤油や際仕込み醤油など、こだわりの商品を買うことができます。
最後に「学ぶ」体験は『木桶バウム工房』で。金笛がつくるバウムクーヘンを実際に焼き上げる体験をすることができます。
こうしてしょうゆパークで体験できることを書いているだけで、楽しそうだなあ…と思わず笑顔になれました。料理と共に味わうだけじゃない。しょうゆを通じたさまざまな体験を通して笑顔をつくる。まさに理念の体現ですね。
「金笛しょうゆパーク」における「学ぶ」体験コーナーが、こちらの「金笛しょうゆ学校」です。
「金笛しょうゆ学校」は、醤油の製造過程を楽しみながら学べる体験型の学校です。醤油がどのように作られているのか、大豆、小麦、麹菌など発酵のプロセスを見ながら具体的に学ぶことができます。また、作り方に加えて醤油の歴史や原材料についても学ぶことが可能。日常的でありながら詳しくはない醤油への理解を深めることができます。
「学校」という名前だけあって、受付を「入学」と呼び、学び終えた人に与えるアンバサダー認定を「卒業」と呼ぶなど、思わず笑顔になれる仕掛けもある環境で、前向きに学ぶことができる施設となっております。
経営理念に「笑顔」というワードを掲げている企業は多いです。
しかし、笛木醤油さんのように揺るぎない収益の柱がありながら、「笑顔をつくる」という理念を体現するために時間と力をここまで割いている企業は、そこまで多くないのではないかとも思います。
ただ売れるだけでは不十分。売れ続けるだけでも不十分。しょうゆという商品を通してさまざまな体験を届け、笑顔をつくっていく。結果として長く愛される企業になれる。
200年以上続く企業が理念に沿った活動を愚直に行っている姿を見ると、まだ15年ほどしかたっていない僕たちは“まだまだだな”と刺激をもらえます。
みんな大好きキユーピーマヨネーズのキユーピー株式会社。
創業は今から100年以上前の1919年。『鬼滅の刃』の舞台にもなった大正時代に生まれた会社です。創業当時はソース類や缶詰を製造販売し、1925年からは日本で初めてマヨネーズを製造販売しました。これが、今でも日本中で愛されるキユーピーマヨネーズのはじまりです。
「愛は食卓にある」をスローガンに、マヨネーズ、ドレッシング、パスタソース、育児食や介護食など、家庭で使用する商品を幅広く販売。スーパーマーケットをはじめとする小売店やECサイトを通してライフスタイルに合わせた商品を提供し、全国の食卓を彩っています。
そんなキユーピーの経営理念は、「おいしさ、やさしさ、ユニークさ。」
おいしさとやさしさは、食品会社である以上イメージがつきます。でも最後の「ユニークさ」は、ある意味食品らしくない、キユーピーならではの想いが込められているのではないかと思い、考察してみました。
皆さんは、キユーピーマヨネーズと聞いてどんなことを思い浮かべますか?
マヨネーズに載っているキュートなキャラクターを思い出すのではないでしょうか。
あのキャラクターは、1990年代初頭にアメリカのイラストレーターが発表して誕生したもの。そこからキューピー人形が普及したり、さまざまな企業がマスコットキャラクター的な立ち位置で起用する流れが相次ぎました。キユーピー株式会社独自のキャラクターではないんですね。
にもかかわらず日本では「あのキャラクター=キユーピーマヨネーズ」というイメージが浸透しています。
と同時に「可愛いキャラクターが載ってある、いつも家にある(家にあった)親しみやすい商品」というイメージも浸透しています。このイメージこそが、おいしさとやさしさだけじゃない、ユニークさ(特異性)を追求したキユーピーブランドだと思います。
ユニークさを追求した取り組みにフォーカスしてみましょう。
まず1つ目は、誰もが知っているであろう「キユーピー3分クッキング」です。1962年にキユーピー1社提供ではじまったこの番組は、“短時間でもいい。毎日献立の情報をお届けする”という想いがきっかけでスタートしました。
当時は欧米文化がどんどん日本へ流れ込み、国民の、洋食への憧れが強くなっていました。学校給食にも洋食が登場したことで、家庭では子どもたちがこぞって洋食をリクエスト。そんな需要に応えるために、マヨネーズを使って手軽に作れる料理を紹介しはじめたのが、60年以上続く長寿番組「3分クッキング」だったのです。
「キユーピー3分クッキング」という番組名、オープニングで流れるチャーミングな音楽、そこに登場するキューピーの可愛いキャラクター。想像するだけ明るい気持ちになれるのは、あたたかい気持ちになれるのは、キユーピーのユニークなイメージが染み付いている証拠です。他に例をあげることはできない、唯一無二のブランドだと感じます。
キューピー人形のほかにも可愛いキャラクターがたくさんいることをご存知でしょうか。その名も『キューピーとヤサイな仲間たち』。キューピーと一緒に暮らす野菜のキャラクターで、読み聞かせ絵本や読み聞かせ動画を配信するなど、キユーピーのターゲットである子供たち向けに数々の取り組みを行っています。
また、『ヤサイな仲間たちファーム』という、色とりどりの野菜に触れ、食べることの楽しさや大切さを学べる複合施設も運営しています。収穫体験、野菜教室、マルシェなど、さまざまなシーンでさまざまなカタチで野菜に触れることができ、休日を中心にお子様連れのご家族で賑わっているそう。
3分クッキングは、ご家庭で料理をされる親御さんに向けた取り組み。キューピーとヤサイな仲間たちは、ご家庭で料理を食べるお子さんに向けた取り組み。企業のファンでいてくれる人や、これからファンになってくれるかもしれない人に向けてユニークな取り組みを徹底されているんですね。
社名や商品名を聞いた時、共通のイメージを思い浮かべてほしい。そんな意図があるのであれば、自社の事業特性や文化を落とし込んだマスコットキャラクター的なものをつくるのもアリだと思いました。
・ぬいぐるみにしてオフィスに飾る
・企業のロゴに使用する
・商品のパッケージやサービス資料に盛り込む
さまざまな手法で一貫して打ち出していれば、ユーザーが企業や商品に抱くイメージを統一することができます。さらに、イメージ通りのサービスを提供することができれば、根強いファンがどんどん増えていくはずです。
ただし、むやみやたらにキャラクターを作ればいいというわけではありません。キユーピーは、ユニークさという経営理念にある言葉、そして「愛は食卓にある」というスローガンにある言葉、これらから感じる“やさしさ、暖かさ、愛くるしさ”のようなものに沿ったキャラクターを起用しているからこそ、成果を得られていると言えます。
三重県の伊勢市に本社を置く和菓子メーカーの赤福。
創業はなんと1707年。今からおよそ300年以上も前。徳川綱吉が将軍を務めていたとされる時代です。果てしないですよね。想像もつきません。創業の経緯に関する情報もあまり見当たらほど歴史のある会社ですが、当時から、お土産として持ち帰る和菓子として、伊勢近辺を中心に愛されていたという情報は見つけることができました。
「赤子のような、いつわりのないまごころを持って自分や他人の幸せを喜ぶ」
赤心慶福(せきしんけいふく)という言葉には、このような意味が込められているそうです。由来となったのは、地元伊勢神宮を参拝する人の心のあり方。「清らかな気持ちでまごころをつくし、人の幸せを自分のことのように喜びましょう」と語り継がれる考えを、企業経営の指針にも使用することになったそうです。
赤福といえば「赤福餅」が有名です。お餅の上にこし餡(あん)をのせた餅菓子で、伊勢神宮神域を流れる川のせせらぎを形に採用するなど、甘くておいしいだけじゃない、姿や形にまでストーリーがあるお菓子で多くの人に愛されています。(八ツ橋と同じく、祖母のお土産で小さい頃の僕はよく食べていました)
お気付きの通り、赤福という社名や赤福餅という商品名は、赤福株式会社の経営理念と紐づいたものになっています。どちらが先に名付けられたのか定かではありませんが、理念と社名、理念と看板商品が同様であれば、その企業のブランドイメージをよりストレートに感じることができることがわかる良い事例です。
赤福のホームページには「赤福餅ができるまで」というページがあります。
ここには、砂糖、小豆、餅米などの原材料がどこで獲れたものなのか、どのような環境で育ったものなのか、さらには加工方法や管理方法、生産者の声まで、細かく具体的に紹介されています。
「赤子のような、いつわりのないまごころを持って自分や他人の幸せを喜ぶ」
商品の裏側までさらけ出す。パッケージや味といった表面的な部分だけでなく、全てをお客様に知ってもらうことで安心してもらい、心からの幸せを与える。たかがサイトの1ページと思われるかもしれません。でも、歴史や経営理念を知った上で見てみると、これがただ情報を伝えているページではないことが伝わってきます。
経営理念、ビジョン、スローガン、コンセプト、社名、商品名。
企業や商品にはその存在を定義する言葉がたくさん存在します。赤福は、経営理念で一番大きく掲げている言葉(赤心慶福)と看板商品の名前(赤福餅)に親和性があるため、ブランドから伝わってくるイメージに一貫性があります。たくさんある言葉を1つにまとめてしまうのも、企業特性にマッチするのであればアリだと思いました。
また、経営理念に沿ったページをサイトに設けることで、理念がより強く伝わるというのも赤福から得た学びの1つです。経営理念と事業や取り組みを別で紹介するのもいいですが、同じページで紹介することで「事業や取り組みの背景」を伝えることができるため、納得感が高く、ファンが生まれやすいサイトになるのではないかと思いました。
清水建設は今から200年以上前の1804年に東京で誕生した企業です。
江戸時代後期に日本初と言われる本格的なホテルの竣工に携わると、明治時代には京都、大阪、そして韓国に台湾と次々に拠点を拡大。その後も全国への進出を続け、戦後は日本の経済発展を支えてきました。
今では建設事業に加え、不動産開発事業やエンジニアリング事業など、多角的な事業を展開されています。そんな清水建設の掲げる経営理念は、これまた印象的なものでした。
「論語と算盤(ろんごとそろばん)」
どういう意味?と思った方も、もしかしたらいるかもしれません。まずはこの言葉のルーツを紹介したいと思います。「論語と算盤」のルーツは、1887年に同社の相談役に就任した渋沢栄一氏です。新しい一万円札の肖像画になることで話題の渋沢氏です。
渋沢氏は、明治維新後の近代国家づくりに貢献したことで「近代日本経済の父」と呼ばれています。世界遺産となっている富岡製糸場の設立や、第一国立銀行(現在のみずほ銀行)の頭取経験、さらには官僚として政治にも携わるなど、経済の観点から日本の発展に多大な貢献をしました。
そんな渋沢氏が残した有名な言葉が「論語と算盤」。「論語」とは道徳、「算盤」とは利益を追求する経済活動のこと。つまり「論語と算盤」は、「利潤と道徳を調和させる」という経営哲学を表した言葉なんです。
“当社は、1887年に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の教えである、道徳と経済の合一を旨とする「論語と算盤」を「社是」とし、この考え方を基に、当社が経営活動を通じて果たすべき社会的使命を「経営理念」として定めました。また、2019年5月に、2030年を見据えたシミズグループの長期ビジョン「SHIMZ VISION 2030」と、当面5年間の基本方針と重点戦略を取りまとめた「中期経営計画〈2019‐2023〉」を策定しました。”
言葉の印象強さはもちろん、この言葉を200年以上も続く会社が理念の1つに掲げているのが印象的です。
「論語と算盤」の真意である「金儲け優先ではなく、武士道に通じる正直さと親切さ、顧客第一をモットーに掲げる」は、今では多くの企業が持っている考えだと思います。清水建設はこれを100年以上前の1800年代後半から掲げていました。
現代と比べれば、まだまだ貧しい時代だったと思います。利益だけを追い求める考えになるのが普通では?と素人の僕はなんかは思ってしまいます。それでも「正直さ、親切さ、顧客第一」を掲げ、貫いてきたからこそ、200年以上経った今でも揺るぎない地位を築けているのではないかと思いました。
トゥモローゲートに入社する前、経営理念なんて綺麗事だと思っていました。そんなことよりも、売上が大きい方がいいし、利益がたくさんある方がいいし、大規模で有名な企業が正義だ、とすら思っていました。
その考えが間違っているとは思いませんし、最優先に考える企業があってもいいと思います。でも、今回のテーマである「長く続く会社づくり」を目指すなら、企業の本質を捉えた経営理念と、理念に沿った事業や取り組みが必要不可欠だなと痛感しました。
長く続いている会社には、長く続いている理由がある。ここまで初回した事例を、経営のヒントにしてみてはいかがでしょうか。